新型コロナウイルス感染拡大の影響は、生活者の意識や行動に大きな変化をもたらしています。日本では4月7日に指定の都府県で緊急事態宣言が発令され、同月16日には全国の道府県へ拡大しました。
緊急事態宣言の発令直後である4月11日から6月12日までの2ヶ月間、Googleは生活者の意識や行動を分析するための調査を実施しました。この調査によると、コロナ禍における社会変容は「急変期」「静粛期」「緊張期」「自制期」の4段階に分けられ、生活者の意識や行動は段階に応じて変化していたということです。
この記事では、4月以降のコロナ禍で生じた社会変容の変化について、各段階に分けて解説していきます。
コロナ禍の社会変容1. 急変期(4月11日〜4月24日)
コロナ禍における社会変容の第1段階「急変期」となるのが、緊急事態宣言発令直後の2週間です。
未知のウイルスに対する不安や恐怖感が最も高まっていた時期であり、1週目から2週目にかけて生活者の外出時間が短くなっています。また、マスクや消毒液の需要が急激に高まったことで品薄が続き、店頭ではなかなか手に入らない事態が発生しました。通常よりも商品価格が高くなったり、店内や行き帰りで感染するかもしれない不安があったりと、慣れない生活の中で生活者のストレスが上昇した時期です。
しかし、生活者はこうした不安を抱える一方、「充実させたい」「前より良くしたい」といった生活に対する前向きな気持ちも高めていました。
この頃は、テレワークや在宅勤務で通勤やオフィスでの感染リスクを減らしたり、VOD(ビデオ・オン・デマンド)や各種SNSを活用し自宅で過ごす時間を充実させたりと、オンラインサービスを利用して仕事や余暇を円滑に行う工夫をしています。また、連帯意識や助け合いの気持ちが最も高まった時期でもあります。
Googleは急変期について、緊迫した雰囲気がありつつも、人々の連帯意識の高まりが急速な行動変容を後押ししていたと分析しています。また、新しいオンラインサービスを取り入れる姿勢は、生活への前向きな気持ちと関係していると推測できます。なぜなら、生活に前向きな気持ちを持つ人ほど能動的にオンラインを導入していたからです。
コロナ禍の社会変容2. 静粛期(4月25日〜5月8日)
コロナ禍における社会変容の第2段階「静粛期」となるのが、ゴールデンウィークを含めた2週間です。
2020年のゴールデンウィークは、不要不急の外出を避ける「ステイホーム週間」となりました。 この頃は、「オンライン帰省」や「オンライン飲み会」といった新しいコミュニケーションが生まれ、離れた場所にいる家族や友人と行うテレビ通話が日常的に使用されるようになった時期です。Google検索では、すでに3月ごろから「オンライン飲み」というキーワードの検索量が増えています。
余暇の過ごし方や楽しみ方としては、VODやスマホゲーム、オンラインショッピングの利用のほか、外食ができない状況の中で、飲食店やファストフードのテイクアウトや出前の利用が大きく伸びています。 また、こうした生活を前向きに楽しんだ人ほど、余暇の楽しみ方に対する満足度が高いという調査結果も出ています。
Googleは静粛期について、これまでは物理的な対面を前提としていた医療や教育、ビジネスのオンライン化が進み、オンラインサービスの利用がピークに達した時期と分析しています。コロナ禍の生活に徐々に慣れてきた中、人々は主体的に心地よい日常を模索し始め、来たる「これから」の土台を形成した時期といえます。
コロナ禍の社会変容3. 緊張期(5月9日〜5月22日)
コロナ禍における社会変容の第3段階「緊張期」となるのが、ゴールディンウィーク明けからの2週間です。
緊急事態宣言は継続されたままで社会生活への復帰が迫られたこの時期は、コロナに対する不安よりも、経済や収入といった社会的な影響、人との繋がりが希薄になることへの懸念が目立ち始めています。 しかし、社会生活の再開にともない生活への前向きな気持ちが高まっていき、ビデオ会議やウェビナーの利用は連休前よりも活発化しました。仕事によってはオンラインでは完結できない状況があったため、人々の外出も増加しています。
また、この頃になると、コロナに関する情報探索の意欲は大幅に減少しました。情報提供がなくても生活者自らが対処していく姿勢が生まれたことや、コロナ禍の生活様式に慣れ順応してきたことが要因と考えられます。
Googleは緊張期について、人々はコロナ禍の生活には慣れてきたものの、緊急事態宣言が続いたことで状況を静観した時期だったと分析しています。多くのお店や施設では営業自粛が継続していたため、連休明けにもかかわらず人々の外出行動に大きな変化は見られなかったからです。
コロナ禍の社会変容4. 自制期(5月23日〜6月12日)
コロナ禍における社会変容の第4段階「自制期」となるのが、緊急事態宣言の解除を含めた3週間です。
指定の都府県で4月7日、全国の道府県で同月16日に発令された緊急事態宣言は、5月25日に一斉解除となりました。感染防止対策を施した飲食店や公共施設が営業再開したことで、仕事・余暇ともに外出が増加しました。しかし、宣言解除後も新型コロナウイルスの感染拡大は続き、事態の収束が見えない中、生活者の不安や疲労は増しています。
こうした状況にあった「自制期」のことを、Googleは従来の日常への「回帰(戻りたい)」とともに、新しい生活への「進展(進みたい)」が共存していたと表現しています。コロナへの不安が消えない中での生活は、従来への回帰を望みながらも、変化した環境に順応していくことも必要だからです。
また、Googleは、各個人が主体となって「戻りたがる人」と「進みたがる人」の間で葛藤する、つまり「回帰」と「進展」がせめぎ合うことで、コロナと共存する「これからの生活」を形作っていくプロセスになるという見解を示しています。
まとめ
◆コロナ禍における社会変容は「急変期」「静粛期」「緊張期」「自制期」の4段階に分けられ、生活者の意識や行動は段階に応じて変化している。
◆急変期:緊急事態宣言発令直後の2週間。コロナに対する不安や恐怖が高まる中、コロナ禍の生活に前向きな気持ちを持つ人は環境変化に順応している。
◆静粛期:ゴールデンウィークを含めた2週間。今年はステイホームを余儀なくされた長期休暇となり、オンラインを使ったコミュニケーションが活発化している。
◆緊張期:ゴールディンウィーク明けからの2週間。環境変化に順応しながらも、これからの社会生活に不安を抱いている。
◆自制期:緊急事態宣言の解除を含めた3週間。従来の日常への「回帰」と新しい生活への「進展」が共存し、「これからの生活」を形作っている。