「シームレスインナー」など、アパレル関連でよく耳にする「シームレス」という言葉があります。縫い目や継ぎ目がなく肌への負担が少なくなる商品として人気があるため、店頭やネットショッピングで「シームレスのアパレル商品」を見たことがある方も多いでしょう。
現在では、シームレスという言葉はアパレル以外の業界でも使われるようになっています。ビジネスシーンでは「ユーザーが複数の機能・サービスの境目を意識することなく利用できること」という意味で使われ、ITやUXを検討するうえでも重要な用語です。
この記事では各業界におけるシームレスの意味や使用例を紹介します。ITやマーケティング分野におけるシームレスの重要についても解説しますので、最後まで読んでいただければシームレスについての理解が深まるはずです。
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目次
シームレスとは?
シームレスとは「縫い目や継ぎ目がない」という意味の言葉です。分解すると「seem(継ぎ目)+less(ない)」となります。
アパレル業界での意味
アパレル業界では「縫い目のない」という意味で用います。
代表的な商品としては、シームレスストッキング(縫い目がないストッキング)、シームレスダウン(縫い目がないダウンジャケット・コート)などがあります。
ビジネス用語としての意味
ビジネスシーンでは、「ユーザーが、複数の機能・サービスを、境目・垣根を意識せずに利用できること」という意味となります。
実際には別々の機能やサービスを使っていても、画面遷移やサービス利用の仕組みを工夫することで、ユーザーが機能・サービスの垣根を意識しにくくなります。
また組織運営においては「管理職と一般社員のシームレスな関係」「部門間のシームレスな連携」といった使われ方がされ、「立場の違いを超えた、垣根のない関係性」といった意味になります。
IT業界におけるシームレス
IT業界で「シームレス」という言葉を使う場合には、「複数サービス・ソフトが一体化して利用できる状態」という意味になります。サービス自体は別々であっても、自動で画面が遷移するなど、ユーザーが切り替えを意識することがない状態もシームレスです。
具体的な例は以下の通りです。
● Wi-Fi接続とスマートフォンのモバイル回線が自動で切り替わる
● アプリからWebサイトへ、またはWebサイトからアプリへ遷移する
● メッセージ画面から予約画面への遷移
日常生活でのシームレス体験の例
日常生活でのシームレス体験の例を紹介します。
スマートフォン
シームレスの代表的な例としては、スマートフォンが挙げられます。
昔は「電話機」「ポータブルオーディオプレーヤー」「カメラ」「ゲーム機」など、用途に合わせた機器が別々に存在しました。
しかしスマートフォンなら、「電話」「メール」「映像コンテンツの視聴」「音楽鑑賞」「電子書籍リーダー」「写真撮影」「ゲーム」などをスマホ1台でこなせます。スマートフォンを家の鍵(スマートロック)として使ったり、財布代わり(タッチ決済やQRコード決済)や定期券として使ったりしている人もいます。
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オムニチャネル
オムニチャネルとは、オンライン・オフラインを含む複数の販売経路の垣根をなくし、ユーザーに「シームレスな購買体験」を提供するための販売戦略です。
以下のようなサービスを利用した経験のある方も多いのではないでしょうか。
● オンライン店舗で購入した商品を、実店舗で受け取る(店舗、専用ロッカー、ドライブスルーなど)
● 実店舗で試着し、オンライン店舗で購入する
● オンラインで実店舗の在庫状況を確認する
● オンラインと実店舗の購買履歴を統合し、ユーザーに合わせた提案を実施(おすすめ商品、クーポンなど)
オムニチャネル戦略により、ユーザーは快適な買い物体験ができます。
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さまざまな業界での意味と例文
複数の業界における、「シームレス」という言葉の使用例を紹介します。
医療
医療の世界では、「シームレス医療」「医療と介護のシームレスな連携」などの使い方をされます。
シームレス医療とは「外来」「入院」「在宅医療」の垣根を低く、あるいはなくし、患者さんが各段階に移行しやすくした医療という意味です。急性期(病気・ケガが発生して症状が不安定な時期)の治療からケアへの移行をスムーズに行うという意味でも使われます。
例文をいくつか紹介します。
● 電子カルテ規格の統一により、医療機関同士の情報伝達がシームレスに進むだろう
● 同一グループ内に急性期・回復期・療養型の病床を整備することで、シームレスなケアを提供できる
建築
建築の分野でシームレスと言うと、「建物の外と内、あるいは建物内の各エリアの境目をなくすこと」を指すのが一般的です。
また建築時に使われる配管にも、継ぎ目のない「シームレスパイプ」があります。パイプは継ぎ目にひびが入ってしまうことが多いため、シームレスパイプだとひびが入るリスクを減らせます。
例文をいくつか紹介します。
● リビングダイニングとウッドデッキの段差がなく、シームレスに空間が繋がっており、広々と感じる
● 階段のデザインを工夫し、1階と2階をシームレスにつなぐ
交通
交通におけるシームレスとは、「複数の交通手段の接続性を高めること」を指します。
例えば「電車でもバスでも同じ電子マネー・カードが使える」「鉄道会社の相互乗り入れ」「駅舎内のバリアフリー」などが交通のシームレス化に該当します。
