WEBでの情報収集が当たり前となった今、ユーザーは自社で把握している課題の解決策を簡単に探すことができます。また、無料ツールを使って、自社の課題をデータ化・分析し、自社内で解決することも可能になりました。
このようにITの進化やDX化とともに企業のセールス活動も高度化しており、従来の営業手法は通用しなくなっています。WEBで気軽に情報収集ができる状況下で、新たに注目されているのがビジョンセリング(ビジョン営業)、インサイトセリング(インサイト営業)と呼ばれる手法です。
今回はビジョンセリング、インサイトセリングについて詳しく紹介します。
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目次
3つの既存の営業手法
従来の営業手法として、御用聞き営業、プロダクト営業、ソリューション営業の3つありました。これらの営業手法の特徴は以下の通りです。
・御用聞き営業
いわゆるルートセールスとも呼ばれ、定期的に顧客を訪問し、顧客の要望に応じて販売する営業スタイルです。顧客が検討している購入先を聞き出し、その購入先よりもコストや納品スピード、手間などで顧客にメリットがあることをアピールします。
営業活動は顧客の要望に依存するため、比較的受け身となります。
・プロダクト営業
売る商品はすでに決まっており、顧客の要望にあった商品を提案する営業スタイルです。顧客の要望に対して追加の提案をしたり、新商品を積極的に紹介し、競合他社の商品よりも優れている点をアピールします。
商品の幅広い知識・スキルが求められ、また、ルートセールスよりも積極的な営業活動になります。しかし、競合他社と機能や性能に差がなければ、価格競争になるリスクがあります。
・ソリューション営業
顧客の課題に対し、解決手段として商品やサービスを提案する営業スタイルです。顧客とコミュニケーションを取りながら顧客の課題を理解し、複数の商品・サービスで構成した複合的な提案をします。
プロダクト営業より求められる知識・スキルは高くなります。自社商品の特徴はもちろん、効果とメリットを説明できる知識と、顧客の課題を把握するためのコミュニケーションスキル・ヒアリングスキルが重要です。
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営業担当者に会う前に情報収集が完了
「情報収集、比較検討、意思決定といった購買プロセスのうち、情報収集・比較検討を67%の企業は営業担当者が接触する前に終わっている」という2012年にシリウス・ディシジョンが発表した調査データは、1度は聞いたことある人が多いかと思います。
また、2020年にメディックスが発表した「2020年版IT製品選定者アンケート調査」では、IT製品の選定において、最終意思決定を除く、すべてのフェーズ(認知のきっかけ、一次選定、二次選定)で最も活用されている情報収集源は「検索エンジン」という結果も出ています。
これらの調査データから見ても分かるように、インターネットの普及によって購買プロセスは、営業担当者を通じて情報収集する形から、営業担当者に会う前にインターネットや検索エンジンから情報収集を完了させる形へ変化しています。
購買プロセスのWEB化とともに、サービスのセルフサービス化により、企業は顕在層への販売を自動化し、セールスに割くリソースを潜在層またはエンタープライズ企業へシフトしつつあります。その結果、セールスに求められるスキル・知識はさらに高度化していると言えます。
ビジョンセリング、インサイトセリング
このような環境下で新たに注目されているのがビジョンセリングとインサイトセリングです。
ビジョンセリングとインサイトセリングは似ていますが、ビジョンセリングは現在、顧客が明確にしている理想にアプローチするに対し、インサイトセリングはまだ見えていない未来の理想にアプローチします。時間軸としての違いが両者にあります。
・ビジョンセリング
顧客の持つ理想を実現するためにサポートや提案をする営業スタイルです。理想を実現するために、いま解決する必要のある課題を明確にすることで、自社の商品・サービスを採用してもらいます。
セールスではなく、コンサルタントに求められるような高いスキルと知識が必要です。また、課題がない(と認識している)企業も販売対象となり、中長期的な売上が期待できます。
・インサイトセリング
顧客と将来の目指すべき姿を描き、ビジョンを作り出すことで自社の商品・サービスを採用してもらう営業スタイルです。5年後、10年後にどのような顧客と関わり、ビジネスに変革していくか提案していきます。
顧客と対話しながら理想の姿を作り上げていきます。ビジョンセリングのように高いスキルと知識に加え、顧客以上に顧客を理解し、理解を得るために顧客に説明し続けることが重要です。
ビジョンセリングもインサイトセリングも、競合と圧倒的な差別化を図るために有効な提案です。しかし、中途半端な理解で提案をしてしまうと、無茶な提案だと思われ、信頼を落とすリスクがあります。また、そもそもの提案を理解できる企業が、先進的な取り組みを推進する企業などに限定される可能性もあります。
・ビジョンセリング、インサイトセリングの実践方法
①顧客のNo2になる
顧客の経営理念やビジョンを理解し、その理想を実現するためにはどのようにしたらよいのかを提案していくためには、社長の次のポジションに位置するくらい顧客以上に顧客を理解する必要があります。
そして、顧客の理念やビジョンをいかに実現するのか、アイデアを一緒に作り上げていくなかで、そのニーズにあった提案を行っていくことができるようになります。
②商品・サービスを売り込まない
顧客の経営理念やビジョンを実現していくためには、商品・サービスを売る意識を捨てなければいけません。顧客の理念に導くための提案、そのために認識されていない課題に対する提案、将来のチャンスやリスクを見越した提案をしていくことが重要です。
インサイトセリング、ビジョンセリングとマーケティング
インターネットでの情報収集が気軽にできるようになったことで、企業の担当者はセールスと会う前に、自社の課題を認識し解決方法を理解できるようになりました。
その結果、インサイトセリング・ビジョンセリングのような営業手法の高度化するとともに、マーケティングにおいても、これまで以上に顧客のインサイトを的確に捉える重要性が増しています。
企業の動向を的確に読み解き、まだ認識されていない潜在ニーズを見極めることで、顧客自身が認識できなかったインサイトを理解し、それらを施策に反映させていきます。
具体的には、①Google Analyticsなどで顧客データの収集・統合、②カスタマージャーニーにおけるデータ分析、③分析結果を顧客体験に反映、といったステップを踏んでいきます。
インサイトの重要性やメリット、顧客のインサイトを理解していく具体的な方法については、下記のページが参考になります。
「インサイト」とは?マーケティング用語としての意味とニーズを具体例で解説 | MarkeTRUNK
B to Bの顧客インサイトとは何か?知っておきたいメリットや具体的な内容について解説 | MarkeTRUNK
高品質なユーザーインサイトを得るために必要なステップとは? | MarkeTRUNK
まとめ
・インターネットの普及によって営業担当者から情報収集する購買プロセスから、営業担当者に会う前にインターネットで情報収集を完了させる購買プロセスへ変化しており、従来の営業手法が通用しなくなっている
・新たに注目されているのが、ビジョンセリングという顧客の持つ理想を実現するためにサポートや提案をする営業スタイルと、インサイトセリングという顧客と将来の目指すべき姿を描き、ビジョンを作り出すことで自社の商品・サービスを採用してもらう営業スタイル
・ビジョンセリングは現在、顧客が明確にしている理想にアプローチするに対し、インサイトセリングはまだ見えていない未来の理想にアプローチする
・インサイトセリング・ビジョンセリングのような営業手法の高度化するとともに、マーケティングにおいても、これまで以上に顧客のインサイトを的確に捉える重要性が増している