ビジネスシーンにおいて、会議という場での情報共有や意見交換は非常に重要なプロセスです。しかし、事前準備ができていなかったり、会議の指針がうまく定まっていなかったりすることで、うまく意見がまとまらずに会議が終わってしまった、という経験をした人も少なくないでしょう。
そこで、会議の参加者へ向けて、会議の目的や議題にかかわる情報や資料をまとめ、事前準備を促す目的で作成される資料が「アジェンダ」です。会議前にアジェンダを確認しておくと、参加者の意思統一が図られ、効率よく会議に臨めるようになるでしょう。
この記事では、企業活動における「アジェンダ」の定義や、現在アジェンダが積極的に活用されている理由からアジェンダ作成の注意点まで、スムーズに会議を実施できるアジェンダ作成のコツを詳しく解説します。
目次
アジェンダとは
アジェンダとは、辞書を引くと「予定」「スケジュール」などの意味があることがわかります。日本では、1992年にブラジルで開催された「地球サミット」という国連会議で採択された行動指針が「アジェンダ21」という名称であったことが、広く知られるようになったきっかけの一つと言われています。
一方で、ビジネス用語として用いられる「アジェンダ」の意味は、会議をはじめとしたイベントの進行やスケジュール、それらの情報をまとめた資料のことを指すようになりました。単なるスケジュール表という意味合いではなく、会議を効率的かつ円滑に進められるように、目的や具体的なゴール設定を含めた内容を記載したものをまとめて、会議の実施前に参加者に配布します。
例えば「次の会議のアジェンダを作って」と言われた場合、「会議の目的・議題やスケジュールをまとめた資料を作ってほしい」という意味になります。
他の言葉との違い
ビジネス用語には、アジェンダと意味が似通っている言葉もあります。「レジュメ」や「議案」などの用語とは、どのような違いがあるのでしょうか。
レジュメ
レジュメはもともとフランス語の単語で、「要約」という意味を持ちます。ビジネスの場で用いられる際は、情報を発信する内容を端的にまとめたものを指し、会議というよりはセミナーや講演会などの場で用いられることが多く、アジェンダとは場面によって使い分けられています。
議案
議案は、会議などの議題を決定するために、テーマや目的を提案するためのアイディアや提案のことを指します。
つまり、「議題を決定するために議案を挙げる」という関係性になるのです。
アジェンダは会議やイベントの議題が明確に決定されていない状況も考えられますが、議案は明確な提案内容やアイディアがまとまっている状態である点が大きな違いです。
議事録
議事録は会議の内容そのものを記録したもので、文書で記録したりレコーダーなどを使用し音声データで保存したりする場合もあります。議事録の目的は、会議の内容をいつでも振り返られるようにするためと、会議メンバーへの共有です。
アジェンダは会議の準備段階で情報を共有することが主な目的ですが、議事録は会議が終わった後に情報をまとめて共有できるようにする点が大きな違いと言えるでしょう。
サマリー
サマリーは英語が語源の用語で、「要約」「要点」という意味を持っています。
レジュメも同じ「要約」という意味を持ちますが、サマリーは報告書や企画書など、ビジネスシーンで用いる文書を要約したものを指します。レジュメはこれから実施する会議の内容を要約した資料のことを指すため、要約する対象によって使い分けを行います。
議題やスケジュールの概要をアジェンダ、会議の内容や情報がまとめられたレジュメでそれぞれ確認し、会議が終了した後にサマリーにまとめる、といった流れが主流です。
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アジェンダが必要な理由
では、ビジネスの場においてアジェンダが求められるのはなぜなのでしょうか。具体的な理由をまずは把握しましょう。
事前準備を促すため
アジェンダは、これから実施される会議に関する概要や、スケジュールをまとめたものです。事前に会議の情報を参加者に共有し、アジェンダに目を通すだけで円滑に事前準備を行えることが大きな目的の一つと言えるでしょう。
事前にアジェンダを共有しておくことで、各参加者が意見をまとめる期間を確保できるため、円滑な意見交換やディスカッションが可能になります。
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目的をクリアにするため
