企業が自社ウェブサイトやブログなど、自ら発信する媒体として注力しているのが「オウンドメディア」である。従来の広告クリエーティブとは異なり、企業側が主体となって、訴求したい情報をコントロールできることが特長だ。これまで課題となっていた企業の「ブランディング」や「広告費用の削減」などに期待が持てる施策である。
しかしながら、B to Bマーケティング担当者への調査によると、オウンドメディアを停止したり、運営に課題を感じたりしていることが明らかになった。
スマートフォンの普及によりユーザーとダイレクトに関係を構築できるコンテンツが増えた現在、オウンドメディアは実態として企業の有益なメディアとなっているのだろうか。企業担当者が考える、自社メディア運営の課題を分析する。
参照元:BtoBマーケティング担当者142名に聞いたオウンドメディア実態調査
オウンドメディア/B to B企業が運営する割合
出典元:BtoBマーケティング担当者142名に聞いたオウンドメディア実態調査
調査結果によると、B to B企業の約40%が現在も自社メディア運営し、検討中の企業を合わせると60%以上が自社媒体として積極的に取り組む予定であることがわかった。一方で、運営を何らかの理由で停止した企業も9%以上存在している。
停止と継続/各企業の運営状況
出典元:BtoBマーケティング担当者142名に聞いたオウンドメディア実態調査
上図で見てとれるように、約80%の企業がオウンドメディア開始後2年以内に自社メディアの活用を停止していることが判明した。約1~2年の間に、企業として運営を継続するかどうかを決定しているようである。一方、継続している企業では、30%以上が5年以上という結果になった。
企業担当者がオウンドメディアを停止した原因に挙げているのが、運営を続けていくための「記事材料やコンテンツの不足」「専任者の人手不足」「費用対効果の不足」である。作成した後の効果計測で「割に合っていない」と感じる担当者も多数いたようだ。
メディアとして効果が感じられるまでにどのくらいの期間がかかったのか、また、効果の実感を得られたのか。各企業の回答が以下である。
長期の取り組みが必要か
出典元:BtoBマーケティング担当者142名に聞いたオウンドメディア実態調査
現在も続けて運営している企業の回答では、効果などを実際に感じられたのは1年以上たってからという回答が最も多く、次いで半年から1年未満、2年以上かかったと答えた企業は10%も存在する。この結果からは、オウンドメディアの成果に即効性を求めるのは難しいといえるだろう。長く継続して運営することで、徐々に費用対効果が生まれる可能性が見えてくるのだ。
オウンドメディア担当者による「違い」
出典元:BtoBマーケティング担当者142名に聞いたオウンドメディア実態調査
各企業や担当者によって、方針が異なってくるオウンドメディア。特筆すべきは「オウンドメディアに新記事が必要だと感じるか」を調査した結果である。
上図左から「運営を停止した担当者」「現在も運営中の担当者」「今後運営する予定の担当者」の配置となっている。回答を左から順に見てみよう。
オウンドメディアを公開するにあたって、新しい情報が必要だと考える割合が減少しているのがわかるだろう。自社メディアを継続できない、またはしないと判断し、停止した企業担当者ほど、オウンドメディアに「新たな情報」が必要だと感じ、現在も続ける企業や、今後取り組む予定の企業ほど、新しい記事や情報の掲載にこだわっていないのである。
現在も運営中の企業が実際に感じていること
出典元:BtoBマーケティング担当者142名に聞いたオウンドメディア実態調査
上図で見てとれるように、企業は自社メディアに「認知」や「リード」の獲得を期待しているようだ。期待よりも数値は下がるものの、少なからず効果は得られていることがわかる。「社内カルチャー」や「社内スキルアップ」のように、本来の目的とは異なる点で、効果を感じていることもポイントだろう。
まとめ
現在も、オウンドメディアはB to Bビジネスにおいて60%以上の企業で活用されていることがわかった。目的としている「認知」や「リード」の獲得に向け、期待される成果を上げるまでの課題は多いようである。長期的な目線で捉え、即効性を期待しないことがポイントといえそうだ。今回の調査によって明らかになった「記事の材料や量」という点をクリアにできれば、担当者が感じる「課題」と「メディア自体の質」が同時に改善され、おのずと期待される成果に近づけるのではないだろうか。