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著作権とは?制作担当者が知っておくべき保護の期限・期間や侵害しないための基礎知識&ミッキー事例も紹介

2024.12.18
読了まで約 13

絵画や音楽、小説、映画といった著作物には全て著作者がおり「著作権」として権利が守られています。マーケティング活動を行う上で、自社のコンテンツが著作権を侵害していないか、取り扱いに悩む方や不安を感じる方もいるでしょう。

本記事では、著作権の基本的な概要や保護期限、ミッキーマウスの著作権事例、画像や音楽などのコンテンツにおける注意点を解説します。安全にマーケティング活動を行うためにも、著作権を侵害しない適切な運用方法を身に付けましょう。

著作権とは何か:基本の概念と原則

著作権とは、著作物を創作した著作者に与えられる権利です。著作者が創作した著作物に対し、勝手に商業利用されたり無断でコピーされたりするトラブルを防ぐものです。他人が著作者に著作物の利用を求めた場合は、条件付きで利用を許可するか、利用を拒否できます。

著作権の保護対象は、著作権法により「思想や感情を創作的に表現したもので、文芸・学術・美術・音楽の範囲に属するもの」と定義されています。つまり、絵画・音楽・小説・映画の他に、コンピュータプログラムや論文なども著作権の保護対象です。

著作権は、著作物が創作された時点で自動的に発生する権利で、特別な登録や手続きなどは不要です。これは、国際的にも共通したルールです。

ただし日本の著作権法においては、文化庁では「著作権登録制度」を設けています。著作権登録制度とは、著作者の実名や著作物を最初に公表した日付、著作権の所在を文化庁に登録することで、法律上一定の効果を得られる制度です。この制度により、著作物の取引を安全に行えるようになります。

もちろん著作権登録をしなかったからといって、著作物の権利が存在しないわけではなく、権利を侵害してもいい、ということでもありません。

出典:e-Gov法令検索「著作権法

著作権とその他の:財産の権利の違い

創造活動によって生み出された創作物が、創作者の財産として保護される権利を「知的財産権(知的所有権)」と呼びます。

知的財産権には、著作権に加えて「特許権」「意匠権」「商標権」といった産業財産権(工業所有権)が含まれています。著作権は権利を得るための登録や手続きが不要ですが、知的財産権に属する産業財産権に関しては登録をしなければ権利は得られません。

ここでは、著作権以外の知的財産権に含まれる権利に加えて、自身の姿を勝手に撮影されない自由を保護する「肖像権」の概要を解説します。

知的財産権とは:創作者の創作物を保護する制度

知的財産権は、前述した通り、創作者の創作物を財産として保護する制度です。知的財産基本法に基づき「著作物・発明・考案・意匠などの創造的活動によって生じるもの」と定義されています。

知的財産権は「知的創造物についての権利」と「営業上の標識についての権利」の2つに分けられ、それぞれの権利の中に以下の種類の権利が含まれます。

<知的財産権の種類>
1.「知的創造物についての権利」
・著作権
・特許権
・実用新案権
・意匠権
・育成者権
・回路配置利用権

2.「営業上の標識についての権利」
・商標権
・商号(商法)

出典:知的財産権について | 経済産業省 特許庁

特許権とは:発明に関する期限付きの独占的な権利

発明者に対し、有効な期限まで(出願日から20年間)その発明を独占的に使用できる権利を与えるのが特許権です。特許権に当たる発明は、特許法において「自然法則を利用した、技術的思想の高度な創作」とされています。

特許権には以下のような権利も含まれていますが、特許権が与えられる代わりに、発明者はその発明を公開しなければなりません。

実施権

特許権者が、他人にその発明の使用や生産といった実施権を与えて、その対価として特許権者がライセンス料を得られる権利です。

独占排他権

発明が保護されることで特許権者の権利が守られ、他人や他社によるその発明の使用や生産、譲渡などを排除できます。

意匠権とは:デザインを守る権利

意匠権は、商品や製品のデザインに対して独占的な権利を保障する制度です。

保護の対象は食品・衣類・日用品・内装・建築物・機械類など多岐にわたります。意匠登録により、コピーや模倣品から保護され、意匠権者は独占してそのデザインを使用できます。

