株式会社電通は日本の総広告費と、媒体別・業種別広告費を推定した「2020年 日本の広告費」を2021年2月25日に発表した。対象期間は2020年1月1日~2020年12月31日。
この発表により、新型コロナウィルス感染症拡大の影響下における日本の総広告費が明らかになった。
引用元:2020年 日本の広告費
コロナ禍の影響で日本の総広告費は昨年比88.5%
引用元:2020年 日本の広告費
まず、2020年日本の総広告費は6億1,594億円となり、2019年比で88.5%の減少となった。これは2009年のリーマン・ショックの影響を受けた減少幅の次に大きく、また、9年ぶりの減少傾向である。
マイナス成長の要因は世界的な新型コロナウィルス感染症の拡大が影響している。これにより、各種イベントや広告販促キャンペーンの延期・中止となり、広告費の大きな減少に影響したという。
一方で、外出自粛により、デリバリーやネット通販などの巣ごもり需要の拡大、また、企業の在宅勤務により、オンライン会議やオンラインセミナーが浸透しDXが推進され、デジタル広告は増加傾向であった。
新聞、雑誌、ラジオ、テレビメディアのマス広告費は6年連続減少
次に媒体別の傾向を見ていく。
引用元:2020年 日本の広告費
新聞、雑誌、ラジオ、テレビメディアのマスコミ四媒体広告費は、2兆2,536億円で2019年比86.4%となった。2018年から2019年においても減少しているが、6年連続して減少が続いている。
新聞広告費について業種別でみると「交通・レジャー」が2019年比51.1%と半数近く減少し、特に旅行会社や各新聞社のイベント告知などが大きく減少したという。
一方で、「情報・通信」は2019年比107.9%で伸長しており、在宅勤務・オンラインセミナー関連などの出稿増加による影響が出ているようだ。
次に、雑誌広告比について業種別でみると、「ファッション・アクセサリー」、「化粧品・トイレタリー」が減少幅の大きい結果となった。一方で、「家電・AV機器」は増加しており、巣ごもり需要の影響が数値として表れている。
続いて、ラジオ広告費については新聞と同様に「交通・レジャー」が大きく減少し、雑誌広告と同様に「家電・AV機器」が増加する結果となった。
最後にテレビメディア広告費を見ていく。大型スポーツイベントの開催延期や中止、広告宣伝費の縮小により、全体的に減少傾向にあった。しかし、業種別に見ると「情報・通信」「自動車・関連品」では復調傾向が見られているという。
インターネット広告費は巣ごもり需要が追い風となり増加
インターネット広告費は、2兆2,290億円で2019年比105.9%となり、マスコミ四媒体広告費にする規模である。1996年の推定開始以来、一貫して成長を続けている。
今年は、マス四媒体由来のデジタル広告費が2019年比112.3%、物販系ECプラットフォーム広告費も2019年比124.2%と、それぞれの伸びが牽引しているようだ。
特に、マス四媒体由来のデジタル広告は、新聞、雑誌、ラジオ、テレビと、それぞれのメディア特色を生かしたデジタル広告の傾向が見られた。
・新聞デジタル
新聞本誌をベースとする記事コンテンツの信頼性が高く、サイトPV数の伸び、結果的に 運用型広告の売上が増加した
・雑誌デジタル
巣ごもり需要により、コミック誌を中心に電子雑誌で大きく伸び、オンラインイベント や、広告主サイトのコンテンツ制作などが成長している
・ラジオデジタル
外出自粛や在宅勤務により「radiko」の聴取率が伸びるとともに、ラジオとオンライン イベント、ラジオとSNSといったオンライン施策との融合が増え、これに関連する出稿 が増加した
・テレビデジタル
地上波テレビ放送由来のコンテンツ力が強い「TVer(ティーバー)」のユーザー数の伸 長により、テレビメディア関連動画広告が2019年比113.3%と伸びている
各種イベントの延期・中止により、イベント・展示など昨年比6割
プロモーションメディア広告費は、1兆6,768億円で2019年比75.4%となり、最も大きい減少幅になった。外出自粛により、各種イベントや広告販促キャンペーンの延期・中心の影響を受け、特にイベント・展示・映像は2019年比61.2%と大きく減少した。
今回の調査により、世界的な新型コロナウィルスの感染症拡大により、2020年の総広告費は、リーマンショックに次ぐ減少傾向にあることが明らかとなった。
また、各種イベントや広告販促キャンペーンの延期・中止の影響で各メディアの広告費が減少する一方で、巣ごもり需要により物販系ECが伸び、インターネット広告は成長傾向となった。
引用元:2020年 日本の広告費