株式会社JADEの代表取締役である伊東周晃氏が、直近のSEO動向をまとめた最新レポートをお届け。先日8月中旬から実施され、9月4日に完了した最新のGoogleコアアルゴリズムアップデートについて、検索順位はどう変動したのだろうか?8月末でのまとめのため、途中経過ではあるが、詳しい内容を見ていこう。
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目次
はじめに
こんにちは、JADE伊東です。
8月15日からコアアルゴリズムアップデートが開始され、9月4日に終了のアナウンスがありました。こちらについては、次回以降まとめていければと思います。
では、8月の「検索順位変動まとめ」を振り返っていきましょう。
グラフの見方:
横軸は日付を示しています(直近6ヶ月推移)。縦軸は変動率(Fluctuation Score:前週に対しての計測クエリ全体の順位変化率)、またはビジビリティスコア(Visibility Score:順位に対してスコア付けをして、サイト単位での検索エンジンにおける”見つけられやすさ”を点数化したもの)を示しています。
全体傾向
まず、弊社の計測検索クエリ全体を母数とした推移です。
8/16(JST)より開始されたコアアップデートを含んだ推移ですが、開始5日時点での動きは目立ったものはありません。
業界別
カテゴリ別に見てみましょう。今回は、Weather(天気)カテゴリの変動が大きいです。台風関連の情報検索需要が高まり、それに伴う形で順位変動が発生したと考えられます。
天気情報に見る、ダイレクトアンサーを乗り越える術
カテゴリ横断の順位変動率のランキングにおいては、特に上昇サイトに関して、天気カテゴリのサイトが上位を占めることとなりました。通常の天気情報の検索とは異なる検索需要がスパイクし、そのニーズに合致するサイトへのユーザー行動が多く発生した結果の変動と考えられそうです。
天気情報専門サイトはもちろんのこと、速報を発信するニュースサイトの情報も顕著でした。
台風がない普段の天気情報の検索においては、Googleが検索結果画面情報で表示する簡易的な天気情報枠で検索ユーザーの「検索タスク」が充足されます。
その点で、天気情報検索サイトのクリックは昔に比べて随分奪われたのではないだろうかと推察しますが、台風のような非常時には検索結果画面のダイレクトアンサー(MarkeTRUNK編集部注:検索結果とは別に、ページ最上部に表示されるシンプルな回答表示)だけでは情報が不十分と感じ、追加情報を求めるはずです。特に、台風の進路などは最新のものを知りたいですよね。
刻々と変わる台風関連の情報を独自技術で追跡したり、速報を提供しつづけたりするところはトラフィックがしっかり発生したものと思います。こういう時は確かな情報を得たいので、すぐに想起できる情報サイトを指名で使うことも多そうですね(私はそうでした)。一次情報ソースではなそうなところは、あえてクリックしない「クリック避け」も結構あったのではないかと思います。
難問を解決するアプローチのひとつとして、「極端な状況を設定してみて、見通しを立てる」というものがあります。
今回の事例は、天気カテゴリにおける極端な事例ですが、Googleの検索結果画面情報の振る舞いによりクリックを奪われてしまっている天気以外のカテゴリにとっては、このような思考はヒントになるかもしれません。
ちなみに、私がたまに取り上げる元Moz、現SparkTroファウンダーのRand Fishkin(ランド・フィシュキン)氏は、ここでいう「検索タスク完了」のことを、”Searcher Task Accomplishment”(検索タスクの完遂)と称して、今から7年前に動画で解説をしています。
日本では、まだテキストコンテンツのSEOが元気だったときに、このようにユーザー行動に着目をしていたのでした。
▼Is the New, Most Powerful Ranking Factor “Searcher Task Accomplishment?”
