BtoBコンテンツマーケティングのトレンドとして、今、多くのマーケターが「バイヤーペルソナ」と「バイヤージャーニー」に注目しています。BtoCのペルソナ、カスタマージャーニーのように個人の購買プロセスとは異なり、バイヤー(決裁者や導入担当者)が企業において購買の意思決定を行うまでに、どのようなプロセスをたどるのか着目し設定するのが特徴的な点です。
今回は、バイヤーペルソナとバイヤージャーニーを作成する実践的な方法を紹介します。バイヤーペルソナとバイヤージャーニーの概要については下記をご覧ください。
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バイヤーペルソナ・バイヤージャーニー設定の情報収集
バイヤーペルソナは、コンテンツマーケティングの成功を目的として、自社のターゲット顧客の解像度を高めるために設定します。
そのために、下記の方法でターゲット顧客やバイヤーに関する情報を集めることから始めます。
・セールス・カスタマ-サクセスへのヒアリング
自社の商材・サービスを導入している企業の担当者がどんなバイヤーなのか、セールスやカスタマーサクセスへヒアリングを行います。この方法は短時間で多くのバイヤーの情報を得ることが可能です。
しかし、セールスやカスタマーサクセスから聞いた情報は問い合わせ以降に得られる情報が中心となるため、問い合わせに至るまでのプロセスについては不明瞭になりがちです。ヒアリングの結果として、企業属性やバイヤーの個人属性が中心になります。加えて、セールスやカスタマーサクセスが接点を持つ担当者に一定の偏りが出てしまう恐れもあり、留意する必要があります。
・GoogleアナリティクスやGoogle広告などのアクセスデータ
Googleアナリティクスなどのツールで自社のWebサイトに訪問した際の検索キーワードを取得します。検索キーワードから、検索したバイヤーは決裁者か、実務担当者なのか、あるいは、購買プロセスのどの段階で検索してきたのか、判断するためのデータになります。
また、リスティング広告を実施していた場合には、Google広告やYahoo広告から検索キーワードやCVキーワードを取得します。リスティング広告の検索キーワードは、現状、SEOで獲得できていないキーワードも把握できるため、上述のデータと合わせて非常に重要なデータです。
・Webサイト以外のネット上の情報
自社のWebサイト以外にもTwitterやFacebook、YouTubeなどのネット上の情報も参考にします。セールス・カスタマーサクセスへのヒアリングやWebサイトのアクセスデータといった自社の一次情報ではなく、ネット上の情報は二次情報となるため、ヒアリングやアクセスデータから得られた情報とは区別し、きちんと仮説検証を行うようにします。
・取引企業へのインタビュー
取引企業へのインタビューが可能であれば、より解像度の高いバイヤーペルソナ、バイヤージャーニーが設定できます。ヒアリングで得た情報をもとにより詳細な企業やバイヤーの属性や、検索キーワードにあるインサイトを得ることができ、さらに、ネット上で得た情報の検証も可能です。
取引企業の協力が必要となるため、高い頻度で実施できないのが難点ですが、導入事例のインタビューと並行して行ったり、セールスの商談に同席したり、工夫することができます。
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バイヤーペルソナの設定項目と設定数
収集したターゲット顧客の情報からバイヤーペルソナを設定していきます。ターゲット顧客の企業属性とバイヤー個人の属性とそれぞれ、下記の項目を整理していきます。
【企業属性】
業界、取引形態(BtoB、BtoC)、企業規模、ほか商材・サービスの特性により設定すべき項目
【個人属性】
性別、年代、所属部署、役職、役割、決裁権限、ほか商材・サービスの特性により設定すべき項目
ターゲット顧客の業界や取引形態(BtoB、BtoC)、企業規模などの企業属性と、バイヤーの所属部署・役割や役職、決済権限の有無などの個人属性をかけ合わせた場合、その組み合わせは膨大になります。しかし、ターゲット顧客の大部分を占めるようなバイヤーペルソナの設定を考慮すると、3~4つの組み合わせで網羅できるかと思います。
ただし、企業やバイヤーに関する情報や、マーケティングのリソースが十分ではない場合、まずはターゲット顧客のうち最も大きい割合を占めるペルソナを1つ作りこみ、その後、コンテンツ運用のなかで別のペルソナを加えていくことが良いでしょう。
バイヤーズジャーニー4つのプロセスと5つの項目
バイヤージャーニーは、バイヤーペルソナで設定されたバイヤーがどのように購買の意思決定をするのか、認知・情報収集、比較検討、評価、意思決定の4つのプロセスで設定します。
1. 商材・サービスの必要性を認識したのはいつ、どのようなタイミングか
2. どのように商材・サービスを比較したのか
3. 比較した商材・サービスをどのような観点で評価したのか
4. 購買についての社内の承認を誰からどのように得たのか
商材・サービス自体が市場にあまり認知されていないのであれば、商材・サービスの認知・情報収集する以前に、どのようなタイミングで課題を認識し、情報収集を行い、どのように課題解決のための施策を比較し、商材・サービスの導入検討の意思決定をしたのか、というところまで設定する必要があります。
次に、プロセスごとに設定される項目は、課題、アクション、検索キーワード/接触メディア、信頼するコンテンツ、ゴールの5つです。
・課題
バイヤーが抱える(だろう)課題を洗い出し、整理します。予算、必要性、決済権、導入時期のBANTで考えると抜け漏れがありません。
BANT(BANT条件)をBtoBにおける営業活動に活用するには?
