近年増えているビジネスモデルである「オンデマンド」は、動画配信だけでなく、さまざまなジャンルで展開されています。オンデマンドは英語の「on demand」が語源で、日本語では「要求に応じて」という意味からユーザーの要求に応じてサービスを提供する方式のことを言います。あらかじめ制作した動画をサーバーにアップロードし、ユーザーの好きなタイミングで利用できるように配信するYoutubeやeラーニングなどはオンデマンド配信の代表例です。
本記事では、オンデマンドや関連する用語の概要、オンデマンド配信の意味やメリット・デメリットなどを解説します。
目次
オンデマンドとは
オンデマンドとは、ユーザーの要求に応じてサービスを提供する方式のことです。英語の「on demand」が語源で、日本語では「要求に応じて」という意味を指します。例えば、Webはユーザーがページにアクセスするたびにコンテンツを表示するオンデマンドなサービスです。
一方、テレビやラジオはユーザーのタイミングにかかわらず放送される番組が決められているため、オンデマンドなサービスではありません。現在では動画配信を始め、さまざまなインターネットサービスで採用されています。
オンデマンド関連の用語
ここでは、オンデマンドに関連する用語を解説します。
オンデマンドに関連する用語として、「ビデオオンデマンド」「オンデマンド出版」「オンデマンド印刷」が挙げられます。
ビデオオンデマンド
ビデオオンデマンド(VOD)とは、サーバー上にアップロードされた動画をユーザーが好きなタイミングで視聴できるサービスのことです。具体例として、NetflixやHuluやAmazonプライムビデオなどが挙げられます。また、録画された授業動画を生徒の好きなタイミングで視聴するオンデマンド型授業もビデオオンデマンドの一種です。
1990年代にインターネットの普及によりビデオオンデマンドが注目されたことで、オンデマンドという言葉の認知度が高まりました。サービス形態は「広告掲載型のAVOD」「サブスクリプション制のSVOD」「レンタル型のTVOD」「動画を購入・保存するEST」の4つです。このうち、AVODは広告料が配信業者の利益になるため、ユーザーは無料で視聴できる場合もあります。
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オンデマンド出版
オンデマンド出版とは、書籍や雑誌をデジタル化し、注文に応じて印刷・製本して購入者に届ける出版サービスです。POD(Print On Demand)とも呼びます。注文が入ってから印刷するため、小口の注文にも対応可能です。また、データさえ残していればいつでも出版できるため、出版社や発行元の都合によって絶版や廃版になる恐れもありません。内容の変更・改訂などの更新作業が容易な点もメリットです。そのため、情報の更新が必要になりやすい政治・経済・芸能に関する本や需要が限られている学術書や専門書などの出版に適しています。
なお、電子書籍と似ていますが、オンデマンド出版はデータ販売ではありません。電子書籍のようにデジタル化されたデータを使って入稿・編集しますが、最終的な形態は紙書籍である点で大きく異なります。
オンデマンド印刷
オンデマンド印刷とは、デジタルデータを印刷機に直接送り込んで印刷する方式のことです。一般的に、書籍や雑誌などを印刷する場合、印刷版を使ってインクを転写させるオフセット印刷が使われます。
しかし、オフセット印刷は印刷版の作成や印刷機のセットアップにコストや時間がかかるため、少部数の印刷には不向きです。
一方、オンデマンド印刷は印刷版を使わないため、少部数の印刷でも少ないコストや時間で印刷できます。インクを乾燥させる時間も必要ないため、急いで印刷しなければならない場合でも安心です。これらのメリットから、一枚一枚内容が異なるものを連続して印刷する際に向いています。特に、送り先ごとに名前を差し替えなければならないダイレクトメールや定期的に更新されるマニュアルや仕様表の印刷に最適です。
オンデマンド配信とは
オンデマンドに関連する用語として特に有名なのが「オンデマンド配信」です。
ここでは、オンデマンド配信の意味やメリット・デメリットや利用シーンなどを解説します。
オンデマンド配信の意味
オンデマンド配信とは、あらかじめ制作した動画をサーバーにアップロードし、ユーザーの好きなタイミングで利用できるように配信することです。具体例として、Youtubeやeラーニングなどが挙げられます。
なお、ビデオオンデマンドはオンデマンド配信の一種です。オンデマンド配信には、ストリーミング配信とダウンロード配信の2種類に分けられます。
