長期不況が続く厳しい日本経済において、電子コミックの売れ行きが好調だ。
電子書籍の市場では、全体の80%以上を電子コミックが占め、約2400億円を売り上げている(2018年度調べ)。急激な成長を遂げる電子コミック市場の中で、効果的なプロモーションを展開しているのが「LINEマンガ」だ。2013年にサービスを開始し、2020年にはアプリのダウンロード数が1位となっている。躍進し続ける国内トップクラスの電子コミックサービス「LINEマンガ」は、どのようにユーザーを獲得していったのか。効果的な広告の訴求ポイントを検証する。
参照元:「継続利用」を意識したアプリ戦略—— LINEマンガの作品パワーだけに頼らないプロモーション方法とは
「目当ての作品がある」から「時間があれば常時読みたい」アプリへ転換
「LINEマンガ」やその他の主要な電子コミックサービス会社では、表示が素早く親和性の高い、スマートフォンの「モバイルアプリ」を推奨している。そこで課題となるのが、アプリへの「誘導」だろう。ウェブサイトではなく、モバイルアプリからサービスを利用してもらうには、ユーザーにアプリをインストールしてもらうことが必要だ。
ユーザーがそのアクションを起こすきっかけの一つとして、まずは「目当ての作品」を読んでもらうという方法があるだろう。その場合、作品自体をメインにした広告を打ち出すが、読み終えたユーザーがインストールしたアプリを続けて使用するかどうかが大きな課題となってくる。目当ての作品を読み終わった後も「時間があれば常時利用したい」とユーザーに思ってもらえるような、継続した利用を促す広告制作が重要だろう。
YouTubeを広告媒体に/モバイルアプリの利用を促す
出典元:「継続利用」を意識したアプリ戦略—— LINEマンガの作品パワーだけに頼らないプロモーション方法とは
世界最大級の動画共有サービス「YouTube」の検索キーワードをみると「漫画関連」の検索量が年々増加しているのがわかる。2017年、2018年、2019年と増え続け、伸び率は6倍以上となった。そこで、電子コミックと相性のよいYouTubeを広告媒体とし、漫画そのものの魅力を打ち出しながらも「LINEマンガのサービス」に重点を置く広告クリエーティブを打ち出した結果が以下である。
データでみる「LINEマンガ」プロモーション戦略/結果は
出典元:「継続利用」を意識したアプリ戦略—— LINEマンガの作品パワーだけに頼らないプロモーション方法とは
電子コミックユーザー層と結びつきの強いYouTubeを優先媒体とし、効率的に広告を展開した結果、アプリインストールの単価は大幅に改善。また、従来の「作品メイン」だった広告から「漫画を読む魅力」を訴えつつ「サービスメイン」に転換したことで、新規ユーザーには電子コミックを広く訴求、すでにアプリをインストール済みのユーザーには、継続利用を促す効果的な広告が配信できた。
「LINEマンガ」の原点回帰/まとめ
「作品」単体が持つパワーに頼らず、「漫画を読むことが好き」な層に向けて、有効な媒体から多くのユーザーを獲得できたことは今後の広告業界に大きな影響を与えるだろう。アプリの継続利用の促進では「LINEマンガサービス」そのものに焦点を絞った「原点回帰」ともいえる広告クリエーティブが奏功した。サービスそのものの価値を再確認できる「訴求効果の高いクリエーティブ広告」として、さまざまな業界で参考事例となるのではないか。