意識することで売上の向上につながると言われている「サイレントマジョリティー」。しかし、具体的に何を意味するのか、マーケティング施策とどのように関わっているのか、よく分からないと感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、サイレントマジョリティーについて言葉の意味から深掘りし、マーケティングにおける重要性についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
サイレントマジョリティーとは?
サイレントマジョリティーは「声なき声」や「静かなる多数派」と訳されます。マーケティングにおいては、「積極的には発言しない大多数の消費者」という意味があります。
例えば、商品やサービスに対して不満があっても、何か行動を起こしたり意見を言ったりするのは面倒だと感じ、大多数の人は声を上げません。顧客の96%はサイレントマジョリティーだとされているのです。
しかし、声を上げないからといってサイレントマジョリティーを意識せずに経営を続けていても、利益を上げ続けることは困難でしょう。
サイレントマジョリティーは、具体的に以下のような人々のことを指します。
● 商品やサービスに不満があってもクレームを言わない顧客
● 政治に不満があっても声を上げたり、行動を起こしたりまではしない人
サイレントマジョリティーを重視するのは、大多数の消費者のニーズに応えるために重要な存在だからです。
また、最近はSNSの普及により、一般の人の私的発言を手軽に閲覧できるようになりました。その結果、サイレントマジョリティーの声が可視化され始めています。
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サイレントマジョリティーの語
サイレントマジョリティーは、サイレントとマジョリティの2つの言葉からできています。
以下で、マジョリティの反意語であるマイノリティを含めた3つの言葉の意味と、ビジネスでの使われ方を紹介します。
マジョリティ
マジョリティは大多数、主流派と訳され、マイノリティの反意語です。マジョリティを使った言葉の例は以下の通りです。
● アーリーマジョリティ
● レイトマジョリティ
アーリーマジョリティは、新しいものやサービスを積極的に受け入れる人を指します。一方で、レイトマジョリティはアーリーマジョリティの逆で、新しいものやサービスの受け入れに消極的で、受け入れるのに時間がかかる人を意味します。
マジョリティは社会の大半を占めるため、マジョリティに合わせた街作りや、マジョリティに沿った商品開発やサービスが促進されることが多いです。
マイノリティ
マイノリティは少数派という意味で、マジョリティの反意語です。数として少ないという意味と、社会構造から弱い立場に置かれている集団のことを指す場合もあります。
ビジネスシーンでのマイノリティは、少数派の意味で使われます。具体的な使用例は以下の通りです。
● マイノリティオピニオン(少数意見)
● マイノリティ出資
マイノリティオピニオンを重視すると言われたら、少数意見に注目することで、新たな視点や考えを得ようという意味になります。マイノリティ出資は、経営が順調な会社が経営難の会社の株を、過半数を超えない数で独占する形で出資することを指します。
株の保持率が過半数を超えないため、経営難の会社が経営権を保持できるのがメリットです。
サイレント
サイレントは、静かなこと、音を立てないことで、連絡がないことを意味する場合もあります。
ビジネスシーンでの具体的な使用例は以下の2つがあります。
● サイレントお祈り
● サイレントクレーマー
サイレントお祈りとは、書類選考や面接などで不合格となった候補者に不合格連絡をしないまま放置することです。サイレントお祈りをする会社側のメリットとしては、時間や手間の節約や、不合格理由などの質問対応を避けるためなどがあります。
サイレントクレーマーは、クレームを直接言わずに二度と利用しなくなる顧客のことです。
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サイレントマジョリティーの対義語
サイレントマジョリティーは、マーケティングでは積極的には発言しない大多数の消費者という意味になります。サイレントマジョリティーの対義語で、反対の意味を持つ言葉を紹介します。
ノイジーマイノリティー
ノイジーマイノリティーは声の大きい少数派という意味です。批判的意味合いが強くなります。
ノイジーマイノリティーの特徴として主張に論理性がなく、ただただ騒がしいからです。ノイジーマイノリティーの具体例は、クレーマーやモンスターペアレンツ、モンスターペイシェントなどが挙げられます。
ノイジーマイノリティーは少数派ですが、騒ぎ立てるため、影響力が強くなってしまう時があるのが問題となっています。クレーマーが文句を言い続けたり、インターネット上に書き込んだりして店の経営に影響が出たりします。
その結果、サイレントマジョリティーが静かに離れていってしまい、経営が失敗するケースが多々あります。
ラウドマイノリティー
ラウドマイノリティーは、やかましい少数派と訳され、ノイジーマイノリティーと同じ意味になります。サイレントマジョリティーの対義語の一つです。
ラウドマイノリティーは少数派でありながら、声が大きいため、彼らの意見を取り入れてしまいがちになるのが問題点の一つです。
ラウドマイノリティーの影響が顕著に表れているのが、東日本大震災のがれき受け入れ問題です。震災被害に遭っていない地方の市長や市民が、がれきを受け入れるのに賛成でも、ラウドマイノリティーが騒ぐため、がれき処理が進んでいません。
ラウドマイノリティーはクレーマーと同じ意味なので、ネガティブな表現として使われます。
