意識することで売上の向上につながると言われている「サイレントマジョリティー」。しかし、具体的に何を意味するのか、マーケティング施策とどのように関わっているのか、よく分からないと感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、サイレントマジョリティーについて言葉の意味から深掘りし、マーケティングにおける重要性についても解説します。また、この概念がビジネスにどのように影響を与えるのかについても触れていきますので、ぜひ参考にしてください。
目次
サイレントマジョリティーとは?
サイレントマジョリティーは「声なき声」や「静かなる多数派」と訳される言葉です。マーケティングの文脈では、「積極的には発言しない大多数の消費者」を指す重要な概念として使用されています。
この「サイレント(静かな)」という形容は、多くの消費者が商品やサービスに対して不満があっても、実際に行動を起こしたり意見を表明したりすることは少ないという現象を表しています。多くの人々にとって、クレームを言ったり改善提案をしたりするのは面倒な行為であり、大半の消費者は黙って別の選択肢に移るか、そのまま使い続けるといった行動をとる傾向があります。
興味深いことに、顧客の実に96%がこのサイレントマジョリティーに該当すると言われています。つまり、企業が直接耳にする声は、全体のわずか4%に過ぎないのです。この事実は、企業にとって非常に重要な示唆を含んでいます。
しかしながら、サイレントマジョリティーの存在を無視して経営を続けることは、長期的な成功を妨げる可能性があります。表面化しない不満や要望を把握し、それに対応することが、持続的な利益確保につながる鍵となるのです。そのため、サイレントマジョリティーの声なき声に耳を傾け、その潜在的なニーズを理解することが、現代のマーケティングにおいて極めて重要な課題となっています。
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サイレントマジョリティーの語
サイレントマジョリティーは、「サイレント」と「マジョリティ」の2つの言葉から構成されています。この複合語の意味を理解するためには、それぞれの単語の意味を把握することが重要です。また、マジョリティの対義語である「マイノリティ」も含めて、これら3つの言葉の意味とビジネスにおける使用例を紹介します。
これらの用語は、社会学や政治学の分野でも頻繁に使用されますが、マーケティングの文脈では特に重要な概念となっています。企業や組織が効果的な戦略を立てる上で、これらの言葉が指し示す集団の特性を理解することは不可欠です。
以下では、「マジョリティ」「マイノリティ」「サイレント」の3つの用語について、その意味と実際のビジネスシーンでの活用例を詳しく解説していきます。これらの概念を正確に理解することで、市場動向の分析や顧客ニーズの把握がより深いレベルで可能になるでしょう。
マジョリティ
マジョリティは大多数、主流派と訳され、マイノリティの反意語です。マジョリティを使った言葉の例は以下の通りです。
● アーリーマジョリティ
● レイトマジョリティ
マジョリティという言葉は、ビジネスやマーケティングの分野で頻繁に使用されます。特に、新製品やサービスの普及過程を説明する際によく用いられます。例えば、イノベーター理論における採用者カテゴリーの中で、アーリーマジョリティとレイトマジョリティは重要な位置を占めています。これらのグループは、新しい製品やアイデアが市場に浸透する過程で、大きな影響力を持つ消費者層を表しています。
マイノリティ
マイノリティは少数派という意味で、マジョリティの反意語です。数として少ないという意味と、社会構造から弱い立場に置かれている集団のことを指す場合もあります。
ビジネスシーンでのマイノリティは、少数派の意味で使われます。具体的な使用例は以下の通りです。
● マイノリティオピニオン(少数意見)
● マイノリティ出資
マイノリティオピニオンを重視すると言われたら、少数意見に注目することで、新たな視点や考えを得ようという意味になります。マイノリティ出資は、経営が順調な会社が経営難の会社の株を、過半数を超えない数で独占する形で出資することを指します。
株の保持率が過半数を超えないため、経営難の会社が経営権を保持できるのがメリットです。
サイレント
サイレントは、静かなこと、音を立てないことで、連絡がないことを意味する場合もあります。
ビジネスシーンでの具体的な使用例は以下の2つがあります。
● サイレントお祈り
● サイレントクレーマー
サイレントお祈りとは、書類選考や面接などで不合格となった候補者に不合格連絡をしないまま放置することです。サイレントお祈りをする会社側のメリットとしては、時間や手間の節約や、不合格理由などの質問対応を避けるためなどがあります。
サイレントクレーマーは、クレームを直接言わずに二度と利用しなくなる顧客のことです。