意匠権を取得するには特許庁への登録が必要です。デザインを保護する権利のため、他の登録制の知的財産権と比べると、取得しやすい権利といえます。

商標権とは:ブランドマークを守る権利

商標とは、企業が自社の商品やサービスを他社と区別するためのマークや名称を指します。その商品やサービスのマークや名前、キャラクターを模したマークなどを財産として保護するのが商標権です。

商標は、消費者からの信用が積み重なることでブランドイメージが付くため、商品やサービスを表す顔としての役割も持ち合わせています。

商標権を取得する際は、特許庁に商標登録を行います。商標登録を行わずに商標を使用すると、他社が先に同様の商標登録を行っている場合、商標権の侵害になる可能性があります。

肖像権とは:人の姿を勝手に撮影・公表されない権利

どんな人でも、自身の姿を本人の同意なく勝手に写真や動画で撮影されたり公開されたりしない権利があります。それが肖像権です。肖像権はプライバシーを守る権利の一種と考えられます。

肖像権侵害の判例では、撮影された人の社会的地位や撮影の状況、場所、目的などが考慮されることがほとんどです。なお、撮影された動画に映った人の姿が小さく、個人の特定ができない場合や、モザイクを入れて個人を判断できないようにしている場合は、肖像権の侵害には該当しません。

関連記事:ディープフェイクとは。法律は?詐欺など悪用事例への対策

著作財産権、著作人格権、著作者隣接権とは

著作物を創作した著作者に与えられる、著作物を保護する権利が著作権です。著作権には「著作財産権」「著作人格権」「著作者隣接権」などが含まれます。詳しく見ていきましましょう。

著作財産権とは:著作人格権を除いた著作権

著作権の権利には、人格的な利益を保護する著作人格権と、財産的な利益を保護する著作財産権の二つがあり、著作財産権のほうを略して著作権と呼ぶことがあります。

著作財産権は、全部あるいは一部を譲渡・相続できますが、著作人格権は著作者本人のみが持つ権利で、譲渡・相続ができません。

著作者は途中で変わることはありませんが、著作財産権を持つ著作権者は譲渡や売却により変更されることがあります。

なお、著作財産権には、以下の11の権利が含まれています。

1. 複製権:印刷、写真、複写、録音、録画などで再製する権利
2. 上演権・演奏権:公に上演、演奏などをする権利
3. 上映権:公にスクリーンやディスプレイに映写する権利
4. 公衆送信権・公の伝達権:公に放送・配信などをする権利
5. 口述権:口頭で公に伝える、口述の録音物や録画物を再生する権利
6. 展示権:作品を公に展示する権利
7. 頒布権:映画の複製物を販売・貸与など頒布(はんぷ)する権利
8. 譲渡権:映画以外の著作物や複製物を公衆へ譲渡する権利
9. 貸与権:映画以外の著作物の複製物を公衆へ貸与する権利
10. 翻訳権・翻案権:自己の著作物を翻訳、翻案(小説化、映像化、漫画化、アニメ化等含む)など二次的著作をする権利
11. 二次的著作物の利用権:上記の二次的著作物の著作者が持つものと同じ権利

出典:公益社団法人著作権情報センター(CRIC)「著作者にはどんな権利がある?」

著作人格権とは

著作人格権は、著作者だけが持つ権利です。譲渡や相続ができず、著作者が死亡すると権利も消滅します。

著作人格権には、著作物の公表の有無やタイミングを設定できる「公表権」、著作物の公表時に著作者名を表示するかどうかを決められる「氏名表示権」、著作物を勝手に改変されない「同一性保持権」といった3つの権利があります。

参考:公益社団法人著作権情報センター(CRIC)「著作者にはどんな権利がある?」

著作者隣接権とは:伝達者に与えられた権利

著作物を伝達する人に与えられている権利が著作者隣接権です。具体的には、放送事業者やレコード会社、著作物を歌うアーティストなどが権利者として挙げられます。

著作権は著作者や著作権者のみが持つ権利です。しかし、テレビ放送された番組などで著作権の侵害行為があった時、放送事業者などが権利を行使できる方が確認を取るのに都合が良く、著作者隣接権の効力が発揮されます。

