バイアスは、人間にもともと備わっている心理作用のひとつです。バイアスを理解すれば、消費者心理を理解でき、効果的なマーケティング戦略を練ることができます。
本記事では、バイアスの意味や概要と、バイアスの種類・効果、マーケティングにおける活用例について解説します。バイアスについて詳しく知りたい人や、バイアスをマーケティングに応用したい人は、ぜひ本記事を参考にしてください。
目次
バイアスとは?
バイアスとは、一般的には、何らかの偏見や先入観、一方的な視点を指す言葉です。心理学や統計学、研究方法論など、さまざまな分野で使用される概念で、分野によって具体的な使用方法に違いがあります。
バイアスには、後述するように種類が多岐に渡り、それぞれ意味や効果が異なります。バイアスの種類を理解して正しく応用できれば、マーケティングに役立てられるため、それぞれの違いを意識して覚えるようにしましょう。
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バイアスの種類
バイアスの種類は、下記のように多岐に渡ります。
● 正常性バイアス
● 同調性バイアス
● 生存者バイアス
● 確証バイアス
● 後知恵バイアス
● 自己奉仕バイアス
● 内集団バイアス
それぞれ詳しく解説します。
正常性バイアス
正常性バイアスとは、人々が自身の周りの世界を基本的に安全で、予測可能で、通常通りに動くと想定する傾向があることを指します。正常性バイアスの影響で、人々は自分にとって否定的な出来事や、異常な状況の発生を過小評価する場合があります。
たとえば、自分が住む地域は地震が来ないと過信し、必要な備えを怠ることも、正常性バイアスの一種です。他にも、「自分はまだ若いし、今まで健康だったから、ジャンクフードを食べ続けても問題ないだろう」と思い不健康な食事を続けることも、正常性バイアスが働いています。
同調性バイアス
同調性バイアスとは、人間が自身の意見や行動を、周囲のグループの思考や行動に合わせる傾向を示す心理学の用語です。会議における意見や、友人の間での選択、商品購入時の決断など、多くの場面で同調性バイアスは影響を及ぼします。
たとえば、あるファッションが流行り始めると、自分自身がそれを好きかどうかよりも、周囲の人々が着ているのを見て、自分もその服装を着るようになる現象も、同調性バイアスだと言えます。
生存者バイアス
生存者バイアスは、成功したケースや生き残った事例だけに注目し、失敗や失敗した事例を無視するという傾向を指します。たとえば、有名大学を卒業した人が成功しているとします。
有名大学に入学することこそが成功の道であると感じることは、有名大学を卒業していなくても成功している事例があることを無視しており、生存者バイアスが働いていると言えます。
また、長生きしている人が「早寝早起きが長寿の秘訣」だと言うと、早寝早起きには長寿の効果があると思い込む人がいますが、実際は他の理由も長寿に関係することに注意しなければなりません。成功例だけを見て、それが普通だと思い込んでしまうのです。
確証バイアス
確証バイアスとは、自分の信念や意見を裏付ける情報を選び取り、反証する情報を無視や軽視する傾向のことを指します。たとえば、自分が欲しい商品があるとします。
欲しい商品の良いレビューばかりを見てしまい、悪いレビューを見逃してしまうのが、確証バイアスです。
また、株や不動産などの投資を行う際、自分が投資すべきだと思う企業や地域の良い面ばかりを見て、悪い面やリスクを見過ごすのも確証バイアスと言えます。自分の考えや予測を正当化しようとする心理的なプロセスが影響しています。
後知恵バイアス
後知恵バイアスとは、何かが起こったあとに「最初から分かっていた」と思う傾向のことを指します。たとえば、スポーツの試合後や選挙の結果発表後に、「あのチームが勝つと思っていた」や「あの候補者が当選すると分かっていた」と思うことが後知恵バイアスです。
また、株価の動きを予測するのは本来非常に難しいものですが、株価が大きく上昇したり下落したりした後に、「そうなるだろうと思っていた」と後から言う人も、後知恵バイアスが働いていると言えます。
一度結果が明らかになると、その結果が必然的だったかのように思えてしまい、自分はそれを予見していたと思い込むのです。
自己奉仕バイアス
自己奉仕バイアスとは、成功は自分のおかげだと思い、失敗は他の人や状況のせいだと考えることです。たとえば、試験で良い成績を取った時、学生は自分の努力や勉強の結果だと考えがちです。
しかし、成績が悪かった場合、試験問題が難しかった、教師の説明が不十分だった、他の学生がうるさくて集中できなかったなどと、自分以外の要因を失敗の原因にすることが、自己奉仕バイアスです。
自己奉仕バイアスが働くと、結果が良ければ「自分が頑張ったから」と認識し、結果が悪ければ「運が悪かった」や「周囲の状況が悪かった」などと考えてしまいます。
内集団バイアス
内集団バイアスとは、自分が所属するグループや集団(内集団)を他のグループや集団(外集団)よりも良いと思い込む心理的な傾向を指します。たとえば、学校では自分のクラスを他のクラスよりも優れている、と感じることが内集団バイアスのひとつです。内集団バイアスは、自分たちの集団を強くし、自己評価を高めるためのものです。
