ライフスタイルサポート事業(比較・情報サイト)、エンターテインメント事業(スマホゲーム)、EC事業の3本柱で事業を展開する株式会社エイチームは、ブランド力のさらなる向上と事業の拡大を目指し、来期の2025年7月期前半までにターゲット規模がEV(事業価値)最大50億円程度までのM&Aを目指している。
この連載では、同社のマーケティング戦略を担う社員が登場し、自社の強みや、独自のマーケティング戦略について語ってもらう。第3回目は、エイチームライフデザイン プロモーションマーケティング本部 コンテンツマーケティング部の大島氏が、エイチームのSEO戦略とデータ分析について解説する。
エイチーム連載記事
・エイチームが目指すデジタルマーケティングの勝ち筋とは? | エイチーム連載第1回
・エイチームの動画広告戦略〜成功確率と再現性向上のための取り組み|エイチーム連載第2回
・エイチームのブランディング戦略~ブランディングとしてのSNS運用~ |エイチーム連載第4回
・エイチームにおけるCX・DXへの取り組みとその道のり|エイチーム連載第5回
目次
はじめに
SEO歴5年以上、エイチームライフデザインのコンテンツマーケティング部に所属している大島です。本記事では、エイチームのSEO担当として、集客力を上げるためのデータ分析とその基盤作りについて解説します。
SEOは検索順位を上げることだと思われがちですが、ただ順位だけを追っていても、本来得たい結果を得られません。
本当に得たいユーザーを集客できているのかという点を念頭におき、エイチームで実践しているデータ分析と基盤作りを解説しています。
ぜひ参考にしてください。
◆執筆者:株式会社エイチームライフデザイン コンテンツマーケティング部 大島 愼悟
◆主担当:暮らしの「まよい」を解決する情報メディア|イーデス
SEOとは何か
SEO(Search Engine Optimization)は、ウェブサイトやコンテンツが検索エンジンの検索結果で上位に表示されるように最適化するための手法のことをいいます。
リスティング広告との関連性
リスティング広告は、主に広告に焦点を当てたマーケティング手法ですが、SEOとも関連があります。
リスティング広告は、広告主が検索エンジンや他のウェブサイトに広告を出稿し、ユーザーに表示されることで、ビジネスの視認性や売上を向上させる広告手法のこと。
SEOと同じように、検索エンジンを利用したマーケティングなので、広告を出稿する際にキーワードやコンテンツの最適化が重要となります。また、SEOによってウェブサイトの品質や信頼性が向上すると、広告のクオリティスコアが向上し、広告の掲載順位やコストに影響を与えることもあります。
そのため、エイチームではマーケティング戦略の一環として、SEO、リスティング広告ともに注力し、相乗効果を生み出しています。
関連リンク
・リスティング広告とは何か?ディスプレイ広告との違いや運用するときの注意点も解説
・リスティング広告の基礎知識を解説。メリットや特徴とは?
・リスティング広告の広告文作成ポイント
・SEOとは?SEO対策の基礎知識と具体的な方法を詳しく解説
・コンテンツSEOとは?初心者でもわかるコンテンツSEOの始め方
SEO戦略におけるデータ分析
エイチームのSEO担当者が行っている基本的なデータ分析関連の動きは以下の4つ。
● Google Analytics 4(GA4)とGoogle Search Consoleで検索行動をチェックする
● GRCで順位状況をチェック
● コンバージョンと紐づけて、最大パフォーマンスを探る
● 他ジャンルの施策や動向をキャッチアップ
日々、マクロからミクロまでデータを見られるように分析環境を作り、最新のSEOの状況をキャッチアップしていきます。
1.Google Analytics 4(GA4)とGoogle Search Console
Google Analytics 4(GA4)とGoogle Search Consoleは、SEO対策において欠かすことのできないツール。一例として、下記の項目を月・週・日別でチェックしていきます。
<見るべきポイント>
● Google Analytics 4(GA4)
○ トラフィックの増減
○ 流入経路
○ ユーザー行動(滞在時間・エンゲージメント率)
● Google Search Console
○ インプレッション(全体・クエリ別・ページ別)
○ CTR・平均順位(全体・クエリ別・ページ別)
○ ページエクスペリエンス・インデックス
<こんな分析をしておきたい>
● 著しく流入に増減があったページ・クエリはないか
● ユーザー行動に変化はあったか
● 平均順位の割にCTRが低くなっていないか
● …
SEO対策は日々コンテンツの改善を行うため、マクロからミクロの視点で常に状況を把握しておくことが大切です。
記事投下や施策による効果があったのかなかったのかを把握するために、Google Analytics 4(GA4)とGoogle Search Consoleのデータを可視化しておきましょう。
関連リンク
・GA4(Google アナリティクス 4)と旧バージョン(UA/ユニバーサルアナリティクス)の違いとは?