なお、著作物を出版する出版社などには著作者隣接権が適用されません。

著作権の有効期限(保護期間)は何年続くのか

著作物の保護を目的とした著作権ですが、権利が存続する保護期間は何年になるのでしょうか。ここでは、保護期間の詳細や保護期間を計算する方法の他、著作権が消滅して存在しない状態であるパブリックドメインの概要を解説します。

保護期間の詳細:原則は著作者の死後70年

かつては、著作権の保護期間は著作者の死後50年までとされていました。しかし、現在は2016年(平成28年)に施行されたTPP12整備法(環太平洋パートナーシップ協定にともなう関係法律の整備)によって、保護期間は死後50年から「死後70年まで」に改正されています。

著作権に有効期限が設けられている理由は、著作物を保護する目的がある一方で、一定期間が経過した著作物は社会全体の共有財産にすべきといった考えがあるためです。

出典:環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備 | 文化庁

保護期間の計算方法

著作権法の第五十七条によると、保護期間を計算するには著作者が死亡した日、著作物を公表した日、創作した日の「翌年の1月1日」から起算して算出します。

文化庁による「著作物等の保護期間の延長に関するQ&A」では、鉄腕アトムや火の鳥などで知られる手塚治虫氏の著作権保護期間についての例えが記載されていましたので、参考になると思います。

手塚治虫さんの著作物は,手塚さんが平成元(1989)年に亡くなられましたから,平成2(1990)年1月1日から起算して,70年後の,2059年12月31日まで保護されることとなります。

出典:著作物等の保護期間の延長に関するQ&A | 文化庁

参考:e-Gov法令検索「著作権法」

外国の著作物はどうなる?

外国の著作物の保護期間は、原則日本の著作権法が適用されます。つまり、外国の著作物でも、保護期間は著作者の死後70年までです。

なお、死後70年よりも保護期間が短い国の著作物である場合は、その国の保護期間が適用されます。

出典:e-Gov法令検索「著作権法」

戦時加算とは?:アメリカの場合は保護期間に3794日が加算される

戦時加算とは、通常の保護期間に加えて、1941年12月8日から、当該国とのサンフランシスコ平和条約発効の前日までの期間(米国やオーストラリアについては3794日)を加算しなければならないという規定です。日本政府はこの条約をアメリカやイギリスをはじめとした48か国と締結しています。

1952年に発効されたサンフランシスコ平和条約に基づき、「連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律」が作られました。戦時加算は、この法律で決められています。

参考資料:サンフランシスコ講和条約(対日講和条約)|国史大辞典・世界大百科事典・日本大百科全書|ジャパンナレッジ

パブリックドメインとは?:著作権・知的財産権が消滅した著作物

知的創作物で、知的財産権が発生していないか、消滅している状態がパブリックドメインです。名称が示す通り、パブリックドメインは社会全体で共有されるべきものと位置付けられています。

著作権は著作者の死後70年まで保護されますが、この保護期間が過ぎると著作権は消滅するため、著作物はパブリックドメインとなります。

また、パブリックドメインと似た言葉に「著作権フリー」があります。パブリックドメインは著作権が消滅して存在しない状態であることに対し、著作権フリーは著作権がない創作物を指します。

著作権やパブリックドメインに関しては、下記の記事も参考にしてみてください。

関連記事:コピーライトの意味とは。all rights reservedは必要?正しい表記や書き方を徹底解説

ディズニーとミッキーマウス:著作権の象徴的事例

著作権の有効期限が延期された有名な事例としては、ディズニーのミッキーマウスが挙げられます。ミッキーマウスの著作権が延期された理由や、パブリックドメインとしてどのように利用されているのかを見ていきましょう。

また、ミッキーマウスの著作権は切れたものの、ミッキーマウスを自由に利用して商売などをしていいのかというと、実際はそうではありません。その理由についても詳しく述べます。

ミッキーマウスの著作権延期

ミッキーマウスが公にデビューした映画「蒸気船ウィリー」は1928年に公開されたため、ミッキーマウスの著作権は元々1984年に切れる予定でした。しかし、著作権法やアメリカの「ミッキーマウス保護法」により、最終的に95年間にわたり、ミッキーマウスの著作権は保持され、2023年末にようやく著作権が切れました。

「パブリックドメインのミッキー」の定義とは?