例文を紹介します。
● ICTを活用し複数の交通手段を組み合わせ、検索や予約、決済まで一括で行うサービスであるMaaS(Mobility as a Service)連携の高度化により、移動のシームレス化が進んでいる
● 運行情報の共有化は、交通におけるソフト面でのシームレス化だ
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ゲーム
ゲーム業界では「シームレス」という言葉が使われる代表的な例としては、「シームレスバトル」があります。
シームレスバトルとは、ゲーム内のフィールドで敵とエンカウント(遭遇)した際に、戦闘用フィールドに切り替わらないことを指します。バトルに入ったときにもシーンが切り換わらないことで、プレーヤーがゲームの世界に没入しやすくなります。
例文を紹介します。
● ゲームへの没入感を高めるため、シームレスバトルを導入した
シームレスがなぜ重要なのか
シームレスの重要性について解説します。
社会的ニーズへの対応
まず、シームレス化は社会的に求められている対応であるといえるでしょう。すでに紹介したように、医療や交通など社会的インフラの分野においてもシームレス化が求められています。
またユーザーのインターネット滞在時間が長くなっている今、より快適な活動を実現するために、ネットサービスのシームレス化が求められています。
顧客満足度の向上
シームレス化は顧客満足度の向上にも寄与すると期待できます。シームレス化が快適な操作や購買行動に繋がり、ユーザー体験を向上させるからです。
例えばレジとクレジットカードやコード決済用の端末をシームレスにつなぐことにより、迅速な決済が可能になります。顧客満足度が高まり、売上・利益が増える効果が期待できるでしょう。
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業務の効率化
シームレス化は業務効率アップにも繋がります。
例えば顧客管理や書類管理システムを社内で統一したり適切に連携させたりすれば、複数組織が関わる業務もスムーズに遂行できます。医療機関における「電子カルテと画像管理システムなどの連携」なども、業務効率アップに寄与します。
シームレス化によって作業時間が早くなるだけではなく、ミスも減らせる効果も期待できるでしょう。
シームレスを実現するには
シームレス化を実現するために必要な要素や技術について紹介します。
UX
UX(User Experience)とは、顧客体験という意味の言葉です。ユーザーが商品・サービスを利用して得る体験のことで、感動・印象・使用感などを指します。
ユーザーがストレスを感じない、直感的でわかりやすいUX設計が、シームレスな体験に繋がります。
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AI
AI(人工知能)はシームレスな体験・サービスを提供するための重要な要素となっています。
AIによってデータを分析することで、ユーザーに対して迅速かつパーソナライズされた提案が可能となるためです。
サイトやアプリを訪れたユーザーに対して「パーソナライズ化された提案」や「質問への対応」を行うことで、ユーザーは欲しい商品・情報をより迅速に見つけ出すことができ、顧客体験が向上します。
またグラフィックデザインなどの分野においては、AIによって、従来は時間と手間をかけて作成していたシームレスなテクスチャが、より簡単に作成できるようになっています。
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IoT
IoT(Internet of Things、モノのインターネット)とは、家電などの物理的なデバイスがインターネットに繋がっている状態を指します。医療現場ではIoMT(Internet of Medical Things)という言葉も使います。
インターネットに繋がっているデバイスが増えるほど、それぞれの操作が煩わしいと感じるユーザーもいるでしょう。そこで活躍するのが、IoTです。デバイス同士がデータを共有したり互換性を高めたりすることにより、シームレスな体験が実現できます。
クラウド
シームレスな体験を実現するためには、「同期」が欠かせません。同期とはあるデバイスで行った変更が、他のデバイスにも反映されることを指します。
例えば「スマホ上でカレンダーに予定を登録すると、パソコンのカレンダーにも反映される」などがあります。また社内のシステムをクラウド化することで、複数の拠点での情報共有がスムーズになります。
同期を可能にするのが、クラウド技術です。クラウドがあることで、ユーザーはどのデバイスからでも必要な情報にすぐアクセスできます。
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まとめ:シームレスなサービスでユーザーにスマートな体験を
シームレスとは「継ぎ目・縫い目のない」という意味の言葉で、アパレル製品のみならずITやマーケティングの分野でもよく使われます。
AIやクラウドを駆使してシームレスな体験をユーザーに提供することにより、顧客満足度が高まり、売上アップや顧客ロイヤルティ向上に繋がることが予測できるでしょう。
反対に作業がブツブツと細切れになってしまう場合には、ユーザーが購買行動の途中で離脱してしまう可能性もあります。
そのためWebデザインやアプリ開発においては、シームレスな環境の実現を考慮することが必要です。