「KPI」というワードはビジネス書籍やマーケティング本でよく目にします。
多くの人が日常的に使用しているワードを、いまさら聞くのも正直、気が引けます。
今回はWebマーケティングにおける「KPI」について、具体例を交えて一から丁寧に説明し、さらにどのように設定するのか、その方法までを一気にご紹介します。
「KPI」って何?
「KPI」とは、Key Performance Indicatorのそれぞれの頭文字を集めた略語で、一般的には「重要業績評価指標」と説明されます。
しかしこれだけで「ああ、あれね」と、意味がわかる人も少ないでしょう。この時点では、「重要な指標…?」くらいのイメージを持つ人が大半ではないでしょうか。
また「KPI」と必ずセットで登場する「KGI」との違いも気になるところです。
「KGI」とは、Key Goal Indicatorの略語で、一般的には「重要目標達成指標」と説明されます。ただ「KGI」はゴールという文字が入っているので、こちらはわかりやすいかもしれません。
その名の通り、最終的な目標を達成する上で必要な数値を意味します。
さて「KPI」(重要業績評価指標)の説明に戻りますが、ここで注意すべきは、「KPI」がただの利益目標ではないということです。
実際に会社の中でも単純な利益目標という意味合いで使われることもあるようですが、本来は、ゴール数値を達成するまでに至る多くのプロセスの中から「成功のカギを握る重要な項目」を選択し、その数値を設定したものなのです。
KPIが達成できれば、おのずと最終ゴールを達成できる関係性がなければなりません。
ですから「KPI」を設定することが一番難しく、正しく設定さえできてその数値をクリアすれば、「KGI」の実現に向けて着実に進んでいるといえるのです。
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BtoBのWebマーケティングにおける「KPI」の特徴
それではどのような数値を「KPI」にすればいいのでしょうか。
「KPI」の具体例をみていく前提として、BtoBのWebマーケティングの特殊性を考慮する必要があります。
まずWebマーケティングは複数の部署と連携することが必須です。
たとえばクロージングは営業部署が担当するなど、Webマーケティングだけで結果を出すことは少ないのが特徴といえます。
つまり最終的に案件の受注に至るかは、商談時の交渉力、顧客との信頼関係、商品力などWebマーケティング本来の要素とは別の要素が関係してくるということができます。
そのため「KPI」の設定には、あくまでWebマーケティングにおいてコントロールできる数値を設定する必要があります。
またBtoCと異なり、BtoBの場合はクロージングまでに時間がかかることも特徴といえます。
時間がかかる理由は組織としての意思決定には複数の部署が関わることが多く、個人がその場で即決するBtoCと比較すれば、往々にして時間がかかるからです。
そのため地道に信頼関係を構築することが必要となり、このような特殊性も「KPI」を設定する上で、考慮することが大切です。
「KPI」の具体例と設定方法
それではどのように「KPI」を設定すればいいのでしょうか。
設定までの方法を「KPI」の具体例を交えて、詳しくみていきましょう。
ポイントは、ゴール数値から逆算を繰り返して落とし込むことです。
・「最終目標」の確認、具体的な「KGI」を設定する
最初に全社共通の最終目標や、部署独自の年間目標の確認を行います。
たとえば人事制度の設計を行う会社において、10億の売上を出すことが全社共通の最終目標であるとします。
「売上=受注件数×平均単価」となりますが、平均単価を上げることは難しいため、基本的には受注件数の増加を目指すことになるでしょう。
ここで、具体的な目標数値が「KGI」として設定されます。
平均単価が1000万円であれば、受注件数は100件となります。
Webマーケティングの場合は、Web経由に絞り込んだ数値となるでしょう。
たとえばWeb経由の受注件数が20%を占めていれば、20件となります。
最終目標:全社で10億の売上達成
KGI:Web経由での受注件数20件
・プロセスの分析と絞り込み
BtoCであれば、自社サイトを訪れてその場で即決するという可能性もありますが、BtoBでは、受注までに何段階かのステップを踏むのが一般的です。
それに合わせて、Webマーケティングにおいても、以下のような流れが考えられます。
集客(自社サイトの訪問) ⇒ 見込み顧客獲得 ⇒ 育成 ⇒ 商談 ⇒ 受注
これまでのデータを分析して、各プロセスに移行する率をあらかじめ算出しておきます。
集客(自社サイトの訪問) ⇒ 見込み顧客獲得 ⇒ 育成 ⇒ 商談 ⇒ 受注
50% 80% 50% 50%
現時点では「KGI=受注件数が20件」の設定しかなされていません。
集客(自社サイトの訪問) ⇒ 見込み顧客獲得 ⇒ 育成 ⇒ 商談 ⇒ 受注
50% 80% 50% 50%
20件
そこから一つ前のステップへと逆算を繰り返し、全ステップの数値を埋めていきます。
集客(自社サイトの訪問) ⇒ 見込み顧客獲得 ⇒ 育成 ⇒ 商談 ⇒ 受注
10% 50% 50% 50%
1600件 160件 80件 40件 20件
これを「KPI」として設定します。以下具体例として列挙します。
・見込み顧客獲得…資料ダウンロード数やメルマガ登録数など 160
・見込み顧客育成…見積もり依頼数やセミナー参加数など 80
・商談…商談数 40
Webマーケティングでは、クロージングを担当する部署への誘導(商談)するところまでとなるでしょう。
このステップまでの「KPI」の設定を行い、「KGI」達成のための指標とすることが重要です。
あとは、「KPI」をクリアするために、さまざまな仕掛けやコンテンツを考え実行することです。
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「KPI」の確定と運用における検証
最後に「KPI」が確定すれば、下記の項目を複数で検証する必要があります。
・「KGI」と「KPI」に整合性があるか
(KPIが達成されるとKGIのゴール目標が本当に達成できるのか)
・安定性があるか
(KPIの数値を定期的に測る必要があり、データ入手が安定して可能かどうか)
・単純性があるか
(KPI自体が複雑でなく、現場が容易に理解できるくらいに単純かどうか)
なお「KPI」未到達の場合の対策も、事前に検討しておいた方がスムーズです。
Webマーケティングにおいてはスピード勝負の部分も大きく、「KPI」が到達できない場合に備え、二重三重の対策を決めてあらかじめ合意に達しておくと、すぐに挽回するための対策を実行に移すことができます。
PDCAサイクルを早く回すことで、軌道修正が容易となるため、おススメです。
まとめ
「KPI」は「KGI」達成の上で、欠かすことのできない非常に重要な指標となります。正しく設定できれば、「KGI」達成も現実味を帯びてきます。
ただ数値を追いかけるのではなく、成功のカギとなるプロセスを見極めて、逆算し、落とし込むことが重要です。この「KPI」の設定にこそ、十分に時間をかけてみてはいかがでしょうか。