インターネットの普及により、メディアなどの情報量が激増した現代において、DSP広告は、企業成長にとって欠かせないツールの一つになってきました。
多様化するユーザーに向け、コストを抑えつつ最大の効果を目指せる広告を配信するためには、マーケティング担当者がDSPやSSPの意味を正しく理解し、活用することが大切です。
本記事では、DSPとは具体的にどのようなものなのか、DSP広告の仕組みから押さえておきたいSSPやメディアとの関係性まで、詳しく解説します。
目次
DSPとは?
近年、飛躍的に成長し、多くの企業が導入を進めている「DSP」。
DSPとは、「Demand-Side Platform:デマンドサイドプラットフォーム」の略称で、インターネット広告の配信を自動で最適化してくれるツールのことです。従来、広告主が広告を配信するために必要だった手作業を自動で行うことで、運用にかかる手間や時間を減らし、なおかつ費用対効果の高い広告配信が行えるプログラムとなっています。
DSPの特徴
DSPは、希望する条件に即した明確なターゲティングや、クリエーティブの管理・分析、メディア(媒体)へ広告枠の入札、入札単価の調整・設定など、広告配信に関わるあらゆる工程を最適化することが特徴です。
広告主がDSPを導入し、自社の予算やターゲット層、文章や画像のクリエーティブ、目標とするCPA(Cost Per Acquisition:コンバーション1件あたりにかかる費用)などを登録すれば、無駄の少ない的確な広告配信が行えます。
DSPは広告枠を自動で購入するだけでなく、広告効果の増大につながるターゲットごとの配信を行えることがポイントです。ライフスタイルや消費行動が多様化・複雑化する現代のインターネットユーザーに、独自のアルゴリズムを用いて最適な広告を提供する配信手法といえるでしょう。
SSPとは?
DSPとは、広告の費用対効果を高めるための、広告主に向けたプラットフォームとなりますが、反対にその広告枠を提供するメディア側に向けた、利益の最大化をねらうプラットフォームが「SSP」になります。
SSPは「Supply-Side Platform:サプライサイドプラットフォーム」の略称で、GoogleやYahoo!などのメディア側が、自社の広告枠について、どのような広告主にどれぐらいの金額で販売するかを、あらかじめ設定しておくツールです。設定条件に合った最適な広告を自動配信するのがSSPの役割だと理解しておきましょう。
DSPとは関係が深く、SSPとDSPが接続し連動することで、広告配信が行われています。以下で、DSPとSSPの関係性を詳しく見ていきましょう。
DSPとSSPの関係性
SSPにとってDSPとは、Web広告に関する取引を行うために、欠かせない管理システムです。Web広告の枠をできるだけ安価で購入したい広告主側が、DSPで入稿金額をあらかじめ設定し発注。一方、メディア側は広告を受注し、SSPを通して条件に合う一番高額な広告を自動で表示させるという仕組みです。
SSPとDSPとは、受注・発注を行う関係性であること、また、広告主とメディアの両者にとって、それぞれの利益を最大化させるサービスであることがポイントになります。
RTBとは?
DSPとSSPの取引に欠かせないのが「RTB」というプラットフォームです。RTBとは「Real Time Bidding:リアルタイムビッディング」の略称で「リアルタイム入札」とも呼ばれています。DSPとSSPの間に位置し、広告主側とメディア側の情報を一括して管理。それぞれの利害を一致・両立させるためのシステムです。RTBの基本的な仕組みは以下になります。
①ユーザーが広告枠のあるメディアに訪問する。
②ユーザーの情報や行動履歴などから、メディアはSSPに広告のリクエストを行う。
③DSPがRTBを通じてSSPからリクエストを受け情報を分析。入札を行う。
④SSPがRTBを通じてDSPから受け取った入札条件のうち、一番高い広告を確定。確定したDSPの広告をメディアに配信し、ユーザーの画面に表示させる。
広告枠ではインプレッション(ブラウザ上での表示)が発生するたびに入札が行われますが、1回ごとのRTBに要する時間は、①のユーザー訪問から、0.1秒以内だといわれています。
RTBの高速処理システムを活用することで、広告主とメディアの利益を両方最大化させ、最適な価格で広告配信が行えていると理解しましょう。
DSPとアドネットワークの違いとは?
アドネットワークとは、WebサイトやSNSなど、さまざまなメディアの広告枠を集約しているネットワークで、広告を一括配信する機能を持っています。アドネットワークの具体的な概要を、以下で見ていきましょう。
アドネットワークとは?