1.~4.とプロセスが上がっていくごとに、商材・サービスに関する課題が強くなっていきます。4.にたどり着くまでにそれぞれの課題がどのように変わり、商材・サービス購買への承認にたどり着くのか、明確にしていきます。
・アクション
それぞれのプロセスで抱える課題に対して、どのような情報収集を行い、どのような解決策を得るのか、追加していきます。あわせて、解決策を得たことで、新たに出てきた別の課題を前後のプロセスで整理します。
アクションでは、1.~4.とプロセスをつれて、商材・サービスに対して漠然とした理解から、どんなことが実現でき、どのくらいの効果が出るのか、深い理解を得られるようになっていきます。
・検索ワード、接触メディア
具体的にどのような検索キーワードで調べたのか、GoogleアナリティクスやGoogle広告などから得たアクセスデータから、それぞれのプロセスに当てはめていきます。また、実際に特定のキーワードで検索したときに、どのようなサイトにアクセスしているのか、また、どのメディアに情報収集しているのか、追加していきます。
・信頼するコンテンツ
接触するメディアのなかで、認識している課題に対し、どのようなコンテンツを信頼するのか、明確にしていきます。例えば、自社に導入実績がなく、効果について懐疑的な場合には、有名企業の事例や同業他社の導入状況や効果が分かる調査データは有効です。あるいは、現場の協力が得られないといった、導入に関するリスクに関して懸念が強い場合には、トライアルの有無や導入サポート、QAが有効なコンテンツとなるでしょう。
・ゴール
最後に各プロセスのゴールを設定します。どのような状態になれば次のプロセスへいけるのか、パーセプトチェンジを可能とする状態を明確にします。
バイヤーペルソナ、バイヤージャーニー設定後の活用ポイント
バイヤーペルソナ、バイヤージャーニーを設定することがゴールになってしまっては意味がありません。コンテンツマーケティングを実施し、成功させることが本来の目的です。完成したバイヤーペルソナ、バイヤージャーニーをベースに、実際にコンテンツをどのように作成、運用していくのか、検討する際には非常にスムーズになっているはずです。
コンテンツの作成、運用について検討する際には下記の項目とあわせて、バイヤーペルソナ、バイヤージャーニーを活用ください。
・コンテンツ作成、運用の検討項目
【提供条件】 誰でもアクセス可能、パーミッションを取って提供など
【対象顧客】 決裁者、実務担当者など
【内 容】 調査レポート、ノウハウ、導入事例、製品紹介など
【形 式】 記事、ホワイトペーパー・eBook、動画など
【掲載場所】 自社サイト、外部メディア、オフラインイベントなど
【閲覧促進】 Web広告、SNS、メール送付、プレスリリースなど
また、コンテンツ運用の途中でも、ターゲット顧客やバイヤーに関する情報収集を行い、定期的にアップデートしていくことが重要です。
まとめ
・バイヤーペルソナは、セールス・カスタマーサクセスへのヒアリングや自社Webサイトのアクセスデータ、ネット上の情報、導入企業へのインタビューを通じて、バイヤーに関する情報を集めていく
・バイヤージャーニーは、認知・情報収集・比較・意思決定のプロセスごとに、課題やアクション、検索キーワード、信頼するコンテンツ、ゴールを洗い出し、明確にしていく
・完成したバイヤーペルソナ、バイヤージャーニーをベースにコンテンツを作成し、また、定期的にアップデートしていくことが重要