・Googleアナリティクスのログイン方法とは!設定方法も合わせて解説!
・Google Search Console(サーチコンソール)とは?設定方法や使用用途を解説
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2.GRCで順位をチェック
トラフィックを増やすために、順位を向上させることはSEO対策で重要なポイントです。
エイチームでは、GRCやahrefsを使って、登録したクエリの順位状況を常に追っています。
順位に関しても、マクロからミクロでみていきます。
また、順位データを分類しておくことで順位変動のトレンドやパターンが明確になり、仮説を立てやすくなります。
※任意のクエリで順位が見られればGRCやahrefsのツールでなくても問題はありません
クエリ・ページ・分類を一元管理しておく
自社サイトで公開したクエリと分類して、一元管理しておくことで、データを見やすく整形することができます。
事前にこのような準備をしておくことで、PDCAを回しやすくなり、おすすめです。
デイリーで順位チェック
日々の順位変動にフレキシブルに対応できるように毎日データを取得しています。
GRCは自動で順位データを保存する機能があるので、なるべく工数をかけずに更新することができます。
ファインダビリティスコアの考え方で、「領域・ジャンル・分類」などに、幅広い観点で順位をチェック
順位変動やSEO獲得率を数値で把握するために、ファインダビリティスコアの考え方でデータを管理しています。
「カテゴリ・ジャンル・難易度・クエリタイプ・市場」など、クエリを分類して、カタマリとして順位を見ることで、順位変動のトレンドやパターンを掴みます。
このようなデータの見方をすることで、仮説・実行・検証・改善のPDCAが早くなります。
関連リンク
・検索順位チェックツールおすすめ11選
・検索結果の表示順位を決める「アルゴリズム」とは?
・アルゴリズムの意味とは?検索アルゴリズムの基礎から順位決定の要素まで詳しく解説
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3.コンバージョンと紐づけて、最大パフォーマンスを探る
自社サイト別で問い合わせ・申込など、様々なコンバージョンが存在します。
それらコンバージョンをページごとの検索パフォーマンスや順位動向と紐づけて、最大パフォーマンスが出る戦略を組み立てます。
上記のようにページやクエリごとのパフォーマンスを計測し、注力クエリと非注力クエリを選別し、優先度を決めていきます。
ページ数の多い大規模メディアになればなるほど、この優先度が肝になっていきます。
関連リンク
・コンバージョンやCVRが伸び悩んだ時こそ、 基本に立ち返ろう
・コンバージョンレート(CVR)とは!マーケ担当なら知っておきたい計算方法や改善方法!
・CVを向上させるには?顧客インサイトを把握したファネル戦略/コンバージョン率最適化(CRO施策)の重要性
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4.他ジャンルの施策や動向をキャッチアップ
エイチームでは、引越し、金融、通信、転職、結婚など、幅広いジャンルのメディアが存在します。
SEOの動向は常にGoogleによって変化するので、それぞれのメディアの担当者ごとに施策共有会を実施し、日々コミュニケーションをとっています。
<主に共有する内容>
● GOOD・BAD
○ 実施した施策で良い事例があったか
● TRY
○ 新しく打とうとしている施策
● 課題・相談
○ 順位が上がらない
○ 数値に迷いがある
○ など、幅広い悩みから課題
このようなテンプレで定期的にコミュニケーションをとることで、SEOメディアのグロースから保守の生産性を上げています。
未来を見据えたデータ分析基盤
ChatGPTをはじめとして、BardやBingなど、様々な場所でAIの利用が活発化されていくことを予測して、データの取り方を統一していく動きを進めています。
AIの登場により、よりパーソナライズ化されたコンテンツであったり、分析の手法もグレードアップしていかなければなりません。
様々な状況に対応できるように以下の分析基盤を整えています。
1.データの取得項目・形式を揃えておく
エイチームでは様々なメディアを扱っていますが、メディアごとに取得するデータの項目や形式が違ったりしています。
この状態だと、クロスマーケティングやデータ学習に使う際に非常に扱いづらいです。
後々扱いやすいようにデータ設計を整えておくことで、次のアクションを早めます。
<例>
・年齢:30代・35歳・29〜35歳など…
2.BigQueryのデータをBIツールで可視化
Google Analytics 4(GA4)やGoogle Search Console、コンバージョンデータをBigQueryに入れ込みBIツールで可視化します。
BigQueryはエイチームで利用しているスプレッドシートなどGoogle系のサービスやBIツールとの相性が良いです。
GA4をはじめとして、様々なデータ(アクセス履歴・CVデータ…)をBigQueryで管理することで、必要な時に必要なデータを取得し分析できます。
TablauやLookerStudioなど、データを可視化できるBIツールと組み合わせて、より高度な分析ができる基盤を整えています。
参考:https://www.data-be.at/magazine/google-dataportal-template/
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・Google BigQueryとは?特徴を分かりやすく解説!