例えば、有名なアドネットワークの一つが「Google AdSense」です。このネットワークに広告出稿の手続きをすれば、登録している複数のメディアへ一度に配信ができるため、あらゆる媒体に多くの広告を掲載したい広告主にとっては、手間や時間をかけずにマーケティング活動が行えるというメリットがあります。
DSPと混同されることが多い広告配信手法ですが、それぞれの役割自体が大きく異なっているため注意が必要です。アドネットワークとは、提供できる広告枠を一つに集めた「ネットワーク」であり、DSPとは、広告主側がアドネットワークなどを効率的に利用するための「ツール」であると理解しておきましょう。
アドエクスチェンジとは?
アドネットワークとともに、押さえておきたい仕組みがアドエクスチェンジです。アドエクスチェンジとは、複数のアドネットワークが持つメディアの広告枠を交換できる仕組みです。
例えば、Aというアドネットワークに登録しているメディアの広告枠と、Bというアドネットワークに登録しているメディアの広告枠を両方取り扱えるようにするなど、あらゆるアドネットワークの広告枠をアドエクスチェンジにより一元管理すること。分かりやすくいえば、アドエクスチェンジによって、各ネットワークの枠組みを開放し、自由に横断できるようになったということです。
ネットワークごとに異なっていた広告(バナー)のサイズや容量、課金の形態など、さまざまな仕組みも統一化されました。アドエクスチェンジとは、複数のアドネットワークを束ねた、巨大な広告枠の「市場」であるとイメージすればよいでしょう。
DSP広告のメリット・デメリット
DSP広告とは、DSPを通じてWebサイトやアプリなどのメディアに配信するディスプレイ広告のことです。DSPがユーザーのデータを分析し、ターゲットを細かく設定する仕組みを持っているため、DSP広告では、ユーザーに寄り添った最適な広告が提供できるといえます。
メリットの多いDSP広告ですが、デメリットにはどのようなものが考えられるのでしょうか。DSP広告の具体的なメリット・デメリットを以下で確認しましょう。
DSP広告のメリット
DSP広告の大きなメリットとして挙げられるのは、ユーザーの行動履歴などを分析し、一人ひとりに最適な広告を選択・配信できることです。
従来のインターネット広告は、いわゆる「枠」に出稿するタイプの広告で、ユーザーの年齢や性別、住んでいる地域などの枠をターゲット化していました。しかし、近年はユーザーの詳細な属性にプラスして行動履歴の分析・解析が取り入れられたことで、「枠」から「人」へ、ターゲティングの基準が変化してきています。
企業側がどのようなユーザーに広告配信するかを明確に設定することで、無駄な広告費用を抑えつつ、ピンポイントでアプローチできることが最大のメリットだといえるでしょう。
また、DSP広告はインプレッションごとに、最適な価格での入札を自動的に行うことができます。ユーザーのデータ分析や入札価格の確定など、手作業では手間がかかる作業を一瞬にして行えるため、広告主はその分、クリエーティブな施策に時間を費やすことができるでしょう。
DSP広告のデメリット
DSP広告のデメリットは、サービスを導入する際の初期費用や手数料です。DSPを提供する企業によって金額や期間などが異なるため、サービスの導入前に、自社の予算とCPAをしっかり検討しておく必要があります。
また、広告の配信先が前もって分からないことで、企業としての施策が立てにくいことも考えられます。DSP広告はリアルタイムで入札が行われるため、メディアの掲載先を正確に把握できません。企業側が欲しいデータを収集できず、次の施策やアイデアを打ち出しにくいこともあるでしょう。
企業の課題ともいえるのが、複数あるDSPサービスのベンダー(販売者)から、自社にとって最適なサービスを提供する会社を選ぶことです。マーケティング担当者はサービスの特徴や機能を比較し、自社の目的に合ったDSPサービスを選択しましょう。
まとめ
DSPとは、インターネット広告の配信を自動で最適化するプラットフォームです。広告の自動入札だけでなく、明確なターゲティングが行えることがポイントで、多様化・複雑化するユーザーに、最適な広告を提供できるツールといえます。
DSPが広告主の費用対効果を高めるためのツールとなる一方で、メディア側の利益を最大化させるツールがSSPです。SSPとDSPは受注・発注の関係で連動し、インプレッションごとにRTBというリアルタイム入札が行われています。
インターネット広告のテクノロジーが日々進化を遂げる中、企業のマーケティング担当者が、DSP広告とはどのようなものなのか、その概要や具体的な仕組みを知ることは重要です。DSPのメリット・デメリットを正しく理解し、自社のマーケティング活動に活用していきましょう。