KGI(重要目標達成指標)やKPI(重要業績評価指標)を設定したものの、それらの目標に向かって何をすべきなのかが分からなくなることが多くあります。また、KGIやKPI達成に思った以上に時間がかかったり、途中でボトルネックが見つかったりすることも珍しくありません。KGIやKPIを達成するまでの道筋を明確にし、そのプロセスにおける障害を事前に予測するために、KPIツリーが非常に役に立ちます。
本記事では、KPIツリーの概要やメリット・デメリット、KPIツリーの作成方法について解説します。事業を効率よく進めるためにKPIツリーは非常に有用です。事業を効率よく進めたい方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
目次
KPIツリーとは
以下ではKPIツリーについて説明しロジックツリーとの違いについても解説します。
● KPIツリーとは
● ロジックツリーとの違い
KPIツリーとは
KPIツリーとはKGIを頂点に置いて、KGI達成のために必要である要素のKPIを段階的に置いた図のことです。KGIを頂点として、その周りに様々なKPIが設定されることから、その様子が木の幹と枝葉に見立てられて、KPIツリーと呼ばれています。
詳しくは後述しますが、KGIを達成するために達成するべき中間目標のようなものがKPIです。そのKPIを達成するためにも、達成すべきKPIがあります。それらを繋げて1つの流れにした図であるKPIツリーを作ることで、KGI達成のための道筋や必要な要素が明確に確認できるのです。
KPIツリー事例
まずは最終目標である「KGI」を一番上部に配置し、そこから下に向けて「目標の実現が可能な要素=KPI」を枝分かれするような形で細分化しながら配置していきます。例えば、最終目標であるKGIに「利益20%増加」を掲げたとします。その最終目標である利益20%増加を達成するために何をするべきか、実現可能なKPIを設定します。
まずできそうなこととして、コストの削減と売上の増加が見込めた場合にKPIに「コスト5%削減」「売上15%増加」という2つのKPIを設定できます。そこから更にKPIを下に枝分かれさせ「コスト5%削減」「売上15%増加」を達成するために何をすべきかを考えます。
更に実現可能なこととして「コスト5%削減」では「人件費2%削減」「ペーパーレス化3%削減」というKPIを設定できました。また「売上15%増加」を達成するためには何をすべきか考えた結果、現時点ででできることを検討し、「商品単価を5%上げる」「販路を拡大し顧客単価を10%」上げる、というKPIが設定できました。
というような具合に、一番上部に配置した頂点のKGIから下に向けて細分化しながらKPIを設定していきます。
ロジックツリーとの違い
ロジックツリーとは問題や原因を解決するためのフレームワークです。ある事柄に対して問題や原因となっている要素をツリー状に書き出すことで解決策を見出します。課題解決フレームワークとして、問題や原因の解決に必要な施策を可視化して、そのプロセスを分析したり管理したりします。
いわゆるマインドマップのような形で使用します。一方KPIツリーは、目標を達成するという意味合いではロジックツリーと同じですが、実現可能な数値を設定するという点で違いがあります。ロジックツリーは全体像をざっくり把握して大まかに捉える指標である一方で、KPIツリーはKGI達成につながる要素を実現可能な数値を用いて分析していきます。
こういった粒度の違いがあると同時に、ロジックツリーは問題解決までのプロセスを分析、管理するフレームワークである一方で、KPIツリーは数値目標を都度設定し目標達成までの成果を評価していくフレームワークであるという違いもあります。
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KPIとは
KPIとは、「重要業績評価指標」と日本語では表現され、KGIを達成するために達成する必要がある指標のことです。KGIを達成するためには、適切なプロセスを踏む必要があり、適切なKPIの設定が非常に重要視されています。
KPIは必ず定量的なものを設定しましょう。例えば、売上に関するKPIを定める場合の指標としては「契約件数」「Webサイトからのリード獲得数」「訪問件数」などが挙げられます。数字で分かる指標を用いることで、達成しているか未達であるかが分かります。そのため、未達だった場合の軌道修正などがいち早く行えるのです。