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コンテンツマーケティングの生産性をあげる
ここまで解説した中でも非常に多くの分析を行っていることがわかったと思います。
しかし、これらをすべて行っていくにはかなりの労力がかかってしまいます。
昨今のGoogleの状況を見ると、コンテンツの品質を問われるシーンも多いため、コンテンツの磨き込みに労力を寄せるために、生産性を上げることは大きな課題です。
そのため、具体的には以下の動きも並行して行います。
● 分析基盤の統一
● オペレーション改善
● 外部リソースの活用
生産性を上げるために、SEOメディア分析に必要なデータソースを統一し、オペレーションを効率化していきます。
多くのメディアを保有していることと人材の流動性を加味すると、オペレーションや分析基盤を統一しておくことで、教育コストも下がるため、品質を維持しやすくなります。
また足りないリソースに関しては、外部リソースをどんどん活用することで、1人あたりの生産性を上げることを目指します。
このようにメディア自体の品質向上を実現するために、生産性を上げていきます。
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・コンテンツの正しい意味合いを理解しましょう!良質なコンテンツとは何か
・キラーコンテンツとは!具体的な作り方も解説します!
・BtoBコンテンツマーケティングに活かすバイヤーペルソナとバイヤージャーニーの実践的作成方法
・オウンドメディアの記事コンテンツはコンバージョンに本当に貢献しているのか?
エイチームが目指すSEOメディアの姿
エイチームでは、メディアを見るユーザーに寄り添ったコンテンツ制作を目指します。
エイチームのメディアを見れば、「知りたいことがわかった」「悩みがなくなった」そんな状態を目指して、日々コンテンツ制作を行っています。
ユーザーファーストのコンテンツを制作するためには、データを用いて定量的に分析することは必須です。
様々なツールを使い、工夫することでコンテンツの品質を上げ、高品質コンテンツをユーザーに提供できるようにチーム一丸となって尽力しています。
補足:おすすめの分析・計測ツール
Googleスプレッドシート
BigQueryやGoogleのサービスとの相性がよく、日々の分析に便利。
● おすすめ分析アドオン
○ GA4 Magic Report(GA4のデータを取得)
○ Search Analytics for Sheets(サーチコンソールのデータを取得)
Looker Studio
データを視覚的に分析し、ダッシュボードやレポートを作成するための無料のビジュアライゼーションツールです。データスタジオを使用することで、さまざまなデータソースからの情報を統合し、見やすいグラフやチャート、テーブルなどのビジュアルコンポーネントを使ってデータを表示できます。
Microsoft Clarity
Microsoft Clarityは、ウェブサイトのユーザー行動を追跡し、データを視覚化して分析するためのツール。ヒートマップ(クリック、スクロール、マウスムーブメントなど)、セッションレコーディング(ユーザーがウェブサイト上で行ったアクションのビデオ録画)を用いて、ユーザーデータを観察してコンテンツ改善に活用できます。
tami-co
tamicoはSEOに最適なコンテンツを作るためのサポートが充実したツール。記事コンテンツを分析し改善するのに必要な情報がひとまとめになっているので、有料ツールですが、使う価値のあるツールです。