近年、企業がビジネスを成功に導くためには、カスタマーエクスペリエンス(Customer Experience)をよりよいものとし、顧客との関係性を高めることが必須の条件となっている。
日々変化する社会情勢の中で、他社との差別化を図り競争を勝ち抜くためには、よりいっそう顧客と深くつながり、満足度を向上させる必要があるだろう。
これからのマーケティング活動でポイントとなる顧客中心のビジネスモデルやカスタマーエクスペリエンスについて、Amazonやナイキの事例をもとに分析・解説する。
テクノロジーで新しいエクスペリエンスを提供
カスタマーエクスペリエンスとは商品・サービスの価値だけではなく、その購買行動にまつわる顧客の体験や、その体験をもとに生じた感情を指している。
最新の調査では、顧客は自身の予想を超える質の高いエクスペリエンスを提供してもらうために、「企業が行う値上げも許容する」と考え、「ポジティブな体験は他者とも共有する」という結果が公表された。つまり、ビジネスを成功させるためには、徹底した顧客への配慮や顧客中心の施策が重要であり、上質なエクスペリエンスで顧客に喜んでもらえれば、自社の価値は必然的に上がっていくということである。
顧客中心の考えは特に新しい取り組みではないが、従来の手法に「IoT(Internet of Things:インターネットを経由して通信するもの)」や「AI(Artificial Intelligence:人工知能)」などのテクノロジーが加わったことで、企業は新しいマーケティングを展開することが可能となった。
例えば、顧客とつながりを深めたブランドであれば、企業のウェブサイトをスクロールするだけで、以前購入した際の情報をもとにリコメンド商品が提供されるようシステムを構築できる。そして後日、その商品の割引チケットを顧客が登録しているメールやラインに送るなど、パーソナライズされたフォローアップができるだろう。
企業はデジタルテクノロジーを活用し、一人ひとりのニーズに合わせた顧客中心のマーケティングを行うことがポイントだ。
Amazonやナイキの「顧客中心主義」
顧客中心主義の企業として名前が挙がるのがウェブ通販サイトの「Amazon」である。
Amazon独自の会員サービスに登録することで、顧客は自身が検索した商品、購入した商品、再購入に至った商品などの情報を提供し、その対価として自分用にカスタマイズされたレコメンドの情報を得ることができるのだ。
Amazonは、あらゆる顧客のニーズや思考を把握し、その情報をリアルタイムで更新することで、顧客が意識しないうちに、パーソナライズされたサービスを自然と提供しているのである。
また、スポーツ関連商品販売の「ナイキ」が取り組んだ、顧客への「共感」体験にも注目だ。
ナイキは自社の商品であるランニングシューズをより多くの顧客に提供するために、そのランニング自体を追跡し、より健康的に感じられるようなブランドサービスを徹底した。シューズを販売することだけではなく、顧客が求めているブランド価値への「共感」で多くのシェアを獲得したのだ。
まとめ
上質なカスタマーエクスペリエンスには、顧客と「良好な信頼関係」を結ぶことが不可欠である。顧客の個人情報を取得し利用するためには、システム管理の徹底はもちろん、顧客が望まないような見当違いのレコメンドを行わないよう、データの取り扱いに細心の注意を払うべきである。
深い信頼関係を結ぶことによって、顧客がSNSなどを通じて自社を推薦してくれることもあるだろう。顧客中心主義の企業にはさまざまなメリットが生まれている。すべての企業にとって「商品中心型」から「顧客中心型」へ、以降する時期が来ているのではないか。