マーケティングの分野では、「カスタマージャーニーマップ」を作ることがよくあります。カスタマージャーニーマップは非常に有用なツールのひとつですが、どのような流れでつくるべきか、よく分からない人もいるのではないでしょうか。
本記事では、カスタマージャーニーマップの正しい作り方や注意点、活用方法などについて解説します。自社の販売戦略にカスタマージャーニーマップを使ってみようと考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
カスタマージャーニーとは?
カスタマージャーニーとは、顧客が自社の商品やサービスを認知・購入し、使用するまでの一連の過程や体験のことです。カスタマージャーニーマップでは、このペルソナの行動や思考、感情などの変化を時系列で整理し、ペルソナの体験をひとつのストーリーとして把握することを目指します。
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カスタマージャーニーはなぜ必要とされるのか?
スタマージャーニーは、顧客がある製品やサービスを利用する過程を理解し、その体験を最適化するために重要です。
カスタマージャーニーは顧客の視点に立ち自社の製品やサービスとどのように関わるかを詳細に把握が必要です。これにより、顧客のニーズや期待に応えることができます。製品に関する課題や改善策をカスタマージャーニーを用いて明確に把握することで満足度の高い体験を提供するための施策を立てることができます。
また、自社の製品を明確に把握をすることで新規顧客を獲得しやすくなります。これを活かした製品提供をしていくことで満足度の高い体験を提供することでき、既存顧客と長く取引をすることができます。
製品の競争力向上にも寄与し顧客満足度の視点や分析データの視点からカスタマージャーニーの視点を取り入れることでより製品力向上に寄与します。
例えば、ある顧客が新しい車を買ったときのことを考えてみましょう。この場合、その車のことを認知、購入し、使用するまでがカスタマージャーニーとなります。
最初は、その車のことを認知することから始まります。テレビCMを見たり、車道で走っているのを見かけたりすることで、顧客はだんだんとその車が気になっていきます。
気になり始めると、次第にその車が欲しくなってきます。次に、具体的に車を手に入れるための方法について考え始めます。貯金を使って一括払いで購入しようか、頭金をある程度入れてからローンで購入するかなどを考えます。
そして、ついにその顧客は車を購入し、実際に使用するに至ります。この認知から使用するまでの一連の流れが、カスタマージャーニーとなります。
カスタマージャーニーを考察・分析することは、商品やサービスの改善に繋がります。また、商品をあらゆる角度から見直すヒントにもなるので、商品の魅力を伝えるための新しい切り口も発見することができるでしょう。
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カスタマージャーニーはなぜ必要とされるのか?
カスタマージャーニーが必要とされるようになったのは、テクノロジーの進歩により、顧客が商品に触れるタッチポイントや購入経路が多様化したためです。
メディアがテレビや新聞・雑誌などしかなかった時代は、マーケティングを実施する際、ペルソナとのタッチポイントを設定するだけで十分でした。
しかし、インターネットやIT技術の進歩によって、顧客はさまざまな方向から情報を得ることがき、多様な方法で商品を購入することができるようになりました。タッチポイントと購入経路が多様化したため、従来のような定点的な分析や施策では、顧客の行動把握や購買促進が難しくなってきたのです。この時代の流れに合ったマーケティングを行うためには、時系列のストーリーとして、つまりカスタマージャーニーとして、顧客の行動や心理を捉えていく必要があります。
さらに、テクノロジーの進歩により、大量の顧客情報を取得したり分析したりすることが容易になったという背景もあり、カスタマージャーニーの重要性と有用性はますます高まっています。
カスタマージャーニーマップとは?