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サイレントマジョリティーの対義語
サイレントマジョリティーは、マーケティングにおいて積極的には発言しない大多数の消費者を指す言葉です。この概念の対義語として、反対の意味を持つ複数の表現が存在します。これらの対義語は、サイレントマジョリティーとは対照的に、少数派でありながら積極的に意見を表明する集団を表しています。
サイレントマジョリティーの対義語には、主に以下の3つがあります。
・ノイジーマイノリティー
・ラウドマイノリティー
・ボーカルマイノリティー
これらの対義語は、いずれも「声の大きい少数派」という意味を持ちますが、微妙なニュアンスの違いがあります。マーケティング戦略を立てる際には、サイレントマジョリティーだけでなく、これらの対義語で表される集団の存在も考慮に入れることが重要です。
各対義語の詳細な説明は、以下のセクションで個別に解説します。
ノイジーマイノリティー
ノイジーマイノリティーは声の大きい少数派という意味です。サイレントマジョリティーの対義語であり、積極的に意見を発信する少数派の人々を指します。ノイジーマイノリティーは、その主張や行動が目立つため、時として全体の意見を代表しているかのように誤解されることがあります。しかし、実際にはごく一部の意見に過ぎないことが多いため、マーケティング戦略を立てる際には注意が必要です。
ラウドマイノリティー
ラウドマイノリティーは、やかましい少数派と訳され、ノイジーマイノリティーと同じ意味になります。サイレントマジョリティーの対義語の一つです。
ラウドマイノリティーは少数派でありながら、声が大きいため、彼らの意見を取り入れてしまいがちになるのが問題点の一つです。
ラウドマイノリティーの影響が顕著に表れているのが、東日本大震災のがれき受け入れ問題です。震災被害に遭っていない地方の市長や市民が、がれきを受け入れるのに賛成でも、ラウドマイノリティーが騒ぐため、がれき処理が進んでいません。
ラウドマイノリティーはクレーマーと同じ意味なので、ネガティブな表現として使われます。
ボーカルマイノリティー
ボーカルマイノリティーは、政治的意見を積極的に発言する人や、自分の意見を表明する人を指します。サイレントマジョリティの反意語にはなりますが、ノイジーマイノリティーやラウドマイノリティーと異なり、批判的意味合いは少ないです。
しかし、ボーカルマイノリティーをどこまで認めるのか、制度として受け入れるのかが問題となっています。トランスジェンダーを自認する生物学的男性が、刑務所で女性受刑者を妊娠させたり、性的自認が女性の生物学的男性が、女性の枠で競技に出場し、オリンピック出場を目指したりしているからです。
上記のような具体例は、マーケティングと直接関わる可能性は低いです。しかし、ボーカルマイノリティーは、政治関連やLGBTQの問題が関わってくることが多いということは理解しておいたほうが良いでしょう。
マーケティングにおいてサイレントマジョリティーは非常に重要
マーケティングにおいて、サイレントマジョリティーは非常に重要な存在です。その理由は、サイレントマジョリティーが消費者の96%を占めるという事実にあります。この圧倒的多数派は、商品やサービスに対して積極的に意見を表明することは少ないものの、実際の購買行動や市場動向に大きな影響を与えています。
企業がマーケティング戦略を立てる際、この「声なき声」に耳を傾けることが成功の鍵となります。サイレントマジョリティーのニーズや行動パターンを理解し、それに応える製品開発やプロモーションを行うことで、市場での競争優位性を確立することができます。
また、サイレントマジョリティーは、口コミやSNSでの情報拡散において重要な役割を果たします。彼らは必ずしも積極的に発信するわけではありませんが、良質な製品やサービスに出会えば、周囲に自然と共有する傾向があります。このような静かな推奨は、信頼性が高く、効果的なマーケティング手段となり得ます。
したがって、企業はサイレントマジョリティーの存在を常に意識し、彼らの潜在的なニーズや価値観を探り、それに応える努力を続けることが重要です。このアプローチは、長期的な顧客関係の構築や、持続可能な事業成長につながる可能性を秘めています。
大多数の消費者をターゲットにできる
サイレントマジョリティーを意識することで、大多数の消費者をターゲットにできます。
商品やサービスにクレームや意見を述べるのはごく一部で、大半の人はサイレントマジョリティーだからです。多くの企業が、声の大きい少数派の意見に影響されがちですが、実際には大多数の消費者の声なき声を聞き取ることが重要です。サイレントマジョリティーのニーズを把握し、それに応える商品やサービスを提供することで、より幅広い顧客層にアプローチすることが可能となります。これは、市場シェアの拡大や売上の向上につながる重要な戦略といえるでしょう。