ストリーミング配信とは、サーバー上にあるデータを小分けにして受信し、読み込んだ分から順次再生していく配信方式です。メリットとして、全てのデータを読み込まなくてもすぐに再生できる点や端末の空き容量を圧迫しない点が挙げられます。
一方、ダウンロード配信とは、サーバー上にあるデータを端末に全てダウンロードする配信方式です。ダウンロードが完了するまでに時間がかかりますが、完了した後はインターネットに接続しなくてもコンテンツを繰り返し視聴できます。
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オンデマンド配信のメリット・デメリット
<メリット>
オンデマンド配信には、主に以下のメリットがあります。
● 時間や場所に限定されずに視聴できる
オンデマンド配信の最大の特徴は、時間や場所の制限を受けずに視聴できることです。仕事や家事の合間や通勤・通学中の電車の中など、隙間時間でも動画を楽しめるため、多くの視聴者に見てもらえるでしょう。
また、好きなだけ繰り返し視聴できるため、内容を理解してもらいやすくなります。特に、学問や専門知識を教える授業・講座動画や業務内容や操作手順を説明するマニュアル動画などに最適です。
● 動画の品質を上げられる
オンデマンド配信は事前に制作した動画をサーバーにアップロードして配信するため、ライブ配信とは異なり、何度も動画を撮り直せます。そのため、誤った情報を発信した際やアクシデントが起きた際でもリカバリーが可能です。
また、字幕や効果音やアニメーション、カットやトリミングなどの編集もできるため、動画をより伝わりやすくできます。
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● コンテンツが資産になる
基本的に制作した動画は半永久的に保存できるため、会社の資産としてビジネスに活用できます。
例えば、教育・研修の動画コンテンツをオンデマンド配信すれば、多くの従業員のスキルや知識を向上させられます。
また、オンデマンド配信はユーザーに有益なコンテンツを届けて顧客の獲得を狙うコンテンツマーケティングにも効果的です。商品やサービスの紹介動画を一度制作してWebサイトやSNSに公開すれば、ユーザーの自社商品やサービスに対する関心を自動的に高められます。
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● SNSで配信できる
YoutubeやInstagramやTikTokなど、各種SNSで動画を配信できる点もメリットです。これらのSNSは利用者数が多く、拡散力が高いため、うまく活用すれば制作コストの何倍もの広告効果を得られるでしょう。
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<デメリット>
さまざまなメリットがある一方、以下のデメリットもあります。
● 視聴者とコミュニケーションできない
ライブ配信と異なり、オンデマンド配信では視聴者とコミュニケーションが取れません。そのため、視聴者アンケートやQ&Aなどの双方向でのやり取りが必要な場面では不向きです。
● 視聴者を維持しにくい
いつでも配信を視聴できるということは、言い換えれば視聴を後回しにできるということです。ライブ配信のように時間や場所に制限がないため、視聴する意欲が低い方や視聴する時間がない方にはそのままコンテンツから離れる恐れがあります。
● 制作コストが高い
オンデマンド配信は撮影や編集に時間や手間がかかるため、ライブ配信よりも制作コストが高くなる傾向です。特に、インタビュー動画や再現動画などは撮影や編集に数か月かかることもあるため、さらにコストが高くなるでしょう。
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オンデマンド配信の利用シーン
オンデマンド配信は主に以下のシーンで利用されます。
● 商品やサービスのPR動画
商品やサービスのPR動画をオンデマンド配信することで、顧客の購買意欲や商品・サービスの認知度を向上させられます。動画であれば画像や文章だけでは伝わらない情報もわかりやすく伝えられるため、商品の購入やサービスの利用にもつながるでしょう。
また、PR動画は商談や展示会や営業研修などさまざまな場面で使用できるため、営業活動の効率化も期待できます。
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● 会社案内動画
以前までは、採用を目的とした会社説明会は定期的に行う必要がありました。