カスタマージャーニーマップとは、カスタマージャーニーのプロセスを見える化し、具体的に描いたものです。顧客が商品のことを認知してから購入し、使ってみるまでの過程ごとに、顧客の気持ちの変化や行動、商品情報を入手した手段(タッチポイント)などを図式化したものを指します。
カスタマージャーニーマップを作る目的とは
カスタマージャーニーマップを作る目的には、下記のようなものがあります。
● 社内での共通認識を作るため
● 顧客目線で発想できるようにするため
● 顧客の行動に対して最適なアプローチをするため
それぞれの目的について順番に解説します。
社内での共通認識を作るため
カスタマージャーニーマップを作る目的のひとつに、「社内での共通認識を作るため」があります。関係する従業員全員が顧客の体験を理解し、共通の認識を築いていくのです。
あるプロジェクトを実行する際、チームのメンバー間、または部署を超えて関わる人の間で顧客について認識のズレがあると、トラブルが起こることがあります。しかし、カスタマージャーニーマップを作成することにより、顧客の行動に対して共通の認識が持てるようになり、施策の立案や実行がスムーズになります。
カスタマージャーニーマップは、顧客が商品やサービスを利用する過程をステップごとに可視化するためのツールです。これによって、顧客が商品やサービスを使う際にどのような経験をするのか、どのステップでどういった問題や課題があるのかが分かります。
カスタマージャーニーマップの内容を、商品やサービスを提供する従業員全員が共通の認識として把握することにより、より良い商品やサービスの提供に繋げられるのです。
顧客目線で発想できるようにするため
カスタマージャーニーマップを作成することにより、さまざまな施策を顧客目線で発想できるようになります。
施策を考える際は、「こんな商品があったらおもしろそう」「こんなサービスがあれば盛り上がるだろう」など、どうしても売り手目線になってしまいがちです。しかし、売り手目線の施策では、なかなか購買に繋がりにくいのが現実です。カスタマージャーニーマップを作成すれば、顧客の側に立ち、顧客に寄り添った施策を考えることができます。
顧客の行動に対して最適なアプローチをするため
カスタマージャーニーマップは、顧客の行動に対して最適なアプローチをする目的で作られます。ステップごとに顧客の心理や視点を深く理解できるため、どのタイミングでどのような施策を行うべきかが分かりやすくなるのです。
またカスタマージャーニーマップは、顧客が商品やサービスを利用する過程で生じる問題や課題を把握するのにも役立ちます。顧客がどのステップで困ったり不満を感じたりするのかが分かるので、それに対処するためのアクションを考えやすくなります。
このように顧客に対して最適なアプローチができると、結果として顧客から高い満足度や信頼を獲得することができます。
関連記事:つくるだけで満足していないか? 態度変容を促す「カスタマージャーニーマップ」
カスタマージャーニーマップでペルソナを設定するポイント
カスタマージャーニーマップを作成する前には、仮想の顧客像であるペルソナを設定することが重要です。ペルソナの設定は具体的であればあるほど、カスタマージャーニーにおける顧客の行動を推測しやすくなります。
ターゲティングにおいては、顧客は大まかなセグメンテーションで定義されることが多いですが、ペルソナを作る場合は、より詳細に情報を設定していきます。例えば以下のような項目です。
● 年齢
● 性別
● 最終学歴
● 年収
● 入社経緯
● これまでの職歴
● 購読している雑誌
● チェックするWebサイト
● 休日の過ごし方
● 趣味
など
設定したペルソナは、ヒヤリングやアンケートなどにより検証するとともに、定期的に見直しも行っていきましょう。
関連記事:ペルソナとは?ビジネスやマーケティングにおける分析方法を解説
カスタマージャーニーマップの作り方
カスタマージャーニーマップを作るには、下記の手順で作業を進めていきます。
【1】目的とゴールを明確にする
【2】顧客の行動を分析する
【3】テンプレートを活用する
【4】必要な要素を埋めていく
それぞれの手順について詳しく解説していきます。
【1】目的とゴールを明確にする
カスタマージャーニーマップを作り始める前に、まずは、目的とゴールを明確にしましょう。目的とゴールを明確にすることで、カスタマージャーニーマップ作成の方向性が定まり、より効果的な結果が得られます。
例えば、目的が「商品・サービスによって得られる顧客の体験を改善すること」であれば、カスタマージャーニーマップを作成する際には、顧客が商品やサービスを利用する過程での課題や障害を特定し、それに対する改善策を検討することに焦点を当てます。