パブリックドメインになった作品やキャラクターは、商業利用や漫画などの二次創作ができるようになります。ミッキーマウスの一部は現在パブリックドメインであるため、ディズニーに関係なくミッキーを利用して商業利用や二次創作が可能です。実際に、アメリカではミッキーマウスを利用したホラー映画も制作されています。

ミッキーマウスの「商標権」は引き続き有効である

ミッキーマウスの著作権は切れたものの、ミッキーマウスという名前やデザインに関して、ディズニーは商標権を保有しています。そのため、侵害行為を行わないように注意しなければなりません。

たとえば自社ブランドのロゴマークにミッキーマウスを使用したり、ディズニー公式であるかのようなミッキーマウスの商品を作ったりすることは、商標権の侵害に当たる可能性があります。

商標権の存続期間は、設定登録日から起算して10年をもって終了するものの、事業者の営業活動によって蓄積された信用を保護するという目的があるため、必要な場合には何度も更新できます。

よって商標権が有効な限り、商標権の保護対象となる名前やデザインを侵害する商売はできないということです。

出典:商標制度の概要 | 経済産業省 特許庁

関連記事:ロゴ作成初心者必見!デザインの考え方やコツを解説

戦時加算、法改正、商標権などが影響し、日本産のミッキーマウスを利用した創作物の誕生はまだ先になる

日本でミッキーマウスを利用した創作物がまだ現れていないのは、ディズニーがもつ商標権への留意ももちろんありますが、主に戦時加算によって約10年5か月の著作権保護期間延長が適用されているためです。

また、日本国内の著作権に関する法律改正も多いため、著作権が切れたあとも慎重な動きが見られると予想されます。

著作権フリーとは:フリー素材を利用する際の注意点

パブリックドメインの解説でも簡単に説明しましたが、創作物の中には著作権フリーの作品も存在します。ここでは、著作権フリーやロイヤリティフリーの詳細を確認しましょう。

著作権フリーは

著作物に対し、著作者が著作権を放棄すると明示しているものを「著作権フリー」といいます。著作権フリーのものを著作者に許可なく利用しても、著作権を侵害することにはなりません。

ネット上には、著作権フリーの素材が数多く存在します。しかし、使用に関して条件がつけられているケースも多々あるため、利用規約を確認する必要があるでしょう。

ロイヤリティフリーとは?

著作権フリーと混同されやすいものに「ロイヤリティフリー」があります。ロイヤリティフリーとは、その著作物を使用したい人が著作者にライセンス料を支払い、その著作物を何度でも利用できる仕組みです。

ロイヤリティフリーの素材も数多く存在しますが、素材の利用料金は使用用途により変動する場合があります。また、ロイヤリティフリーの素材は、著作権フリーとは異なり、著作権は放棄されていません。

著作権フリー素材利用の注意点

トラブルを防ぐためにも、著作権フリー素材を使用する際は以下のポイントに注意しましょう。

著作権を確認する

素材を使用する場合は、必ず著作権フリーか、条件がついているかを確認します。

利用規約を確認する

配布サイトの利用規約には、使用条件の制限や禁止事項などが記載されているため、必ず目を通すようにしましょう。

モデルリリースを取得しているかを確認する

モデルリリースとは、人物が特定可能な写真素材における被写体の人に、同意をもらう同意書のことです。モデルリリースを取得していない写真素材を使用すると、被写体の人から肖像権の侵害で訴えられてしまう恐れがあるため注意が必要です。