● KPIの意味
● OKRとの違い
KPIの意味
KPIは目標達成までの進捗率を計測する指標として重要な役割があります。最終目標である「KGI」を達成するまでの要所で設定される、言わば「中間指標」としての意味があります。最終的にKGIを達成するために、セクションごとに必要なプロセスがしっかりと実施されているか、そしてこれから達成できる見込みはあるのかを定量的に把握する目的で設定されます。
もしKPIを設定しなければ、要所での進捗状況が分からず、いつの間にか失敗している可能性も高くなります。そして失敗した原因についても特定ができず、失敗を改善する施策も立てることができません。こういったリスクを回避するためにもKPIの設定は非常に重要なのです。
OKRとの違い
OKRとは目標の設定、及び管理を行うためのフレームワークのことを言います。「Objectives and Key Results」の略称で「Objectives=目標」と「Key Results=主な成果」の2つの要素を設定することで、企業及び企業内のチーム、または個人が同一の課題に向けて取り組めるようになります。主に組織目標を明確化することにより、企業と個人の結束力向上に効果を発揮します。
OKRの目的は目標を達成することではなく、同一の課題に向けて取り組む環境を構築することで、各々のスキルアップやコミュニケーションの活性化を図ることです。そういった特性から、個人に設定されることが多く目標達成の難易度を高めに設定し、実際の達成率は60%から70%程度達成できれば理想とします。
つまり100%達成できてしまう目標設定は難易度が低いことになり、OKRには不適切な数値となります。一方で、KPIは最終目標であるKGIを組織が確実に達成するために設定されるフレームワークです。
つまり企業に対して設定され、目標達成率は100%である必要があります。こういった違いがあるとともに、OKRは企業全体で共通、共有する目標である一方、KPIはセクションごとに部署や運営チーム単位の数値目標を設定する違いもあります。
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KGIとは
KGIとは、「重要目標達成指標」と日本語で訳され、事業の最終目標を定量的な数値目標に落とし込んだもののことです。KGIを基点としてKPIを決定していくため、KGIは必ず定量的で明確なものでなければいけません。「いつまでに」「何を」「どれくらい」達成するのかを必ず明らかにしましょう。
例えば、「お客様に愛される企業になる」というような漠然とした目標は、KGIとして不適切です。「お客様に愛される企業」が、どのような企業であるのかを分析して下記のような定量的な目標に落とし込みましょう。
■3年後の10月決算時までに、リピート率を50%にする
これならKPIも設定しやすく、「いつまでに」「何を」「どれくらい」達成するべきなのかが明確であるため、KGIとして適切と言えます。
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KPIツリーを作成するメリット
ここまでKPIツリーと、KPIツリーの構成要素であるKPIとKGIについて解説しました。KPIツリーは、事業を効率良く進めていくためには非常に大切なものです。KPIツリーを作成するメリットは下記の通りです。
● 全体的なKPIをチェックできる
● 目標達成までの工数が明確になる
● ボトルネックの可視化も可能
● PDCAを容易に回せる
それぞれ順番に解説します。
全体的なKPIをチェックできる
KPIツリーを作成することで、KGI達成の通過点として全体的に必要なKPIをチェックできます。KPIツリーを作成せずにKGI達成を目指すと、KPIが不適切だったり、必要であるはずのKPIの確認が漏れてしまったりして、KGI達成のためのロスが発生することが少なくありません。
ビジネスの世界では、目標達成に向けて効率よく時間と労力、お金を投じる必要があります。KPIツリーを作成することで、これらが可能になります。
目標達成までの工数が明確になる
KPIツリーを作成すると、達成すべきKPIがチェックできるほか、それぞれのKPI達成にかかる工数も明らかになります。事業を進めるにあたって、目標達成の途中で思わぬ遅れが発生することは珍しくありません。KPIツリーで事前に必要な工数を把握することで、想定外の遅延を防げます。