目的が「新規の顧客を増やすこと」であれば、カスタマージャーニーマップを作成する際には、新規の顧客が商品やサービスにどのように触れ、興味を持ち、購入に至るかを把握し、そこでの課題を解決するための施策を考えていくことになります。
カスタマージャーニーマップを有益なものにするためには、このように目的とゴールは予め明確に決めておきましょう。
【2】顧客の行動を分析する
目的とゴールを明確にしたら、次は顧客の行動を分析してみましょう。顧客行動の分析では、顧客が商品やサービスをどのように利用しているのか、どのステップでどのような行動をとっているのかを詳しく調べていきます。
これらの行動を分析することで、顧客のニーズや要望を把握し、より良い体験を提供するためのヒントを見つけられます。分析する際には、以下のようなポイントに注目しましょう。
● 接点の特定(広告、Web、口コミなど)
● 行動の追跡(商品の認知から購入まで)
● 感情の理解(興味、不安、喜び、満足など)
● 課題と障害の特定(顧客の不満など)
● 満足度の評価(購入後どのように感じているか)
顧客行動の分析は、しっかりとデータを収集し、客観的に行っていくことが重要です。
BtoBにおける顧客行動の分析
BtoBの場合は、顧客行動の分析には以下のような情報を参考にします。
● 過去の問い合わせ
● 「SFA=営業支援ツール」に記録されている商談・受注情報
● 展示会やセミナーなどで集めたアンケート
● 商品への満足度調査
● カスタマーサポートの対応履歴
など
こういった情報が豊富にあればあるほど、カスタマージャーニーマップの精度は高くなると言えます。
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【3】テンプレートを活用する
いよいよカスタマージャーニーマップの作成に入っていきますが、いちからそのフレームワークを作っていくことはなかなか難しいものです。そこで、カスタマージャーニーマップの作成時は、すぐに使えるテンプレートを活用することをおすすめします。
テンプレートについては下記ページから無料でダウンロードできますので、ぜひお試しください。1ページ目が見本となっており、2ページ目はサンプルになっています。
パワーポイント(PPTX)形式なので、サンプルテキストは自由に編集することができます。また、テキスト部分を消して印刷すれば、手書きで書き込むこともできます。
【テンプレート無料配布】カスタマージャーニーマップをパワーポイント(PPTX)で作ろう
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【4】必要な要素を埋めていく
カスタマージャーニーマップのテンプレートを選んだら、そのテンプレートに必要な要素を埋めていきます。収集した顧客情報を参考にし、ペルソナの行動や思考、感情などをマッピングしていきます。思考や感情は推測に頼るところもありますが、購入までの経路がひとつのストーリーとしてリアルに思い描けるようにマッピングしましょう。
マッピング作業を行う際は、社内で共通の認識を持つためにチーム全体で、または部署や役職を超えて関係者を集め、ディスカッションしながら進めることが有効です。
以下は、カーディーラーで販売している新車に関するカスタマージャーニーマップの例です。
ペルソナ |
40歳男性(妻35歳 長女5歳 次女2歳) |
|||
顧客の段階 | 無関心 | 認知 | 検討 | 購入 |
顧客の行動 | ・特になし |
・Web広告をクリックしてみる |
・実際にカーディーラーに行き、話を聞く |
・営業マンと相談し、最終価格、納期を決定 |
顧客との接点(タッチポイント) |
・テレビCM ・Web広告 |
・テレビCM ・Web広告 ・Webサイト |
・YouTube ・カーディーラーのWebサイト ・カーディーラー ・口コミサイト |
・カーディーラー |
顧客の感情 | ・無関心 | ・車の存在を認知する | ・買おうかどうか迷っている | ・満足 ・安心 |
対応策 | ・認知してもらうためのアプローチが必要 | ・検討してもらうために、興味を引くような情報を提供する | ・負担のない金額で買える方法を提案 ・ファミリーカーとしてのメリットを伝える |
・購入手続きを分かりやすく説明 |
このように、カスタマージャーニーマップを作ると、ペルソナが無関心の段階から新車購入に至るまでに、どのような行動と心理的変化があるかが一目で分かります。各段階でどのような対応策を取れば良いのかも示されているので、カスタマージャーニーマップを用意しておけば、顧客の状況に合わせた対処方法を必要なときにいつでも確認できます。
関連記事:オムニチャネルとは?取り組むメリットや成功のポイントを解説
カスタマージャーニーマップはいつ活用する?
