仕事で限られた時間内に、できるだけ多くの売上をあげねばならないとしたら、あなたはめったに売れない単価の高い商品を選んで積極的に拡販しますか。それとも頻繁に売れるが単価の安い商品を選んで懸命に売り歩きますか。
今回はこのような時に参考にすると、とても効率的に思考できるパレートの法則を紹介します。
パレートの法則とは?
パレートの法則は、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが提唱した法則で、ばらつきの法則、80:20の法則とも呼ばれます。
パレートは数理経済学の統計分析を使って、所得分布の不均衡を明らかにした際に、「社会全体の8割の富が2割の高額所得者に集中し、残りの2割の富が8割の低所得者に配分される」という法則を発見。これがパレートの法則と呼ばれるようになりました。
この法則は現在では、品質や在庫、売上の管理、マーケティングなど、ビジネスにおいても広く当てはめることができます。
●パレートの法則が用いられる事例
・売上の8割は、2割の優良顧客が購買している。
・売上の8割は、2割の優秀な従業員が生み出している。
・10項目の品質向上リストのうち上位2項目を改善すれば8割改善した効果がある。
・仕事に費やした時間全体のうちの2割で、8割の成果を生み出している。
このような法則は「冪乗則(べきじょうそく)」と呼ばれ、統計を行う場合にモデルの一つとして利用されます。
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マーケティングへの活用方法
冒頭で述べたような販売に関わるケースなどの場合、パレートの法則をABC分析という手法に用いて経営判断の材料にする場合があります。
●ABC分析
ABC分析は別名「重点分析」とも呼ばれ、店舗の売上管理などに用いた場合に売上や利益の上位を占める商品の資金的重要度(どの商品をどれだけ購入して在庫しておくか)を知る指標になる分析方法です。
たとえば、ある店舗が扱う商品AからJの販売を一定期間集計し、粗利額の合計で順位づけした表(ABC分析をする目的で集計した表をABC分類表と呼びます)にまとめたとします。
この粗利額の表をパレート図(ほとんどの表計算ソフトには、グラフの種類として用意されています)にプロットすると以下(表1)のようになります。
この場合は10製品中の上位3位までの商品C、D、Aで、全体の粗利の約76%を占めていることが確認でき、ここで得た情報を仕入れや在庫の参考にできるというわけです。表やグラフは一度作ってしまえば使い回しがきくので、週ごと月ごとに集計すれば販売傾向の予測にも使えます。また店舗などでは売り場面積も限られているため、利益や売上を上げてくれる商品を広い面積で陳列したい場合の目安にもなります。
ほかにもマーケティングへの活用方法として、営業所への営業マンの最適配置や販促キャンペーンの予算配分、顧客へのアプローチ頻度などにも応用することができるでしょう。
マーケティング以外でも使えるパレートの法則
パレートの法則は経済以外にも、自然現象や社会現象など、様々な事例にも当てはまります。
・住民税の8割は、住民のうち2割の富裕層が納めている。
・都市の交通量の8割は、都市全体の道路の2割に集中している。
・文章で使われる単語の8割は、全単語数の2割に当たる数の単語である。
もちろん、実際にはすべての事象が、きれいに80:20に分かれるわけではありません。ただし確率の法則と同じように、多くの事象を集めるとパレートの法則に近くなっていく傾向はあるようです。
パレートの法則の注意点
使えば便利なことが多いパレートの法則ですが、注意すべき点もあります。ABC分析の例でお話しした商品の販売などでは分析に役立つ法則なのですが、人間が関わる業務に応用する場合などには注意が必要です。
極端な例ではありますが、全売上の8割を売り上げる2割の優秀な営業担当を残し、ほかの営業担当を別の業務に異動させたとします。すると、残った優秀なはずの営業担当の成績が下降してしまうことがあるのです。これは「競争心」や「緊張感」といった、パレートの法則とは別の要素が絡んできてしまうことが原因だといわれています。
そしてもう一つ、ABC分析によって分類した残りの8割の商品ですが、これはすぐに売り場から撤去し、2割の製品で埋め尽くしてしまえばよいというものでもありません。店舗の場合は、多くの品揃えから商品を選ぶことを楽しみにしている顧客もいるからです。
つまり重要なのは、2割と8割の関係性とそのバランス。すべてにこの法則を応用すればよいというわけではないのです。
まとめ
◆パレートの法則とは、上位の20%が全体の80%を占めているという冪乗則(べきじょうそく)で、統計を行う場合にモデルの一つとして利用される。
◆パレートの法則は経済だけではなく、自然現象や社会現象など、さまざまな事例に当てはまる。
◆販売や売上に関わる分析を行う場合、パレートの法則やABC分析という手法を用いると経営判断の材料になる。
◆ただしすべての分析にパレートの法則を用いればよいわけではない。2割と8割の関係性を確認し、そのバランスに注意すること。