ボトルネックの可視化も可能
ボトルネックとは、KPIやKGIを達成する際に発生する障害や障壁のことです。KPIツリーを作成することで、KGIやKPIの達成へのプロセスが明確になるので、ボトルネックが事前に分かります。事前にボトルネックになるポイントが分かるので、事前に対策を行い、スムーズに事業を進められるようになります。
PDCAを容易に回せる
KGI達成までの道筋が明確になり、ボトルネックも可視化することでPDCAを回しやすくなります。思うような結果が出なかったときも、KPIツリーの下層に遡って原因を探れるため、根本的な原因究明と解決が可能になります。
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KPIツリーを作成するデメリット
ここまでKPIツリーを作成するメリットについて解説しました。事業を進める上で、KPIツリーの作成は重要である一方、KPIツリーの作成にはデメリットもあります。KPIツリーを作成するデメリットは大きく分けて以下の2つです。
● 新たな施策は生まれづらい
● 不要なKPIが生まれる恐れがある
それぞれ順番に解説します。
新たな施策は生まれづらい
KPIツリーはKGI達成のために、事前に組み立てるロードマップのようなものです。KPIツリーをもとに事業を進めることは、事前に引いたレールに沿って事業を進めることを意味します。そのため、事前に設定したKPIを達成することにこだわってしまい、新たな施策が生まれにくくなります。
柔軟なアイデアを必要とする場合は、KPIツリーが足枷になる場合があります。KPIツリーを作成するときは、そのことを念頭に置いた上で作成しましょう。
不要なKPIが生まれる恐れがある
KPIツリーを作成する中で、不要なKPIが生まれる恐れもあります。事業設計などの経験が浅い人がKPIツリーを作った場合、細かくKPIを設定することに注力してしまいがちです。その中で不要なKPIが生まれ、逆に事業の効率を下げる懸念があります。
不要なKPIはKGI達成までの道筋を不明瞭にする危険性があります。KPIツリーを作成する際は、必ず設定するKPIの必要性を自問自答しながら作成しましょう。
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KPIツリーを作成する際の注意点
ここまで、KPIツリーを作るメリットやデメリットについて解説しました。KPIツリーによって事業を加速させたい場合、適切にKPIツリーを作成する必要があります。ここからは、適切なKPIツリーを作成するための注意点について解説します。
● 一度作っただけでは終わらせない
● 一人だけでは作らない
● 「SMART」の法則を意識する
● 数値化できないKPIの設定は避ける
● コントロールできないKPIの設定は避ける
● 失敗しやすい KPIの設定は避ける
一度作っただけでは終わらせない
KPIツリーを一度作って、満足してしまう方も多くいます。しかし、KPIツリーは何度も作り変えたり、加筆を行ったりすることが大切です。何故なら、事業を進めるにあたって、予期せぬ遅延や障害が発生することが珍しくないからです。
その都度、現状を客観的に捉えてKPIの再設定を行うことで、効率よく事業を進められます。頻繁にKPIツリーを見返し、現状と照らし合わせた上で修正を行うと良いでしょう。
一人だけでは作らない
KPIツリーを作成する際には、必ず複数人で作成しましょう。一人でKPIツリーを作成すると、独りよがりなものになってしまい、実現不可能なKPIを立ててしまう可能性があります。
KGIに向けて様々な部署が動くのであれば、それぞれの部署の担当者が集まることが望ましいです。各部門に詳しい人が集まって、連携を取りながらKPIツリーを作成することで、現実的かつ効率の良いKPIの設定が可能になります。
「SMART」の法則を意識する
KPIを決めるときに大切なのは、以下の各単語の頭文字を組み合わせた「SMART」というフレームワークを取り入れることです。
● Specific(具体的な)
● Measurable(計測可能な)
● Achievable(実現可能な)
● Relevant(適切な関連性を持つ)
● Timeーbounded(時間制限のある)