しかし、会社案内動画をオンデマンド配信すれば、会社説明会を開催せずとも会社について認知してもらえます。
また、投資家や株主に対して自社の経営状況や今後の展望を発信する際にもオンデマンド配信は効果的です。決算説明会や株主総会の様子を動画に収めてオンデマンド配信することで、投資家や株主とのコミュニケーションを活性化できます。
● イベント配信
オンデマンド配信は、展示会やセミナーなどのイベントの様子を動画で配信する際にも効果的です。
オンデマンド配信することで、都合がつかずイベントに参加できなかった人にも視聴してもらえます。
また、わからなかった部分の復習や自身が参加した部分の振り返りもできるため、イベントに参加した人も理解を深められるでしょう。
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● 教育コンテンツ
新入社員研修や資格取得のための動画をオンデマンド配信することで、従業員は好きな時間・場所でスキルを習得できます。再生速度の変更や巻き戻し・早送りや再視聴もできるため、自分のペースに合わせた学習や繰り返し学習も可能です。
また、動画は図やアニメーションや効果音を挿入できるため、視聴者のモチベーションを維持しやすく、理解度を高められる可能性があります。
さらに、視聴制限をかければ社員や会員限定のコンテンツとしても利用可能です。
オンデマンド配信のやり方
オンデマンド配信は基本的に以下の流れで進みます。
1. 動画の用意
オンデマンド配信を行うには、まず動画を用意しなければなりません。動画を制作する場合は目的やターゲット層に合わせて、動画のストーリーや構成を検討します。構成に合わせて撮影や編集を行い、視聴者にわかりやすい魅力的な動画を作りましょう。
なお、すでに制作済みの動画を配信する場合、この手順は不要です。
2. 動画のアップロード
動画を用意できたら、動画のタイトルや説明文やタグなどを設定して、動画配信プラットフォームにアップロードします。タイトルや説明文は視聴者が動画の内容を理解するうえで重要な要素であるため、視聴者目線になって考えることが大切です。タグは、動画の検索結果の順位に影響するため、幅広い視聴者を獲得したい場合は必ず設定しましょう。
なお、Youtubeには限定公開が備わっていますが、視聴URLを知っていれば誰でも閲覧できるため、機密情報を含む動画の配信には不向きです。機密情報を含む動画を配信したい場合は、有料の企業向け動画配信プラットフォームを利用しましょう。
また、動画配信プラットフォームからの削除・ペナルティや広告表示を回避するために社内でサーバーを準備してアップロードする場合もあります。ただし、自社でサーバーを設定・運用する必要があるため、エンジニアが必要です。
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3. URLの共有
動画をアップロードしたら、動画を視聴できるURLを視聴者に共有しましょう。URLの共有方法として、SNSやメールやWebサイトへの掲載が挙げられます。
なお、Webサイトに動画を埋め込みたい場合は動画配信タグを取得して、埋め込みたいページに掲載します。
ライブ配信との違い
オンデマンド配信と似た配信方式にライブ配信がありますが、オンデマンド配信とは仕組みが異なります。オンデマンド配信はあらかじめ制作した動画をサーバーにアップロードして配信する一方、ライブ配信はその場で撮影した動画を配信します。そのため、動画の撮り直しや編集は不可能です。
また、ライブ配信はリアルタイム性があるため、別途アーカイブを配信しない限り、その時刻に視聴できる人しか見れません。こうした違いがある一方、現在の映像の共有や配信者と視聴者とのやり取りができる点や特有の体験価値を提供できる点などオンデマンド配信にはないメリットもあります。
そのため、コンテンツや視聴者のニーズによってオンデマンド配信とライブ配信を使い分けることが重要です。
まとめ
オンデマンドは、ユーザーの要求に応じてサービスを提供する方式で、動画配信を始めとするさまざまなジャンルで採用されています。オンデマンドに関連する用語には、ビデオオンデマンドやオンデマンド出版などがありますが、その中でも特に有名なのがオンデマンド配信です。オンデマンド配信は、視聴者がいつでも好きな時に見られる動画配信方式で、主に商品やサービスのPR動画や教育コンテンツなどで利用されます。ライブ配信とは異なり、リアルタイム性はありませんが、「動画の品質を上げられる」「コンテンツが資産になる」などのメリットがあります。
オンデマンド配信をプロモーションやマーケティングに活用して、ビジネスの成功につなげましょう。