カスタマージャーニーマップは、新商品の開発・導入時や、マーケティング戦略の立案時などに活用されます。
その中でも、マーケティング戦略立案時は、ターゲットとなる顧客の行動や感情の変化を把握し、ターゲティングやコミュニケーションの戦略を策定するために使われます。
マーケティングの段階においては、主に下記2つの種類のマーケティングで活用されています。
● コンテンツマーケティング
● SNSマーケティング
それぞれ順番に解説します。
コンテンツマーケティング
コンテンツマーケティングでは、顧客のニーズに合ったコンテンツを提供することが重要です。そのためには、カスタマージャーニーのステップを細かく設定することが求められます。カスタマージャーニーのステップを細かく設定することで、顧客の悩みや課題をよく理解でき、顧客がどのようなニーズを持っているのかも詳細に把握できます。
ただ単にコンテンツを増やすのではなく、カスタマージャーニーマップを基にしたコンテンツを作成すれば、顧客との関係を効果的に築くことができるでしょう。
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SNSマーケティング
SNSマーケティングには、カスタマージャーニーを表す用語で「ULSSAS(ウルサス)」という言葉があります。ULSSASとは、以下の略語です。
● U(User Generated Contents):ユーザーが投稿するレビューや意見など
● L(Like):投稿への反応や「いいね」の数
● S(Search1):SNS内での検索行動
● S(Search2):検索エンジンでの検索行動
● A(Action):実際に商品を購入する行動
● S(Spread):情報を拡散させる行動
最近では、企業がSNSを利用して商品やサービスの認知度を高める動きが増えています。FacebookやX(旧Twitter)、InstagramなどのSNSを使ったマーケティングには、商品やサービスを多くの人に知ってもらいやすいという利点があります。また、顧客の声を知ることができるという特徴もあります。
ULSSASというカスタマージャーニーは、顧客が投稿したコンテンツを起点に、他の顧客にブランドや商品が認知される過程を表しています。ULSSASの内容をまとめてカスタマージャーニーマップに反映させれば、SNSマーケティングをより効果的なものにできるでしょう。
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カスタマージャーニーマップを作る際の注意点
カスタマージャーニーマップを作る際は、下記の点に注意しましょう。
● 顧客目線で作成する
● 他部署との連携も大切にする
● 定期的な見直しと更新を行う
カスタマージャーニーマップでは、顧客の心理と行動が重要な要素となります。そのためカスタマージャーニーマップを作る際は、商品やサービスを顧客目線で捉えながら作成することが大切です。また、他部署の人たちも交えながら、異なる立場からの意見も積極的に取り入れることもポイントです。
そして、ビジネスや市場は常に変化するため、カスタマージャーニーマップもトレンドに合わせて定期的に更新をかけ、常に改善してくようにしましょう。
まとめ
本記事では、カスタマージャーニーマップの定義や目的、正しい作り方などについて解説しました。カスタマージャーニーマップに分析した情報を入れていくことで、顧客の心理・行動の変化や、段階ごとの対応策が整理できます。
カスタマージャーニーマップは、顧客の視点に立って、商品やサービスを利用するまでの過程を理解するための重要なツールです。
カスタマージャーニーマップを作ることで、より良いサービスや商品を提供するための基盤ができるため、ぜひ積極的に作成・活用してみてください。