ボーカルマイノリティー
ボーカルマイノリティーは、政治的意見を積極的に発言する人や、自分の意見を表明する人を指します。サイレントマジョリティの反意語にはなりますが、ノイジーマイノリティーやラウドマイノリティーと異なり、批判的意味合いは少ないです。
しかし、ボーカルマイノリティーをどこまで認めるのか、制度として受け入れるのかが問題となっています。トランスジェンダーを自認する生物学的男性が、刑務所で女性受刑者を妊娠させたり、性的自認が女性の生物学的男性が、女性の枠で競技に出場し、オリンピック出場を目指したりしているからです。
上記のような具体例は、マーケティングと直接関わる可能性は低いです。しかし、ボーカルマイノリティーは、政治関連やLGBTQの問題が関わってくることが多いということは理解しておいたほうが良いでしょう。
マーケティングにおいてサイレントマジョリティーは非常に重要
マーケティングにおいて、サイレントマジョリティーは非常に重要です。なぜなら、サイレントマジョリティーが消費者の96%を占めるからです。
大多数の消費者から支持されるためには、サイレントマジョリティーに向き合う必要があります。サイレントマジョリティーを尊重することで、多くの消費者をターゲットにできたり、認知の拡大につながったりするからです。以下で具体的に解説します。
大多数の消費者をターゲットにできる
サイレントマジョリティーを意識することで、大多数の消費者をターゲットにできます。
商品やサービスにクレームや意見を述べるのはごく一部で、大半の人はサイレントマジョリティーだからです。
商品やサービスに意見をいただけるのは有り難いことですが、必ずしもそれらの意見が大多数の意見と一致しているとは限りません。
企業アンケートやSNSを通してサイレントマジョリティーの声を聞くことで、大多数の消費者のニーズを知ることができます。そのニーズを元に商品開発やサービスの改善を進めることが可能です。
サイレントマジョリティーの声を可視化し、マーケティングに生かすことで、大多数の消費者をターゲットにできます。
大多数をターゲットにするため売上を拡大できる
サイレントマジョリティーの声を可視化し、マーケティングに活かせれば、消費者のターゲット層が広がります。ターゲットの数が多くなればなるほど、売上の拡大に期待ができます。
サイレントマジョリティーの意見を重視すれば、消費者の真のニーズを把握できるからです。
飲食店が、InstagramやTikTokなどのSNSを通して集客をする場合が例に挙げられます。今までは、お馴染みの客からの意見しか聞けませんでした。しかしSNSで投稿をすれば、投稿に対してのいいね数や投稿保存数などで、見込み客の反応を見ることができます。お馴染みの客だけでなく、見込み客の反応も経営に活かせれば、新たな客の獲得につながります。
サイレントマジョリティーの意見を聞くことで、売上の拡大も期待できるでしょう。
同時に認知を拡大できる
サイレントマジョリティーの存在を重要視することで、認知を拡大できます。今までは、顧客の口コミでしか広がらなかった場合でも、SNSを通じて世界中に発信できるからです。
SNSで商品やサービスの情報を発信するのは、企業側だけではありません。顧客側の商品やサービスに関する感想や、意見も自由に飛び交っています。
サイレントマジョリティーの一人が商品の感想をツイートするのを例に挙げましょう。SNSの利用率の増加に伴い、消費者は商品の購入前にSNSで情報収集をするようになりました。そのため、すでに商品を利用している消費者の感想ツイートは、信憑性の高い情報となります。
消費者の口コミを利用したマーケティングを行うことで、認知の拡大も行えます。
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サイレントマジョリティーの事例
マジョリティーからの支持を受けるには、サイレントマジョリティーとの向き合い方が重要になります。サイレントマジョリティーに関連する具体的な事例は以下の通りです。
● Honda:オフラインイベントの効果測定にオンラインアンケート、LINEリサーチを活用
● 自治体:住民基本台帳等から無作為に市民を抽出して案内状を送付し、参加を承諾した市民によって協議等を行う(ドイツのプラーヌンクスツェレを日本版にアレンジ)
Hondaは、Hondaユーザー以外も参加できるイベントで、若年層に向けてのアンケートを行うために、若者の使用率が高いツールLINEを使用してオンラインアンケートを行っています。
その結果、Honda製品を持っていない人や若者からの意見を得ることができました。また、意見においても、ディーラーに行くのはハードルが高いと思われているため、車種の展示の評価が高いことなどサイレントマジョリティーの真の声を聞くことができています。
自治体は、街作りをしていく中でクレーマーからの意見はありつつも、サイレントマジョリティーの意見を得られていませんでした。そのため、無作為に市民を抽出して、協議を行う方法を取ることで、市民の意見を反映した街作りを行えるように工夫しています。
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まとめ
本記事では、サイレントマジョリティーの意味や、マーケティングとの関わり、具体的な事例を紹介しました。サイレントマジョリティーは、積極的に発言をしないため、大多数のニーズを把握するのが非常に困難でした。しかし、昨今はSNSの利用人口の増加によって、サイレントマジョリティーの声の可視化が進んでいます。
サイレントマジョリティーの声を可視化することで、大多数の消費者のニーズを把握できるようになりました。サイレントマジョリティーを尊重することで、新たな顧客を獲得することにつながるでしょう。