フリー素材については、下記の記事を参考にしてみてください。

関連記事
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音楽・画像・動画の著作権

続いては、音楽・画像・動画の著作権について詳しく解説します。

音楽の著作権:JASRAC、パブリックドメイン、オリジナル曲など

音楽の著作権には、著作物を複製する「複製権」、著作物を公に上演・演奏する「上演権・演奏権」などの権利があります。

音楽著作権管理事業者には、一般社団法人の「JASRAC」が存在します。飲食店などの店舗で音楽をBGMとして流す際は、JASRACに著作権使用料を支払わなければなりませんが、著作権そのものは扱っていません。

パブリックドメインの音楽は、著作権者やJASRACに使用許諾を得なくても第三者が利用できます。なお、自作でオリジナル曲を作った場合の著作権は、制作した時点で自然に発生します。

写真・画像の著作権:写真、イラスト、アイコンなど

画像には、写真やイラスト、アイコンなどが含まれます。これらも著作権者の許可なくコピーをしたり、商業利用したりすると著作権の侵害になります。画像が保有する権利としては、著作人格権、写真自体の著作権、被写体の肖像権、イラスト自体の著作権があります。また、ロゴマークの画像には商標権も存在します。

自社でマーケティング活動を行う際は、予期せぬトラブルを防ぐためにも、使用する写真やイラスト、アイコンの著作権や商標権を確認し、使用する場合は必ず許諾申請をしましょう。

動画の著作権:テレビ番組の投稿、ネタバレ動画、歌ってみた、踊ってみた動画など

企業や個人がオリジナルで作った動画コンテンツには、全て著作権があります。動画にはさまざまな種類がありますが、動画内で使用する音楽は著作権で保護されているものを勝手に使用できません。

テレビ番組の投稿やネタバレ動画をYouTubeに投稿するケースもよく見られますが、以下のような行為は著作権侵害に該当し、罰金や懲役が課される可能性があります。

<動画における著作権侵害>
・著作権者に無断でテレビ番組や映画を投稿する
・動画のBGMにCMの音源を使用する
・著作権者に無断で漫画のネタバレ動画を投稿する
・著作権の保護期間中にある本の朗読を配信する

また、YouTube内で公開する動画に楽曲を使用する際の注意点については、以下の記事でも解説していますので参考にしてください。

関連記事:Twitter(X)動画の保存・ダウンロード方法と注意点&投稿のポイント、効果的な動画の作り方を解説

著作権マーク(マルシー)とは

著作権を保護する表記をコピーライトと呼び「著作権マーク(マルシー)」とは、そのコピーライトを表します。マルシーは、万国著作権条約で規定されている国際的なマークです。

著作権侵害とは:種類、事例、罰則

著作権侵害とは、他人の著作物を著作権者の許可なく利用することです。著作権侵害は民事・刑事上、損害賠償や刑事罰の対象となります。

なお、著作権の侵害は法改正により非親告罪となりましたが、一部は親告罪とみなされています。非親告罪とは、被害者や法定代理人などの告訴の有無に関わらず被疑者が起訴される犯罪で、一般的な犯罪の多くが非親告罪です。一方の親告罪は、被害者や法定代理人などの告訴がなければ、起訴されない犯罪のことです。

そこで著作権侵害の種類や事例、罰則などの詳しい内容を見ていきましょう。

参考:文部科学省「著作権法における親告罪の在り方について

著作権侵害の種類(複製、公衆送信、改変)

著作権侵害の種類は以下の通りです。

複製権の侵害

複製権は著作物全部、あるいは一部を複製する権利です。著作権者以外が複製した場合は複製権の侵害となります。

上演権・演奏権の侵害

上演権・演奏権は著作物を公に上演したり、演奏したりする権利です。著作権者の許可を得ずに上演・演奏をした場合は侵害となります。

上映権の侵害

上映権は映画などの著作物を公に上映する権利です。著作権者の許可を得ずに上映した場合は上映権の侵害となります。

公衆送信権の侵害

公衆送信権は有線放送や著作物をインターネット上にアップロードする、配信する、といった権利です。動画配信プラットフォームでよく見られる違法アップロード動画などはこの権利を侵害したものです。

口述権の侵害

口述権は著作物を公に口述する権利です。たとえば著作権保護期間中にある書籍をもとに、引用の範囲を超えた長時間にわたる朗読イベントを開催したり、営利目的の読み聞かせ動画を配信したり、といった場合は、口述権の侵害にあたります。