https://moz.com/blog/searcher-task-accomplishment
日本でAI Overviewを若干確認
弊社の観測クエリ内において、日本版AI Overview(編注:生成AI搭載検索エンジン。検索結果の概要をAIが表示する機能。米国では展開済みで、先月から日本でも段階的に展開される予定)を少しだけ確認するようになりました。
具体的には漫画アニメ関連のクエリです。
AI Overviewの表示とタイミングを同じくして、サイトリンクの表示が減少しています。
アニメ作品関連クエリでのクリックに少し影響が出るかもしれません。
ユニバーサル検索の要素別の表示件数トレンドですが、サイトリンクがガクッと落ちていますね。
まだボリュームとしてはわずかですし、以前のニュースレターでも言及しましたが、そもそも「強調スニペット」(編注:検索結果画面の最上部に表示される、端的な概要文とリンク)とのすみわけも整理できていないように思われるため、どういう広がりを見せるのか、要注目です。
関連リンク:SEOで注意したいゼロクリック検索〜流入を増やすポイントとは
1ホストあたり表示ホスト数の大幅減少を確認
JADEニュースレターではたびたびご紹介してきた同一クエリに対するクラスタリング緩和&同一ホストが分散して複数表示される状況について続報です。
下のグラフから明らかなとおり、更に減少傾向に拍車がかかってきました。オレンジが指名クエリ、青が非指名クエリで、両者は同じトレンドを辿っています。
複数URL表示は大手サイトで顕著でした。したがって、減少傾向も大手サイトで目立っています。
上記グラフはとある大手ECサイトのデータです。
これをみていただくとお分かりの通り、最上位URL自体のランキングが変わっておりませんので、クリック数そのものへの影響は軽微と想定します。検索結果2ページ目まで遷移することが多いクエリの場合は影響が出るかもしれません。
デスクトップ版Googleの無限スクロールUIの終了が先日ありましたが、UI部分の揺り戻しが少し発生しているようにも思います。
関連リンク:【UI/UXとは?】それぞれの意味や違い、デザインの改善方法まで解説
継続ウォッチ:ドメイン移動で大幅情報したサイトのその後
前回のニュースレターで大手企業ブランドのドメインへ移動することで大幅にビジビリティを上昇させたサイト事例をいくつかご紹介いたしました。
続伸:企業間アライアンス
急伸の調整:グループ企業内のドメイン移動
大幅減:移動前よりダウン、その後急上昇
考察:
• 「続伸中」のサイトは前回のニュースレターにて「企業間同士のまさにアライアンスですね。編集力の高い企業Aは、ある領域のマニアや専門家が揃っていますのでそこにドメインの力が加わることで、予想としてはSEO上の恩恵は比較的長く続くのではないかと考えています。」という形でご紹介を差し上げました。ドメイン移動前の状態で大幅なダウントレンドフェーズに入っているわけでもなく、サイト評価が良い状態のままドメイン評価を首尾よく上乗せした良事例と言えそうです。
• 「急伸が調整」されたサイトについては、移動直後に比べてはビジビリティが下がったものの、移動前よりはよい状態ですので、施策自体は一定の成功を維持していると考えます。心配な点は、運営母体がかなりレガシーと思われるためスピーディーに継続的なユーザー改善が行える意思決定が行えるかどうか、です。
• 3番目の事例は、興味深いです。ドメイン移動直後に急伸→激減→再急伸のトレンド。コアアップデート前に再急伸が始まっているようにも思われるため、今回のコア終了後に改めて確認する必要があると思っています(このサイトのSEO担当者のドキドキたるや…!)。
関連リンク:アライアンスとは?意味や種類、使い方を初心者でも分かるように解説
その他:ユニバーサル検索傾向
AI Overviewに関する話題のところでご紹介済ですが再掲します。サイトリンクの表示に変化が見られました。
その他:強調スニペット
大きな変化は見られません。
今週はここまで。
また来月お会いしましょう!
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データ作成:株式会社JADE篠原誠
文責:株式会社JADE 代表取締役 伊東周晃
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