Specific(具体的な)
KPIは明瞭で、誰もが理解できるものでなければなりません。不明瞭な指標を採用すると、目的が不明確になり、結果として従業員の意欲を削ぐ可能性があるので注意が求められます。具体的なものであれば、チーム内での共有が容易となり、共通の目的に向かって効果的な行動を起こしやすくなります。
Measurable(計測可能な)
KPIの目標達成に向けて、進行状況を確認し、各ステップが適切に進められているかを検証することが必要です。数値で示せるなど、計測可能なKPIを選ぶことで、進行の遅延や問題が発生した際にも対策を立てやすくなります。
Achievable(実現可能な)
現実的に達成不可能なKPIは、従業員のモチベーションを低下させるリスクがあります。過去のデータや実績を参考にして、実際に達成可能な目標を設定することが大切です。また、従業員が納得できるKPIを選ぶこともポイントとなります。
Relevant(適切な関連性を持つ)
KPIは、他のKPIやKGIとの連携や関連性を持たせることが必要とされます。
Timeーbounded(時間制限のある)
KPIはKGIの達成を目的として設定されます。各タスクは適切な時期に完了することが求められるため、時間制限をすることが不可欠です。
数値化できないKPIの設定は避ける
KPIは数値化した目標を設定することで効果を発揮するフレームワークです。つまり数値化できないKPIを設定すると計測が不可能になる可能性が高く、当該KPIで進展が止まる可能性が高まります。
例えば、顧客満足度や自社ブランドの市場における認知度、従業員エンゲージメントといった不確定要素は数値化が困難であるため、KPIの指標としては不適切なものになります。こういった、進捗状況や達成度などを数値で表すことができない場合はKPIの設定を避けるべきと判断します。
コントロールできないKPIの設定は避ける
「コントロールできない=努力しても改善が不可能」ということになり、KPIを達成するためには不適切な指標となります。KPIは自社でコントロールができ、なおかつアクションを起こすことで改善につながる要素でなければなりません。
例えば「受注率」はよくKPIに設定されますが、一方「受注数」をKPIに設定しても従業員はアクションを起こすことができず改善の余地もありません。受注数は顧客の意思で購買行動を起こした結果反映したものであり、自社でコントロールができる範疇ではありません。
また他方、問い合わせからの売上数や訪問数といったKPIも不確定要素があり、KPI設定には不向きと言えます。そもそも顧客からの問い合わせ自体がコントロールできるものではなく、営業努力などによって改善できるものではありません。こういったコントロールができないフェーズにKPIを設定するのは不適切と判断できます。
失敗しやすい KPIの設定は避ける
KPIツリーを作成する際は「SMART」の法則を意識することで、効率的かつ効果的なKPIツリーが作成できます。つまり「SMART」の法則の逆を考察することで、失敗しやすいKPIを見出すことができます。「SMART」の法則の逆とは主に以下のようになります。
● 「Specific=具体的な」→逆「曖昧な」
● 「Measurable=計測可能な」→逆「計測不可能な」
● 「Achievable=実現可能な」→逆「実現不可能な」
● 「Relevant=適切な関連性を持つ」→逆「適切でない関連性を持つ」
● 「Timeーbounded=時間制限のある」→逆「時間制限のない」
「Specific=具体的な」→逆「曖昧な」
具体的の反対語は抽象的となります。「詳細に分かりやすく」という意味の具体的に対して抽象的とは「曖昧かつ不明瞭」であることを意味します。
主観で物事を判断すればするほど、KPIの設定は曖昧になっていきKPIを設定している意義が損なわれてしまいます。こういった曖昧なKPIの設定を避けるためにも、しっかりと自社データに基づいた客観的なKPIの設定が必要となります。
「Measurable=計測可能な」→逆「計測不可能な」
計測や測定ができないKPIの設定は避ける必要があります。KPIは数値化できてこそ、フレームワークとして機能します。こういったことから、なるべく多くの情報を収集し計測可能なデータのみをKPIに設定し、計測不可能なデータに関しては採用しないようにします。
「Achievable=実現可能な」→逆「実現不可能な」
