日本のインターネット広告業界にとって、2021年はどのような年になるのだろうか。Integral Ad Science社は、日本のインターネット広告関係者175名を対象とした意識調査の結果を「Industry Pulse 2021 日本版」にまとめ、発表した。
その中には、日本のインターネット広告関係者が予測する2021年の業界課題やトレンドについての情報がまとめられていた。
参照:日本のインターネット広告関係者が予測する2021年の優先課題、 トップは「サードパーティクッキーの非推奨化」
2021年の業界課題は「第三者クッキーの非推奨化」「データプライバシー法」「コンテキストターゲティングへの適応」
2021年の業界課題としては、「第三者クッキーの非推奨化」「データプライバシー法」「正確な計測」「コンテキスト・ターゲティングへの適応」「クロスデバイス・アトリビューション」が上位に挙がった。
個人のデータプライバシーに関する規制強化が、引き続きインターネット広告業界に大きな影響を与えることが予想されている。「第三者クッキー」とは、ユーザーを追跡するために第三者(広告主など)のサーバーからユーザーのコンピューターに保存されるクッキーのことだ。これにより、その第三者ユーザーがどのようなWebコンテンツを見ているのかがわかる。
このようにして把握したユーザーの関心分野に沿って広告を表示するのはターゲティング広告の手法だ。しかし、2020年6月に改正個人情報保護法が成立し、クッキーの利用にはユーザーの同意が必要になった。ユーザーがクッキーの利用を拒否すれば従来のターゲティング広告は成立しなくなってしまう。
そこで注目されているのがクッキーに依存しない「コンテキスト広告」だ。これはユーザーが閲覧しているWebページのキーワードや文章、画像などをAIが解析し、そのページの文脈に合った広告を表示するものだ。2021年はこのような広告手法への適応が課題であると認識されている。
モバイルメディアの価値はさらに向上、OTT・コネクテッドTVへのシフトは加速
株式会社電通の「2019年 日本の広告費」によると、2019年の日本のモバイル広告予算は1兆2,623億円であり、これは全デジタル広告予算の8割以上だった。5Gの採用拡大、モバイル技術のさらなる進化により、デジタル広告におけるモバイルメディアの重要性はさらに大きくなると予測されている。
また消費者の傾向として、従来型のテレビからOTT(通信事業者やプロバイダ以外がインターネット上で提供する大容量コンテンツの動画配信サイトなど)・コネクテッドTV(インターネットに接続された大画面のテレビ)へのシフトが進んでおり、これは2021年も加速することが予測されている。
ソーシャルメディアの重要性・プログラマティック広告の成長は続くが透明性に課題
2021年に優先度が高いメディアの上位は「ソーシャルメディア」「デジタル動画/OTTストリーミング」「モバイルウェブ」という順だった。ソーシャルメディア広告への投資は年々増えているというが、2021年もより一層増える見込みだ。
ところが一方で、ソーシャルメディア広告については品質について広告主からの厳しい目線もある。アドフラウド(本来は無効なインプレッションやクリック数で成約件数などの成果を水増しする行為)も懸念されており、ソーシャルプラットフォームのメディア品質に関する透明性向上が期待されている。
成長を続けているプログラマティック広告は、2021年には更に大きな成長を実現することが見込まれている。しかしブランドリスクに対して脆弱であると見なされており、広告検証の必要性を感じている業界関係者もいる。Integral Ad Science社は、2021年に新テクノロジーの出現と業界のパートナーシップ強化によって透明性が向上すると予想しているようだ。