ひと昔前と比べ、様々な商品が目まぐるしく開発されるようになってきた現代において、特定の商品を販促することは難しくなってきているといえるでしょう。また、インターネット社会になり、検索や口コミの共有が容易化したことも、消費者の購買行動の特徴を変化させたといえます。
そのような中で、消費者が商品に向ける注意や口コミの拡散というところに着目したマーケティングモデルが近年2つ提唱されました。旧式のモデルをAISAS(アイサス)、新たな捉え方のことをDual AISAS(デュアルアイサス)といいます。
今回は、AISASとDual AISASの内容とその歴史や活用方法について解説します。
AISASの提唱
商品の販促活動のためにはAttention(注意)を獲得する必要があるという発想が2004年に提唱され、それにAISASという名称がつけられました。AISASのAがAttentionを表し、ISASの部分がそれぞれInterest(興味)、Search(検索)、Action(購買)、Share(共有)を表します。消費者の商品に対するAttentionが購買行動を刺激するという思想です。
Attentionを獲得した商品は、消費者のInterestをひき、その後の購買行動へとつながるはずだという流れとなっています。
Dual AISASへの発展
2015年に入り、AISASモデルをより詳細に議論した、Dual AISASモデルというものが提唱されました。
このモデルでは、これまで考えられてきた購買行動に関するAISASの存在も仮定しますが、さらに「広めたい」という気持ちに関するAISASというものが存在すると考えます。このもう一つのAISASは「広めたいAISAS」と呼ばれ、それぞれActivate(活性化)、Interest(興味)、Share(共有)、Accept(受容)、Spread(拡散)の頭文字を表しています。
この、広めたいAISASの流れの中のAcceptは、Attentionを刺激することでそれを購買への興味へと「昇格」させるファクターとして登場しました。
SNSなどでの口コミの拡散が近年より無視できない影響力を持ち始めたことを受けて、それを広めたいAISASという部分に明確にわけて捉えたモデルであるといえ、単なるAttentionの獲得が購買につながるというよりも、それをいかにInterestへとつなげるのかというところにも着目したものになっています。
AISASモデルでのAttentionからInterestへの流れをより詳細に分析し、そこにSNSなどのプライベートコミュニティが重要な因子としてかかわってくると考えたのです。
AISAS、Dual AISASの活用例
例えば、ある新しいヘルスケア商品のプロモーションを考えることとします。
従来の考え方では、注意が興味へと昇格する過程についてあまり深掘りして考えず、注意をひければ購買への興味も持ってもらえるだろうという緩い因果関係を考えます。よって、ヘルスケア商品のCMやネット広告などで、いかに注意の量を確保するかという発想になります。
一方で、注意を興味にするためにはプライベートコミュニティでの拡散が重要であると考えるDual ISASの立場では、やみくもに注意の量を確保するというよりも、例えばインフルエンサーに試供品を提供するなどして商品を拡散してもらい、注意を購買への興味にいかにつなげるかというところも重視するようにします。
拡散を促進するための具体的方法としては、ほかにも拡散によって割引を付与するなどといった手法が考えられます。
マーケティングと細分化
今回のAISASからDual AISASへのアップデートから学べる教訓は2つあるでしょう。
1つは、時代の変化をいち早く把握して、モデルの更新を怠らないことの重要性。もう1つは、今回でいえば注意から興味へのつながりを詳細に議論したように、因果関係などの関係性はわかっているようでいて完全にはわかっていないことも多く、常に自分のモデルでどこまでが説明できるのかということを疑問視する姿勢を持つことが重要だということです。
常に何か向上できる部分がないかを考えることで、より正確なモデルをつくり続けていきたいものです。
まとめ
◆販促にはまずAttentionを獲得することが重要
◆Attentionを獲得することが購買への興味につながるというざっくりとした捉え方のことをAISASという
◆Attentionを購買への興味に昇格するためにはプライベートコミュニティでの拡散が重要であると考えたモデルのことをDual AISASという
◆時代の変化によってマーケティングのモデルは常に更新され続けていくものだと考えることが重要である
◆マーケティングを正確に行うためには、因果関係などの関係性を本当に明確に捉えられているかなど、モデルでどこまでが説明できるのかを考え続ける必要がある