コモディティ化は、近年ビジネスシーンで重要視されている問題の1つです。特定の市場において、競合他社が商品を差別化できないことや、画一化した市場のことをコモディティ化と言います。では、なぜコモディティ化が重要視されているのでしょうか。
本記事では、コモディティ化の概要や原因、コモディティ化の問題点を解説します。また、コモディティ化を解決するための方法やマーケティングを解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
コモディティ化とは?
まずは、コモディティ化の概要から解説します。コモディティ化とは、特定の市場において、競合他社が商品を差別化できない状態のことや、市場が画一化した状態のことです。コモディティ化という言葉だけを見ると難しそうに感じるかもしれませんが、端的に言えば、コモディティ化は「一般化」や「大衆化」のことを指します。
また、コモディティ化は商品に対して指す言葉として使われるケースが多いものの、特徴の異なる2つの商品が存在し、それらの違いを消費者側が判断できない場合においても、「コモディティ化している」と表現します。
裏を返せば、コモディティ化している商品や市場は、消費者にとってなくてはならないものであることが多いです。たとえば、日用品などはコモディティ化している商品の代表例です。
さらに、コモディティ化は価格弾力性に大きく左右されます。価格弾力性は、商品の価格に応じて需要が変化する割合のことを指します。一般消費者からしてみれば、特徴の異なる2つの商品が存在する場合、できる限り安い商品を選ぶケースが多いです。これは、価格弾力性が高い商品です。コモディティ化においては、価格弾力性の高い商品が売れる傾向にあることは理解しておきましょう。
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コモディティ化はなぜ起こる?
ここまで、コモディティ化の概要を解説してきました。では、なぜコモディティ化は起こるのでしょうか。ここでは、コモディティ化が起こる3つの理由を解説します。
・ 技術水準が上がっている
・ 海外の低価格商品が年々増えている
・ 情報の入手が容易になった
それぞれ順番に見ていきましょう。
技術水準が上がっている
技術水準が上がることは、間違いなくコモディティ化を加速させていきます。日本の高度経済成長期においては、企業の技術力や水準の高さが、そのまま消費者が購入する理由となっていました。しかし現代では、大半の企業が消費者の求めるレベルの商品を開発できるようになっており、消費者側も、企業の細かな技術力の差を判断できなくなっています。
当然ながら、圧倒的な技術力を持っている企業も存在します。その代表例はトヨタ自動車です。トヨタ自動車の場合は技術力が圧倒的であるため、その技術力が評価され、消費者にも「トヨタは安心できるから買う」といった購買理由が生まれています。
しかし、上記のケースはあくまで稀であり、技術力が均質化した業界はコモディティ化が進んでいる傾向にあります。
海外の低価格商品が年々増えている
近年では、海外の低価格商品が年々増えてきています。国によって価格は異なるものの、日本よりも海外のほうが安く作れることに加えて、安く販売できる傾向にあります。当然ながら、それらの商品が日本でも販売されれば、日本の商品よりも消費者は安く買うことができるため、それがそのまま購買理由になります。
では、日本の企業が日本で作った商品を売るにはどうすれば良いかというと、シンプルに海外商品の価格に合わせるか、それよりも下げるしかありません。結果的に価格競争が加速し続けるため、コモディティ化も進んでいく流れとなります。
情報の入手が容易になった
近年では、高度経済成長期と比較して、情報を入手できるインターネットが進化しました。検索エンジンやSNSを活用すれば、他社のビジネスモデルを模倣したり、商品を模倣したりすることは容易です。少しでも収益力のある商品が見つかれば、すぐにでも模倣されるようになったのです。
当然ながら、自社の技術力を市場に流さないために、特許を取得するという形で模倣されないように工夫している企業も存在します。しかし、特許を取得したからといって、それらに近しい商品が出てこないわけではありません。また、特許取得にはある程度の期間も必要になり、インターネット社会の現代では、その期間中に自社と同様のビジネスモデルや商品が出てくる恐れもあります。
こういったインターネット社会の加速こそが、コモディティ化が起こっている最大の理由と言えます。
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コモディティ化が進む商品の具体例
ここまで、コモディティ化の理由などを解説してきました。ここからは、コモディティ化が進む商品の具体例を2つ紹介します。
・ 薄型テレビ
・ コンビニコーヒー
それぞれ順番に見ていきましょう。
薄型テレビ
薄型テレビは、年々価格競争が強まってきています。以前までは、日本の企業の技術力は高い水準にあったものの、韓国の技術力が高まり、技術力という点において日本の競争優位性がなくなってしまいました。日本のテレビにおいても、消費者からしてみれば、メーカーを隠した状態で「このテレビはどこのメーカーでしょうか?」という質問を投げられても、大半の人は答えることができないはずです。