引用の要件については下記を参考にしてください。

関連記事:引用とは?参照・参考・転載との違いや意味、書き方について解説

参考記事:本の読み聞かせは著作権の侵害? | 長野第一法律事務所

展示権の侵害

展示権は美術または未発行の写真といった著作物を公に展示する権利です。著作権者の許可を得ずに展示した場合は展示権の侵害となります。

頒布権の侵害

映画やゲームソフトなどの著作物を複製して頒布(はんぷ)する権利です。著作権者の許可を得ずに頒布した場合は頒布権の侵害となります。

譲渡権の侵害

譲渡権は映画を除く著作物の原作品あるいはその複製品を譲渡し、公衆に提供する権利です。一度流通に乗った商品の譲渡権は消尽(しょうじん)するという判例があるため、たとえば中古商品の売買に関して譲渡権は及びません。ただし各権利に則らずに違法に複製された商品が販売される場合には譲渡権侵害が適用されます。

参考記事:頒布権・譲渡権:著作権法 | 総務辞典 | 月刊総務オンライン

貸与権の侵害

映画を除く著作物の原作品あるいはその複製物を貸与し、公衆に提供する権利です。たとえばレンタルCDショップが音楽CDの著作権者に許可を得ず、有料でCDを貸し出した場合は貸与権の侵害となります。

翻訳権・翻案権の侵害

翻訳権・翻案権は著作物の翻訳や編曲、小説化、漫画化、アニメ化、映像化といった翻案など、二次的著作を行う権利です。著作権者の許可を得ずに翻訳・翻案した場合は侵害となります。

二次的著作物の利用に関する原著作者の権利の侵害

二次的著作物の権利とは、著作者は二次的な著作物の利用に関して、二次的な著作物の著作者が持つ権利と同一の権利を持つことを規定したものです。たとえば小説家Aさん原作の小説を漫画家Bさんがコミカライズしたい場合はAさんに許可を得る必要があります。さらにBさんのコミカライズ作品を映画監督のCさんが実写化したい場合は、BさんだけでなくAさんの許可も得る必要があります。

CさんがBさんだけに許可をとってBさんが原作者とした映画を撮った場合は、Aさんの「二次的著作物の利用に関する原著作者の権利」を侵害したと判断されます。

著作権侵害は非親告罪化されたが一部は親告罪

著作権法の侵害については、これまで親告罪(被害者や法定代理人の告訴があって初めて公訴や捜査、処罰が行われる犯罪)を採用していましたが、法改正によって2018年12月30日以降は被害者からの告訴がなくても捜査・処罰対象となる非親告罪化がされました。

ただし、個人が発行する同人誌など、著作権者の許諾を得ていない二次創作が著作権侵害の捜査対象となり、実際に訴えられた明確な判例が少ないため、現状では親告罪とみなされているケースが多いと考えられます。

出典:文部科学省「著作権法における親告罪の在り方について

よくある著作権侵害の事例

ここでは、よく見られる著作権侵害の事例を紹介します。

漫画やテレビ番組を違法にアップロードする

広く一般に流通している漫画やアニメ、音楽、公共放送されたテレビ・配信番組、映画、配信動画などを違法にアップロードしたり、違法とわかりつつ海賊版サイトからダウンロードしたりする行為は著作権侵害に該当します。

無断で画像をSNSのアイコンに使用する

SNSのプロフィールアイコンに漫画のイラストを無断でコピーして使用するのは、著作権侵害にあたります。漫画のキャラクターが商標権を登録していた場合は商標権侵害が考えられ、実在の人物の写真を利用した場合は肖像権侵害にあたる可能性があります。

関連記事
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社内や店舗でBGMとして音楽をかける

購入したCDでも、社内や店舗で音楽を流す場合は、JASRACといった著作権管理団体に許諾料を支払わないと著作権の侵害とされるケースがあります。

文章をコピーする

小説や論文、Web記事などの著作物を無断でコピーして自身の著作物に使用すると、著作権侵害に該当します。なお、コピーして使用するケースの中には「引用」があり、引用の要件を守っている場合には著作権侵害にあたらないこともあります。

