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アップセルとクロスセルの違いは?戦略として取り組む際のポイントと事例

2022.7.22
読了まで約 5

アップセルとは、いつも購入してくれる製品と同等かそれ以上の高価な製品やサービスを顧客に促す手法です。クロスセルは、ユーザーに関連製品や補完的な製品を購入するよう促す手法です。同じ意味合いで使われることも多いですが、どちらも明確な利点を提供し、並行して行うことで効果を増大させます。

今回は、アップセルとクロスセルについて、それぞれの概要や違い、効果的なタイミング、戦略としての事例なども合わせて紹介します。

アップセル・クロスセルの違い

アップセルとクロスセルは、ユーザーに対して付加価値を与えるという点で似ています。どちらも、顧客がつき少しづつビジネスが形になってきて、「売り上げをあげたい」「顧客にもっと商品を知ってほしい」など追加のオプションを提案する手法です。

大きな違いとして、アップセルはユーザーが利用している製品・サービスを上位プランへ移行してもらうことを指し、クロスセルはユーザーがまだ利用していない製品・サービスを、追加で購入してもらうことを指します。

アップセルとは

アップセルは、ユーザーが購入するアイテムやサービスをアップグレードしたり、追加のサービスを含めたりするよう顧客に促します。
多くの場合、比較チャートなどを用いて、ユーザーにより高価な製品を販売する手法です。他のバージョンや製品がユーザーのニーズをよりよく満たす可能性があることを顧客に示すことで、ユーザーが満足して購入するきっかけを提供します。

クロスセルとは

クロスセルとは、すでに購入いただいているアイテムや購入の意思を固めたアイテムやサービスと別のアイテムを提案することで、今のアイテムでは満たされていない部分を補い、関連するアイテムを購入してもらうよう促します。

多くの場合、クロスセルされたアイテムはお互いを補完的に満たす効果があるため、顧客は両方を購入する可能性を秘めています。
大手電子商取引会社であるAmazonは、収益の35%はクロスセリングによるものだと報告しています。

関連記事:顧客単価を向上させるクロスセルとは?活用方法と具体例をご紹介

アップセル・クロスセルの重要性

まずビジネスを行ううえで重要になる客単価(顧客1人当たりの収益)の増加が見込めます。他にも、アップセルとクロスセルの重要性について、いくつか例を挙げます。

売上アップ

顧客が何を求めて何をしようとしているかなどのニーズを拾うことができます。ニーズや動向を知ることにより新たな戦略を立てることで、収益率を最大化することができます。

ファンを増やす

ユーザーにより良いサービスを提供することにより顧客満足度に繋がります。顧客満足度が高くなり自社のファンが増え、口コミなどの増加につながり自社の認知度が高まります。

顧客満足度アップ

顧客にとっても現在の商品やサービスに満足していても、より良い商品やサービスを知ることができ選択肢の幅が広がることで顧客満足度が高まります。

など、事業者目線でも顧客目線でもメリットが多い手法です。

関連記事:ARPA、ARPU、ARPPUとは?SaaSビジネスで活用する平均顧客単価を表す指標

アップセルとクロスセルの種類と戦略事例

ビジネスに関わる人にとってある程度聞きなじみのある言葉であるアップセル・クロスセル。これらが具体的にどういう戦略で、どのように実行されているか把握している人は多くありません。
自身の事業展開をスムーズにし、かつ大きくしていくために必要な販売促進手法なので、戦略事例を交えて、活用できるようにしていきましょう。

しかし、顧客心理を読まずにアップセル・クロスセルをすることで、提案した製品が全くの見当違いとなり、押し売りされた、強引な接客をされたなどと顧客にネガティブな印象を与えてしまうリスクもあるので注意が必要です。

アップセル

アップセルは、店舗や電子商取引を含むあらゆる種類の取引で使用できます。金融業界で例えると、同じような性質のアイテムであってもそれをグレードアップした商品を販売し、取引額を増加させることなどがアップセルです。

最初から良いものを提案するのがベストですが、顧客の状況などに合わせ、より良いものの提案を行えるかどうかがポイントになります。
アップセルの種類と事例は下記のとおりです。

類似製品でアップセル

例えば、パソコンの購入を検討しているユーザーがいるとします。特定のパソコンを気に入った場合、提供するパソコンの特性や利点を詳細に説明します。そのうえで、より多くの機能を備えた高いモデルなどを紹介します。ユーザーが何を求めているのかを分析し、汲み取ることでアップセルが成功します。

しかし、元のアイテムと比較してあまりにも高額となってしまうと顧客心理をネガティブに変えてしまうリスクも含んでいるので、アップセルを行う際の商品の価格差にも注意が必要です。

割引付きのアップセル

割引付きアップセルは、毎日使用する靴や、化粧品などに適した手法です。例えば、ユーザーがボディソープの購入を検討している場合、より高額なボディソープに特定の割引を付けることで同じタイプのものより高価な製品にアップグレードすることができます。この提案は、顧客にとって魅力的に感じさせることができ、その結果利益の上昇にもつながります。

この手法は、ユーザーを顧客か、新規か区別をすることで特定のユーザーにアピールするきっかけにもなります。また、割引は送料無料などでも効果的です。

無料から有料へアップセル

サブスク(サブスクリプション)やメールマガジンなど、最初は無料で提供していたものをアップグレードして有料プランへと移行させる手法です。有料プランにすることで、より良いサービスを受けれることを顧客にアピールすることが重要です。