実際、消費者からしてみれば、テレビを買う目的はテレビを見るためであり、細かな機能に非常にこだわる消費者は稀です。価格競争が起こっていることや、海外の技術力が上がっていることから、薄型テレビはコモディティ化してきています。
コンビニコーヒー
ファミリーマートやセブンイレブン、ミニストップなど、あらゆるコンビニがコーヒーを提供しています。1杯100円〜という形で提供しており、消費者からしてみれば、「〇〇のコンビニのコーヒーが飲みたい」という理由よりも、「家の近くにあるコンビニのコーヒーだから飲む」という理由でコンビニのコーヒーを購入しています。コーヒーの機械や豆でコンビニは差別化を図ろうとしているものの、価格競争も起こっており、コモディティ化が進んでいる商品の代表例です。
コモディティ化はなぜ問題なのか
ここまで、コモディティ化が起こる理由や具体例などを解説してきましたが、コモディティ化はなぜ問題ないのでしょうか。結論として、以下の3つの理由が挙げられます。
・ 商品の差別化ができない
・ 値下げ競争が起こる
・ 営業提案が難しい
それぞれの理由を順番に解説します。
商品の差別化ができない
コモディティ化が起こってしまう以前の問題とも捉えられるものの、コモディティ化が起こりやすい業界は商品の差別化ができません。異なる企業が同品質の商品を作ることが容易になっているため、細かな特徴や技術力で差別化ができないのです。つまり、コモディティ化が加速するほど技術力の水準が同じになり、技術力自体も落ちていくことになります。これらは、中長期的に見て産業の発展自体に大きな影響を与えます。
値下げ競争が起こる
技術力で差別化ができない場合、企業が商品を売るためには、値下げをするしかありません。値下げをすることにより利益率も低下し、利益から還元する社員への給与が減ることにもつながり、離職率も悪化していきます。
値下げをしなければ売れない状況は、その市場のトップを走っている企業であれば良いものの、後ろに続く企業からすれば苦しい状況であることは間違いありません。トップ企業であれば利益率も安定しており、商品も売れているため、社員へ還元する給与も必然的に高くなります。後ろに続く企業からすれば、社員も採用できないし、商品も売れない状況になってしまう可能性が高くなるのです。
コモディティ化が進むと、結局は資本力のある企業のみが生き残る流れになります。
営業提案が難しい
コモディティ化が進むと、営業提案も難しくなっていきます。当然ながら、まったく同じ商品を販売しているわけではないため、商談の場において、細かな違いや特徴を提案することは可能です。しかし、消費者側がそれらを理解できなければ意味がありません。
たとえば携帯販売の場においても、携帯ショップの店員は細かな携帯の特徴や機能を説明していますが、それらのすべてを理解している消費者は少ないはずです。結果的に、「ドコモが出した新しい携帯だから」などの理由のように、特徴ではなくブランド名が購入理由になるケースも少なくないでしょう。つまり、コモディティ化が進んでしまうと競合他社との差別化が難しくなり、営業提案も困難になります。
コモディティ化を解決するためには
最後に、コモディティ化を解決するために行うべき2つのことを解説します。
・ 付加価値を加える工夫をする
・ マーケティング・営業活動で差別化をする
それぞれ順番に見ていきましょう。
付加価値を加える工夫をする
はじめに、付加価値を加える工夫をすることが大切です。ただし、価格や無料といった付加価値を加えることは推奨しません。なぜなら、それらが結果的にコモディティ化を加速させる大きな理由となるためです。付加価値は、ブランド力や商品コンセプトなど、価格以外の価値を提供できるようにしましょう。
マーケティング・営業活動で差別化をする
営業活動といえば、テレアポやメルマガ(メールマーケティング)などのアウトバウンドのイメージを持つ人も少なくありません。しかし、これらは競合他社も当たり前のように行っていることであるため、差別化はできません。
そういった場合に、たとえば自社の担当者を1人付けて、Twitterなどで発信活動を担当してもらいます。フォロワーが伸びたり魅力的な発信をしたりすれば、「〇〇さんがいる会社が気になる」といった形で、採用や販促活動ができるようになります。このように、マーケティング・営業活動で差別化を図ることも重要です。
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まとめ
本記事では、コモディティ化について解説をしてきました。コモディティ化が加速してしまうと、価格競争が激しくなり、結果的にトップを走っている企業のみしか生き残れなくなります。薄型テレビなどは、コモディティ化の代表例と言えるでしょう。
コモディティ化を解決するためには、付加価値を商品に加えたり、マーケティング・営業活動で差別化を図ったりすることが重要です。それらを解決するためにも、まずは競合他社が取っている戦略を分析し、それらとは異なる形で戦略を練ることから始めてみてはいかがでしょうか。