関連記事:引用とは?参照・参考・転載との違いや意味、書き方について解説

著作権侵害の罰則

著作権を侵害してしまうと、下記のように民事上の請求や刑事上の罰則を受ける可能性があります。

1.民事上の請求
・損害賠償
・侵害行為の差し止め
・不当利得の返還
・名誉回復といった措置

2.刑事上の罰則
10年以下の懲役または1000万円以下の罰金、その他にも5年以下の懲役または500万円以下の罰金といった罰則が定められています。

著作権の対象外となる例

創作物の全てが著作物に該当するわけではなく、著作物でないものには著作権は存在しません。著作権の対象外となる代表例を6つ解説します。

なお、著作権はないものの、「特許権」「実用新案権」「意匠権」「商標権」などの知的財産権が適用されるケースもあります。

事実の伝達・事件の報道

事件の報道、事実の伝達といった際に使用するデータなどは、著作権法における「創作的な表現」に該当しないため著作権の対象外となります。

思想・アイデア

思想やアイデア、感情は著作権法の「創作的な表現」に含まれず、著作物とはみなされないため、著作権法は適用されません。

しかしビジネスモデルや技術的なアイデアは「特許権」や「実用新案権」で保護されている可能性があります。また、企業秘密として管理されているアイデアは、不正競争防止法によって保護されている場合があります。

実用品・工業製品

実用品や工業製品は、著作権法における「文芸や学術、美術などの範囲」に該当しないため、著作物として認められていません。ただし製品のデザインや形状が特徴的である場合、「意匠権」によって保護されている可能性があります。

短い表現

文章の表現は著作物に該当するものが多く見られます。しかし、短い表現やありふれた表現、すでに決まっている表現の場合は、創作的ではないことから著作物として認められないケースがほとんどです。

機械によって作成したもの

機械やコンピュータによって作成されたものは、創作性が否定されているため、著作物として認められてはいません。しかし、機械やコンピュータが作成したものでも、一部を人が関与している場合は創作性が認められるケースもあります。また、AI技術自体は「特許権」の対象となる可能性があります。

キャラクターそのもの

漫画やアニメ、テレビ番組などのキャラクターそのものは著作物に該当しませんが、キャラクターのイラスト自体は著作物に該当します。

また、ディスニーのミッキーマウスの項目でも解説したように、キャラクターの名称やロゴは「商標権」で保護されている可能性があります。また、キャラクターの商品化や使用に関しては、不正競争防止法による保護も考慮する必要があります。

まとめ:著作権トラブルを防ぐには

著作権のトラブルや侵害行為を防ぐには、以下の対策を実施することが重要です。

●著作物使用時の許諾申請を徹底
●顧問弁護士への相談

マーケティング活動などで著作物を取り扱う際は、以下の点に注意しましょう。
●自社のコンテンツが第三者の著作権を侵害しないよう配慮する
●協力関係にある著作者との契約書に著作権に関する記載を明確にする

著作権侵害は民事・刑事罰の対象となる可能性もあるため、トラブルを未然に防ぐ努力が欠かせません。適切な対策を講じることで、法的リスクを軽減し、円滑なマーケティング活動を維持することができるでしょう。

監修者

古宮 大志(こみや だいし)

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長

大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、クライアントのオウンドメディアの構築・運用支援やマーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。Webマーケティングはもちろん、SEOやデジタル技術の知見など、あらゆる分野に精通し、日々情報のアップデートに邁進している。

※プロフィールに記載された所属、肩書き等の情報は、取材・執筆・公開時点のものです

執筆者

『MarkeTRUNK』編集部(マーケトランクへんしゅうぶ)

マーケターが知りたい情報や、今、読むべき記事を発信。Webマーケティングの基礎知識から、知っておきたいトレンドニュース、実践に役立つSEO最新事例など詳しく紹介します。 さらに人事・採用分野で注目を集める「採用マーケティング」に関する情報もお届けします。 独自の視点で、読んだ後から使えるマーケティング全般の情報を発信します。

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