大多数をターゲットにするため売上を拡大できる
サイレントマジョリティーの声を可視化し、マーケティングに活かせれば、消費者のターゲット層が広がります。ターゲットの数が多くなればなるほど、売上の拡大に期待ができます。
サイレントマジョリティーの意見を重視すれば、消費者の真のニーズを把握できるからです。
飲食店が、InstagramやTikTokなどのSNSを通して集客をする場合が例に挙げられます。今までは、お馴染みの客からの意見しか聞けませんでした。しかしSNSで投稿をすれば、投稿に対してのいいね数や投稿保存数などで、見込み客の反応を見ることができます。お馴染みの客だけでなく、見込み客の反応も経営に活かせれば、新たな客の獲得につながります。
サイレントマジョリティーの意見を聞くことで、売上の拡大も期待できるでしょう。
同時に認知を拡大できる
サイレントマジョリティーの存在を重要視することで、認知を拡大できます。今までは、顧客の口コミでしか広がらなかった場合でも、SNSを通じて世界中に発信できるからです。
SNSで商品やサービスの情報を発信するのは、企業側だけではありません。顧客側の商品やサービスに関する感想や、意見も自由に飛び交っています。
サイレントマジョリティーの一人が商品の感想をツイートするのを例に挙げましょう。SNSの利用率の増加に伴い、消費者は商品の購入前にSNSで情報収集をするようになりました。そのため、すでに商品を利用している消費者の感想ツイートは、信憑性の高い情報となります。
消費者の口コミを利用したマーケティングを行うことで、認知の拡大も行えます。
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サイレントマジョリティーの事例
マジョリティーからの支持を受けるには、サイレントマジョリティーとの向き合い方が重要になります。サイレントマジョリティーに関連する具体的な事例は以下の通りです。
・SNSでの口コミ分析: 多くの企業が、SNS上でのユーザーの声を分析することで、サイレントマジョリティーの傾向を把握しています。例えば、特定の商品に関する投稿や、競合他社の製品についての言及などを分析し、潜在的なニーズを発見することができます。
・アンケート調査の工夫: 従来の質問形式では捉えきれなかったサイレントマジョリティーの意見を引き出すため、匿名性を高めたり、選択肢を工夫したりするなど、より深い洞察を得るための調査手法が開発されています。
・ビッグデータの活用: 購買履歴や閲覧履歴などのデータを分析することで、サイレントマジョリティーの行動パターンを把握し、ニーズに合った商品開発やマーケティング戦略の立案に活用している企業が増えています。
・コミュニティマーケティング: オンライン上のコミュニティを通じて、サイレントマジョリティーの意見を引き出す取り組みも行われています。例えば、製品開発の初期段階から顧客を巻き込み、フィードバックを得ることで、より多くの消費者のニーズに応える製品づくりが可能になります。
・カスタマーサポートの強化: 問い合わせやクレームの内容を詳細に分析することで、表面化していない不満や要望を把握し、製品やサービスの改善に繋げている企業もあります。
これらの事例から、サイレントマジョリティーの声を捉えるためには、従来の方法にとらわれず、多角的なアプローチが必要であることがわかります。企業は、これらの手法を組み合わせることで、より効果的にサイレントマジョリティーのニーズを把握し、ビジネスの成長につなげることができるでしょう。
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まとめ
本記事では、サイレントマジョリティーの意味や、マーケティングとの関わり、具体的な事例を紹介しました。サイレントマジョリティーは、積極的に発言をしないため、大多数のニーズを把握するのが非常に困難でした。しかし、昨今はSNSの利用人口の増加によって、サイレントマジョリティーの声の可視化が進んでいます。
企業にとって、サイレントマジョリティーを理解し、適切に対応することは非常に重要です。彼らは全体の96%を占める大多数であり、潜在的な顧客層として大きな可能性を秘めています。マーケティング戦略を立てる際には、ノイジーマイノリティーの声に惑わされることなく、サイレントマジョリティーのニーズや傾向を慎重に分析し、それに基づいた施策を展開することが求められます。
また、デジタル技術の進歩により、サイレントマジョリティーの声を拾い上げる手段も多様化しています。ソーシャルリスニングツールやビッグデータ分析など、新しいテクノロジーを活用することで、より精度の高いマーケティング戦略の立案が可能になってきています。
今後も、サイレントマジョリティーの重要性は増していくでしょう。企業は常に彼らの動向に注目し、柔軟かつ的確な対応を心がけることが、持続的な成長につながるのです。