他にも、有料プランをさらに高いグレードに変更する、プランの月額を長期的な契約に変更を促すなど、参入障壁を低くすることで購入機会を増やす効果があります。これらは金銭や労力、時間といったコストを投資したユーザーはそのコストを回収できる見込みがなくなっていても「せっかく入会したから解約するのはもったいない」と感じ、さらなる投資をしてしまう「サンクコスト効果」を狙ったビジネスモデルです。

関連記事:
サブスクリプションの意味を解説します!いまさら聞けないモデルや代表的なサービスをご紹介!
サンクコスト効果とは。コンコルド効果と同じ?日常生活やビジネスシーンでの例

クロスセル

クロスセルは、店舗や電子商取引を含むあらゆる種類の取引で使用できます。
アップセル同様、金融業界で例えると預金や有価証券運用に加えて保険などの関連金融商品を販売、提供することがクロスセルです。

自社内で完結できるものから、提携先によってさまざまなクロスセルが可能になります。各ビジネスパーソンが何を扱っているのか把握し、どうアプローチをかけていくのかによってクロスセルができるか変わってきます。

クロスセルの種類と事例は次のとおりです。

①追加のクロスセル

クロスセルの一般的な手法であり、顧客が選択したアイテムの価値を補完する製品への追加のアピールになります。
例えば、タブレットを購入する顧客に対し、タッチペンを紹介することでタブレットを効果的に使用できるようになったり、タブレットカバーを紹介することでタブレットを保護し長く愛用できるようにすることができるアイテムを提供できます。

他にも、新たに銀行口座を作成するユーザーに対してクレジットカードを紹介する。車の保険に加入するユーザーに生命保険を紹介するなどの場面に使用できます。

②季節のクロスセル

季節に応じてクロスセルを取り入れる手法です。顧客がアイテムを購入する時期を考慮することで、より良いクロスセルが提供できます。
例えば、2月のバレンタインシーズンにチョコを購入した場合は、バレンタインプレゼントとして購入している可能性が高いです。そのため、クロスセルとして包装紙や、メッセージカードなどのアイテムを追加でおススメすることが可能になります。

同じく3月のホワイトデーや、7月や8月の夏アイテムとしてのプールや水着も同様です。水着を購入するユーザーへ、ビーチサンダルや日焼け止め、タオルやビーチボールなどの関連商品などを幅広く提供できます。季節的な要素を取り入れることで、ユーザー心理を大きく働かせることが可能になります。

③プロモーションクロスセル

購入したアイテムに関連するプロモーションなどを提供する手法です。例えば、ポイントカードや、インセンティブプログラムなどの付加価値など、購入の意思を固めたアイテムに関連するプロモーションを提供し、リーチの拡大や広告コストの削減などが期待できます。

アップセル・クロスセルに効果的なタイミング

アップセル・クロスセルはどちらも、顧客が購入する可能性をすでに示しているなどの反応があった場合の後半段階で実行されることが多いです。

さらにどちらの戦略も、顧客が購入を検討、または購入する予定のアイテムと類似している製品やサービスを提供します。むやみにアップセル・クロスセルを行うことで顧客にネガティブな心理を与えて、他社の商品に流れてしまうなどのリスクもあるため、タイミングなどのコツをつかむことが重要です。

アップセルに適したタイミング

アップセルに適したタイミングは、新規顧客の場合や顧客と信頼関係を結べているかによって適したタイミングが異なります。顧客分析を行い、上位のアイテムやサービスに興味を持ってもらえるようなきっかけ作りが大事です。無料お試し期間や、キャンペーンなどで障壁を低くし、まずは信頼関係を結ぶとよりスムーズに提案できるでしょう。

クロスセルに適したタイミング

クロスセルに適したタイミングは、すでに購入の意思を固めた後に行うとより効果的です。そのアイテムをより良く快適に使用できるものと感じさせることができれば、追加購入を検討してくれる可能性があります。

まとめ

今回はクロスセルとアップセルについて解説しました。
よく見かける成功しないビジネスパターンには、1つの商品やサービスに固執し、サービスの質や量が重視されていない例が多くあります。ビジネスを成功させる機会を損なうと、機会損失などにつながり、さらには顧客を満足させることができず、長期的に見てうまく立ち行かなくなってしまう可能性があります。

アップセルとクロスセルは、適切に行うと相互に有益であり、顧客に最大の価値を提供することで顧客満足度を高める効果があります。アップセル、クロスセルを成功させるためには、顧客が何を求め、何を評価しているのかを知ることが大事です。また事業者はその道のプロであるという自覚を持ち、より良いアイテムやサービスを提供できる環境作りを心がけることで、売上の上昇が見込まれます。

監修者

古宮 大志(こみや だいし)

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長

大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、クライアントのオウンドメディアの構築・運用支援やマーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。Webマーケティングはもちろん、SEOやデジタル技術の知見など、あらゆる分野に精通し、日々情報のアップデートに邁進している。

※プロフィールに記載された所属、肩書き等の情報は、取材・執筆・公開時点のものです

執筆者

『MarkeTRUNK』編集部(マーケトランクへんしゅうぶ)

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