KPIの設定は「実現可能な数値を設定する」ということも重要事項の一つとなります。実現可能な数値を設定し、順序よく課題をクリアしていくことでKGI達成を実現できる可能性が高まります。
実現不可能な数値を設定してプロジェクトがそこで頓挫してしまえば、KPIを設定している意味がなくなります。こういったことからも、なるべく自社の生産能力を俯瞰的に捉え、過去の実績やデータに基づいた現実的な数値設定が必要となります。
「Relevant=適切な関連性を持つ」→逆「適切でない関連性」
KPIツリーをはじめロジックツリーなど「階層構造系」のマップは、一つひとつのKPIに適切な関連性を持たせることで徐々にゴールに近づける特性があります。
そのため一つでも関連性が適切でないKPIを設定すると、そのKPIで進展が止まる可能性が高まります。一つひとつのKPIに具体的かつ実現可能な数値設定を行い、適切な関連性を持たせることで良い進捗状況となることが期待できます。
「Timeーbounded=時間制限のある」→逆「時間制限のない」
KPIは期間を明確に定めることで効率的かつ効果的にプロジェクトを進行できます。設定したKPIを「いつまでにどのくらいの期間で」達成するかを予め決定しておくことで、作業進行にメリハリをつけられます。
こうすることで、成果を達成できないフェーズを五月雨式にいつまでもやり続けることを防げます。また仮に達成できなかったときは、作業を一旦中断して達成できなかった要因を突き止めることで、新たな施策を立てることができます。
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KPIツリーの作り方
KPIツリーの作成は、上記の注意点を守りつつ、正しい手順に沿って作ることが大切です。KPIツリーを作るのに必要な手順は、大きく分けて3ステップです。
● KGIを設定する
● 四則演算で組み立てる
● 具体的な数値を指定する
● できる限り細分化する
それぞれのステップについて順番に解説します。
KGIを設定する
最初に、1つのKGIを設定しましょう。前述した通りKGIを設定する際は、「いつまでに」「何を」「どれくらい」の3つを明確にしましょう。KGIは最終的な事業のゴールとなるため、「商談数」や「新規獲得数」などを指標とするのは不適切です。必ず「売上」や「利益」などの事業のゴールとなるものを指標にしましょう。
四則演算で組み立てる
KGIを設定したら、いよいよロジックツリーを作っていきます。まずはKGIの達成に必要な要素を洗い出し、一つ下層に要素を追加しましょう。その要素のさらに下に、達成のために必要な要素を追加する、という繰り返しでKPIツリーは完成します。
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この際に、四則演算で組み立てることが大切です。簡単な例は下記の通りです。
● KGIが売上→その下にKPIは「平均顧客単価」と「顧客数」(顧客単価×顧客数)
● KPIが「顧客数」→その下には「新規顧客数」と「リピート顧客数」(新規顧客数+リピート顧客数)
このように、それぞれのKGIやKPIの直下には、四則演算で組み立てられる要素を入れましょう。そうすることで、KGIやKPIを達成するために必要な要素を漏れなく洗い出すことが可能になります。
具体的な数値を指定する
四則演算でKGIやKPIを達成するための要素分解ができたら、それぞれの具体的な数値を指定しましょう。具体的な数値を指定することで、達成できたかできていないかが明確に分かり、PDCAサイクルを適切に回せるようになります。具体的な数値を指定する例は下記の通りです。
■KPI(顧客数:5,000人)→その下の要素「新規顧客数:3,500人」、「リピート顧客数:1,500人」
このように明確な数値を指定しておくことで、達成できなかった場合の原因究明も容易です。上記を例にすると、顧客数が5,000人に満たなかった場合、下層の新規顧客数とリピート顧客数のどちらが達成していないかを確認します。達成していない方のさらに下層を確認していくことで、根本となる未達の原因にアプローチが可能です。
できる限り細分化する
KPIはできる限り細分化し、それ以上細分化できないところまで分解していくことを意識します。KPIはその特性上、要素を細分化すればするほど現場のタスクに近づいていき、指標達成に必要な作業が明確化されていきます。