次の理由として、会議の議題や目的・ビジョンを事前にすり合わせて明確にする意味合いがあります。
特に、会議の人数が多くなればなるほど、それぞれの参加者が持つ意見があり、最終的にそれらの意見を一つにまとめる作業が必要になります。
そこで、あらかじめ会議の内容や目的を周知させることで参加者の意思統一が図れるため、大幅な意見の不一致を防ぎ、会議の方向性をまとめあげられるようになるでしょう。
時間配分を意識するため
会議はその議題や内容はさることながら、限られた時間の中で滞りなく進行させることも重要です。議題が複数に及ぶ場合など、スケジュールと時間配分を記載しておくことで、タイムキーパー役の負担を減少させるだけでなく、限られた時間を有効に使おうという意識を定着させやすくなるでしょう。
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アジェンダの要素
続いて、アジェンダを作成するにあたり、入れ込みたい内容や要素について解説します。
会議名、日時、場所
冒頭には、会議の名称および会議が行われる日時、会議室などの場所を記載します。
会議の名称は、もっとも重要な議題のフレーズをふまえつつ、参加者が内容を想起させやすいものにしましょう。
社内会議ではなく、クライアントなど他社のメンバーとの会議の場合、場所の説明はよりわかりやすく、地図やイラストなどで経路案内を付け加えるとより親切です。
参加者
次に、会議に参加するメンバーを記載します。部署やグループ、企業の垣根を超えた大人数の会議の場合は、名前だけではなく企業名や部署名、役職などもあわせて記載しましょう。
また、議題が複数に及ぶ場合は、議題ごとの進行役を付け加えておくと、会議当日の流れが把握しやすくなります。
目的やゴール
議題とは別に、「今回実施する会議で何を達成したいのか」という目的・ゴール設定をあらかじめ記載しておきましょう。何をすべきなのかが参加者にとって理解しやすいように、「テーマについて」などのあいまいな表現はせず、達成したい事柄を周知できる内容にします。
また、議題やトピックが複数に及ぶ場合、異なる目的やゴール設定をしなければならない場合は、議題とセットで記載することで関係性を明確にする方法もあります。
議題と時間配分
続いて、議題そのものの選定と、スケジュールを組むための時間配分を決定します。
あくまでこのスケジュールは予定ですから、あまりにも事細かに決めなければならないわけではありません。しかし、説明やプレゼン、アイディア出し、質疑応答の時間など、属性ごとにある程度の時間を区切って構成を考えると、実際に必要とされるであろうタイムスケジュールが分かりやすくなります。
アジェンダを確認する参加者側にとっても、会議を進める指針として目安となる時間配分を記載することは大きなメリットと言えるでしょう。
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配布資料
別途で参考にしてほしい資料がある場合は、最後の項目に配布資料へと誘導する欄を作ります。ボリュームのある資料や特に参照してほしい具体的なページがある場合は、特に重要なパートや該当するページなどをあわせて記載しておくと、確認漏れのリスクを減らせます。
アジェンダ作成のポイント
円滑に会議を進められるようなアジェンダ作成を心がけるためには、以下のポイントに留意してください。
目的と内容の明示化
まずは、会議の目的と議題を明確に、かつ簡潔に表現することが重要なポイントの一つです。
事細かに情報を詰め込んだり、ガイドをしたりする必要はありませんが、会議を実施する目的や、ゴール設定を分かりやすく記載しておくと、参加者にとっても何を準備すべきかが分かりやすくなります。最終的に結論を出したいテーマを明確にすることで、余計な話題で脱線して時間をロスするリスクを減らす効果も期待できるでしょう。
また、ゴール設定というと業績などの具体的な数字や成果物の完成などを思い浮かべるかもしれませんが、具体的に形になるものだけを選ぶ必要はありません。
ゴールを達成することで、会議の参加者やチーム、会社、そしてプロジェクトなどにかかわるクライアントとどのような状態・ステータスになっていたいかを想像し、ゴールに定めることも目的の明示化につなげられるでしょう。
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優先順位の提示
議題やテーマが出そろったら、最も重要と考えられる議題から順番にランク付けをします。