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バイアスに関連する3つの効果
バイアスには、下記の3つの効果があります。
● ダニング=クルーガー効果
● ハロー効果
● コンコルド効果
それぞれ詳しく解説します。
ダニング=クルーガー効果
ダニング=クルーガー効果は、自身の能力を過大に評価する傾向を指します。特に、能力が低い人ほど自身の能力を過大評価し、能力が高い人は自身の能力を過小評価するという特徴があります。
能力が低い人は、自身の能力が足りないことを理解するための知識や経験が不足しているため、自分の能力を過大評価しやすいのです。一方で、能力が高い人は、自身の知識やスキルが当たり前であると感じ、他人も同じレベルであると誤解しやすいため、自身の能力を過小評価する傾向があります。
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ハロー効果
ハロー効果とは、あるひとつの良い点に目を奪われ、人や物全体が良いと思い込んでしまう心理作用です。見た目の良い人がいると、その人の性格や能力までもが良く見えてしまうことがあります。
見た目の良さが「halo(後光)」のように全体を照らし出し、他の部分まで良く見せてしまうことから名付けられました。たとえば、商品のパッケージが美しいと、商品自体の品質も高いと思い込むことも、ハロー効果のひとつです。
コンコルド効果
コンコルド効果とは、一度始めたことを途中でやめるのがもったいないと感じて、進み続ける傾向のことです。自分がすでに使った時間やお金を無駄にしたくないと感じるために、後に引けなくなってしまいます。
たとえば、ジムに行く頻度が低いにもかかわらず、すでに支払った入会金や月会費がもったいないと感じて、会員を続けるのもコンコルド効果です。コンコルド効果の名前は、フランスとイギリスが開発した超音速旅客機「コンコルド」に由来します。
飛行機は技術的に成功したものの、経済的には損失を出す結果となりましたが、国家のプライドから開発をやめられなかった、というエピソードが有名です。コンコルド効果を理解することで、冷静な判断が求められるビジネスや、投資の場面での損失を防ぐことができます。
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マーケティングにバイアスを活用する方法
バイアスを理解すれば、マーケティングに活用できます。バイアスを応用したマーケティング手法の例として、下記が挙げられます。
● 期間限定
● 数量限定
● 出席者限定
それぞれ詳しく解説します。
期間限定
期間限定は、手に入れる機会が限られていると感じると、商品やサービスの価値を高く評価して、急いで行動を起こす傾向がある心理を利用したマーケティング手法です。
たとえば「今日だけの特別価格」や「数量限定」などの言葉は、商品がすぐになくなってしまうかもしれないと不安にさせることで、商品を売れやすくします。期間限定を頻発しすぎると、バイアスを弱めてしまい「次でも大丈夫かもしれない」と安心して、購入に繋がらないおそれがあります。期間限定を使う際には、頻度を見極めましょう。
数量限定
数量限定は、人々が手に入れにくいものや限られたものを価値があると感じ、欲しくなるというバイアスを利用しています。たとえば、「先着100名様限定」や「在庫限り」などのフレーズを使って商品を宣伝すると、消費者は「商品がすぐになくなってしまうかもしれない」と不安に思い、急いで商品を購入します。
一方で、期間限定と同様に「数量限定」の商品が常に大量に存在すると、消費者はその情報に慣れてしまい、効果が薄れてしまうため、注意が必要です。「数量限定」戦略を活用するためには、適切な頻度と数量を見極めましょう。
出席者限定
出席者限定は、イベントや会議に参加する人々へ特典を提供することで、イベントの出席を促す役割があります。イベントでしか手に入らないものを限定で提供することにより、「自分だけの特別なものを手に入れたい」と思う人々のバイアスを利用しています。
たとえば、展示会や見本市で、来場者に対して特別な割引や無料試供品を提供することで、「出席しないと割引を受けられない」「出席しないと無料試供品が手に入らない」と思わせることで、来場率を高められるのです。消費者に「今すぐ行動しないと機会を逃してしまう」と焦りを感じさせて、積極的に行動を起こさせます。
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まとめ
本記事では、バイアスの意味や概要と、バイアスの種類・効果、マーケティングにおける活用例について解説しました。バイアスにはさまざまな種類があり、意味や効果が異なります。
バイアスを正しく理解すれば、人間の心理を突いた効果的なマーケティングが可能です。
ぜひ本記事を、マーケティング戦略に役立ててください。