例えば、マーケティングにおいて「受注率」はよくKPIに設定されますが、ここで細分化を止めずに一歩踏み込んで受注数や提案数にまでKPIを設定することで、受注率が未達成だった場合に原因の特定が容易になります。
受注数が足りなかったのか、あるいは顧客に行った提案数が少なかったのか、といったことが把握できれば施策の見直しも容易に行えます。もし、受注数が足りなければ商品やサービスをもっと魅力的にする、顧客に行った提案数が少なければ積極的に提案数を増やす、といった施策が立てられます。
KPIツリー作成に便利なツール例
KPIツリー作成に便利なツールとしては以下があります。
● Excel
● XMind
● MindMeister
● Coggle
● Miro
Excel
EXCELには「階層構造」というデータがあらかじめ入っており、この機能を利用してKPIツリーを簡単に作成できます。業務進行管理表や手順書など、業務に関わるデータをEXCEL上で保存している企業などは、KPIツリーをEXCELで作成できるメリットは大きいと言えます。
これら業務で使用する資料が複数のソフトや異なるファイルで保存されている場合は、管理者はもとより現場担当者にとっても使用や管理が負担となります。こういった時にKPIツリーを作成したファイルもまとめてEXCEL上で一元管理できれば、管理も更新も容易になります。
EXCELでのKPIツリーの作成方法
1. EXCELを開きメニューより挿入をクリックします
2. メニューより図をクリックして「SmartArt」をクリックします
3. 左側の項目より「階層構造」をクリックします
4. ツリー状の階層構造サンプルが複数表示されますので目的に応じて選択します
XMind
XMindは、KPIツリーはもとよりマインドマップやプロジェクト管理表、ToDoマップなどツリー状のあらゆるマップを作成できる高機能ツールです。作成するコンテンツに応じてアニメーショントランジションが自動生成されるなど、他サービスにはない機能も備わっています。
XMindは有料ですが、無料でも利用ができます。無料版では、エクスポートする際にウォーターマークが付いたり、一部機能が制限されたりするものの、それでも簡単なツリーマップ程度は作成できます。
MindMeister
MindMeisterは職場やチーム内でマップを共有しながら複数人で作成していくことができます。ワークフローの自動化による効率的な作業を実現できる他、統合及び連携の制限もないため企業内で自由に共有が可能です。作成したマップはWordやPowerPointなどにエクスポートできるため、プレゼン資料なども効率的に作成できます。
Coggle
Coggleは非常に複雑なデータを簡単に視覚化して企業やチーム内で共有ができます。共有するメンバーを自由に増やすことができ、同一マップをリアルタイムで同時に作成していけます。また画像の追加も無制限で簡単にでき、見栄えの良いKPIツリーを作成できます。
階層構造系マップの肝となるループの作成やブランチの結合は直感的に操作ができ、ストレスがありません。完成した複数の異なるツリーマップは、一括エクスポート機能により手間をかけず一瞬で行えます。
Miro
ビジュアルワークスペースとしてサービスを提供していますが、ツリーマップやマインドマップなどが作成できる階層構造系マップ作成機能も利用できます。並べられた項目を直感的かつ自在にループでつなげることができるため、作業ミスを削減できます。
ホワイトボードスタイルのインターフェースで視覚的に分かりやすく使用ができ、またオンラインで共有も可能です。無料版では編集可能なホワイトボード数は制限されていますが、有料版になると無制限に使用ができアクセス権限の設定も可能です。
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まとめ
本記事では、KPIツリーの目的やメリット・デメリット、KPIツリーの作成方法まで解説しました。KPIツリーを適切に作成した上で事業を行うことで、効率よくPDCAサイクルを回して事業を進められます。
また、現状に応じてKPIツリーを書き換えることで、定期的に現状把握を行い、事業プランを立て直す習慣も身に付くでしょう。ぜひ本記事を参考にKPIツリーを作成し、事業に役立ててみてはいかがでしょうか。