より重要性の高い議題や、特に時間をかけてディスカッションをしたい内容を明確にしておくと、効率よく会議を進行させられるうえに、スケジューリングも容易になります。
優先順位の高い議題を先に済ませておくスケジュール立てをしておくと、仮に時間配分通りに会議が進まなかったとしても、むやみに会議時間を延長させたり回数を増やしたりするリスクを軽減できるためです。
事前共有は余裕を持って行う
会議の参加者がアジェンダの内容を確認したり、ディスカッションの準備をしたりする時間の確保がしっかりとできるよう、少なくとも会議の前日までには参加者全員に共有しておくのがベストです。
会議当日にアジェンダを配布してしまうと、会議以外のタスクをこなす必要があるメンバーは充分に確認を取る時間がありません。せっかくアジェンダを作成しても、確認の時間が取れずに内容を把握できない参加者が生まれてしまうのは避けたいところです。
また、作成したアジェンダは上司などに了承を得てから共有される場合がほとんどですから、チェックの時間を考慮したうえで配布のタイミングを調整してください。
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アジェンダ作成で注意すること
スムーズに会議が進められるように、アジェンダ作成の段階で注意しておきたいポイントをチェックしておきましょう。会議の最中だけでなく、議事録作成など会議後のプロセスも円滑に進められるように意識すると良いかもしれません。
重要な議題を決めておく(議題を詰め込みすぎない)
優先順位をつける項目でも解説しましたが、議題が複数に及ぶ場合、特に重要な議題はあらかじめ設定しておくとスムーズです。スケジュール作成側においても参加者側においても、議題の重要性を区別しておかなければどの議題から手をつけるべきなのか把握できず、スムーズに準備することが困難になります。会議のはじめにもっとも重要な議題について議論するスケジュールを組むなどして、議題の重要性を把握できるようにアジェンダを作成しましょう。
また、議題を必要以上に詰め込みすぎないことも意識しましょう。詳細にアジェンダ内で時間配分を設定したとしても、実際にその通りに進行できるとは限りません。このとき、余裕のない時間配分になってしまうと、トラブルなどが生じたときの軌道修正が困難になります。
適度な休憩時間などを設けつつ、余裕のある時間配分にスケジュール調整を行いましょう。
議事録作成まで意識した形式にしておく
会議はアジェンダ作成をはじめとした事前準備も重要ですが、会議の内容を忘れずに振り返られるよう議事録の作成も重要なプロセスと言えます。そこで、会議終了後に議事録を作成することを念頭に置きながらアジェンダ作成に取り組みましょう。
議事録作成には、意見の発信者を明確にすることが求められます。なぜなら、意見がどの立場から発せられたかによって、意味合いが大きく変わる場合があるためです。
もちろん具体的な発言の記載は会議が始まる当日までわかりませんが、議題ごとの進行役や責任者をアジェンダに記載していれば、大まかな意見の発信者を把握することができるため、議事録作成をスムーズに行えるでしょう。
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アジェンダのテンプレート
会議が実施される頻度は企業によって大きく異なりますが、会議が行われるごとに一から仕上げるのは作成者にとって負担がかかります。そのため、自社で使用するためのテンプレートをあらかじめ作っておくのもひとつの方法です。
また、アジェンダ用のテンプレートを公開しているWebサイトなどもあるため、そのようなサービスからダウンロードして使用するのも良いでしょう。
「アジェンダの要素」の項目で解説した内容を盛り込んだアジェンダのテンプレートはこちらからダウンロードできます。
まとめ:有意義な会議を実施するためには、アジェンダを活用して事前準備を忘れずに
アジェンダは、会議の実施意図や議題を明確にしたうえで、会議内容にかかわる情報を包括的に確認できる事前資料です。作成のポイントを理解することで、会議の参加者に対して有益な情報共有ツールとなり、スムーズに会議を進行させることが可能になるでしょう。
アジェンダを作る時は、読み手にとって理解しやすい内容にまとめることが重要です。議題の優先順位を明確にする、ゴール設定のビジョンを揃える等を意識して、有意義な意思決定ができる会議を目指しましょう。