近年、企業内で組織をまとめ、メンバーを引っ張ってきた「リーダー」に求められる特性が、変化しつつある。新しい時代の環境に合わせた、「サーバントリーダーシップ」という考えが注目されているのだ。
組織内のメンバーが自主的に業務を行なうよう促すサーバントリーダーシップとは、どのようなリーダー像なのか。
これまでのリーダーとの違いや、組織に与える影響、また、サーバントリーダーシップを取り入れるメリット・デメリットもあわせて解説する。
サーバントリーダーシップとは?
複雑な現代社会の組織において、苦境を乗り越え、快適な環境づくりを行うためのリーダー像として注目されるサーバントリーダーシップ。サーバントとは、召使いを指す英語であり、上司から部下に仕事を言いつけたり命令したりするのではなく、部下の良さを引き出すことや支援を行うことを基本とし、それぞれの特性を伸ばす環境づくりに徹するようなリーダー像を指している。
近年の社会情勢の変化やグローバル化によって、労働者や消費者の価値観は多様化し、さまざまな企業で、変動性・不確実性・複雑性・曖昧性と呼ばれる意識が高まっている。
英単語「Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguity」の頭文字をとって、ブーカ(VUCA)の時代と表現される現代においては、予測のできない想定外の事象が多々起こり得るだろう。
そういった予想外の、かんたんには最適な答えが見つからない時代のリーダーには、さまざまな価値観や特性を持っている部下の能力を生かしていく必要があるのだ。
もしリーダーが一人で組織を動かし、一方的に決めた方針に間違いがあれば、会社全体を大きくミスリードすることにもつながってしまう。いくら素晴らしい素質を持ったリーダーであっても、仲間のパフォーマンスを認め、組織が成長するような支援型リーダーでなければ、企業運営は難しくなっていくだろう。
参照元:サーバントリーダーシップとは?企業の新たな形態を紹介
サーバントリーダーシップのメリット
「縁の下の力持ち」ともいえるサーバントリーダーシップは、部下を信じ、それぞれが目指す業務への挑戦や自己実現願望を支援することである。ビジョンの共有はもちろん、部下のアイデアや提案を受け止め、それが最大限生かせるような環境をつくり出していく存在だ。
サーバントリーダーシップが実現すれば、組織で働くメンバーの生産性が上がり、帰属意識も高まるだろう。組織内の空気も明るく、コミュニケーションが活発化されるはずである。
従来の価値観で起こりがちだった、部下が上司の指示を待つような「命令が主体」のリーダーシップが改善され、部下の「主体性」を向上させることにもつながっていく。 現代の企業経営に求められている「フレキシブルな役割分担」にも期待が持てるだろう。
サーバントリーダーシップのデメリット
現代に合った支援型リーダーシップであるサーバントリーダーシップも、状況によってはデメリットとなる場合も考えられる。
例えば、すべての部下のアイデアや考えを聞き取り、まとめ上げ、施策として取り入れるには、多くの時間が必要だ。サーバントリーダーシップでは、意思決定を行うまでの流れが、スムーズにいかないことも予想される。 上司と部下の意見が極端に分かれてしまった場合、どこに着地点を持っていくかも重要だ。リーダーにはさまざまな意見をふまえつつ、「スピード感のある判断」が必要である。
また、企業内で自主的な意見がなかなか出てこない場合や、進むべき道筋がはっきり見えていない組織においては、サーバントリーダーシップが必ずしも最適だとはいえないだろう。
参照元:サーバントリーダーシップとは?企業の新たな形態を紹介
まとめ
各企業の業務に合わせた新しいリーダーシップが必要となる中、サーバントリーダーシップを自社に取り入れる企業が増えている。
企業経営では、リーダーの新しい在り方として、「柔軟な対応ができるサーバントリーダーシップ」と、従来型の「組織を引っ張るリーダーシップ」をその場に応じて使い分け、自社の成長へと、つなげていくことが大切だ。