BtoB企業にとって導入事例はBtoCサービスでいうユーザーが発信しているクチコミの機能・役割を果たします。BtoB企業のサービスサイトにおいて、導入事例は、サイト訪問者のサービスに対する信頼感や安心感を醸成します。そして、導入実績や企業ロゴも同様の役割を果たし、サイト内での表記方法によって問合せや資料ダウンロードのCVにも影響します。
今回はBtoBサイトにおける導入事例の役割と、導入事例ページの作成ポイントをSaaS企業のサービスサイトとあわせて、前編・後編とわけてご紹介します。前編では、BtoBサイトにおける導入事例の役割とトップページでの作成ポイントを中心にご紹介します。
目次
BtoBサイトにおける導入事例の役割
株式会社メディックスが、自社のIT製品やサービス導入に関与したことのある担当者を対象に行った調査によると、企業のホームページで興味のあるコンテンツについて聞いたところ「導入事例」は58.1%でした。「価格」61.5%、「製品特長」59.7%に次ぐ、上位3位に入るコンテンツです。
導入事例は、顧客がサービスを導入するまでに至る、認知・情報収集~比較検討~決定のすべてのプロセスに有効な汎用性の高いコンテンツです。
認知・情報収集のフェーズでは、Facebook広告やビジネスメディアのメルマガのタイトルなどに掲載した導入企業の企業名などをきっかけに、ユーザーにサービスを認知させることができます。また「コスト削減 事例」のように、ユーザーが課題解決したいキーワードを検索した結果、導入事例のページからサービスサイトへ流入することもあります。
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比較検討のフェーズでは、ユーザーが自社の持つ課題を解決できるのか、導入したらどのような効果が得られるのか、他社の導入事例になぞらえて導入イメージをユーザーに連想してもらうことが重要です。
そして、決定フェーズでは、社内稟議を通す際に導入企業でサービスに対する安心感や信頼感を醸成し、導入決定に際してポジティブな思考を持ってもらうことが重要です。
そういった意味では、導入事例は営業資料や展示会・セミナーで活用したり、社内研修などWebサイト以外にも活用範囲が広いコンテンツになっていきます。
汎用性の高い、かつ、活用範囲の広い導入事例ですが、BtoBサイトではどのように作成していったら良いでしょうか。BtoBのSaaS企業のサービスサイトを参考にしながら、下記3つのページごとの作成ポイントを説明していきます。
・トップページ
・事例一覧ページ
・事例ページ
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導入事例の作成ポイント 【トップページ】
1- ① 導入事例を掲載しない
そもそも、導入事例をサイトに掲載するかどうか、検討することから始めます。サービスをリリースして間もなく、導入企業数自体が少ない場合にはサイトに載せることが難しい場合があります。
株式会社WACULが実施した「B2B SaaSサービスを提供する企業における事例紹介ページのCVRを最大化する手法に関する調査」によると、事例コンテンツが12件を超えると「事例ページ経由のCVR」が「事例ページ以外経由のCVR」が高くなるデータがあります。
事例ページを作成することでサイトの効果改善は12件以上で初めて期待できるようになるため、導入事例はある程度の件数が集まってから掲載しても良いかもしれません。
一方で、十分な導入実績があっても、企業によって意図的に導入事例を掲載しない場合もあります。
サブスクリプションコマース事業を展開するテモナ株式会社のグラウド型通販システム「サブスクア」のサイトには導入事例コンテンツはありません。
代わりにトップページの最上部には「導入シェア№1」「導入企業数1,000社以上」「サービス提供10年以上」と実績が表記されており、サービスに対する安心感や信頼感を醸成することができます。
また、ノウハウブログやお役立ち資料、セミナーなどの導入事例以外のコンテンツが充実しており、サイト訪問者が知りたい情報にアクセスしやすいサイト構成になっています。
https://subscription-store.com/
1‐② 導入実績・企業ロゴ・導入事例の設置ポイント
導入事例をサイトに掲載する場合、トップページには導入実績と企業ロゴ、そして、導入事例をどのように設置するかがポイントです。トップページは導入事例以外に、サービス特長、機能、料金、ベネフィットなど様々なコンテンツで構成されます。
例えば、トップページの最上部に導入実績と企業ロゴを掲載し、ユーザーに最初にこれらのコンテンツを視覚的に見せることで信頼感や安心感を与えることができます。そして、ポジティブな感情を持ったままユーザーはサービス特長や機能、ベネフィットの情報に触れていきます。
労務管理クラウド「SmartHR」サイトのトップページには「3年連続 労務管理クラウドシェアNo.1」の実績と、横にスライドする企業ロゴが多く掲載されており、広告塔の芸能人も加わり、インパクトのあるアイキャッチになっています。
また、最上部にベネフィットやサービスの特長・機能を掲載し、どんなサービスであるか、どういうメリットが得られるかユーザーが理解した次のステップで、導入実績と企業ロゴ、導入事例の情報を掲載していくケースもあります。
株式会社チームスピリットが展開するクラウドサービス「TeamSpirit」サイトは、トップページでベネフィットとサービス紹介で掲載され、その下に導入事例があります。導入事例には「契約ライセンス数」と「契約社数」がグラフで紹介されおり、導入実績の伸びが視覚的に分かるようになっています。
さらに導入実績の下には、企業ロゴと製品ダウンロードのCTAボタンがあり、さらに導入事例と、導入事例一覧のCTAボタンが掲載されています。
https://www.teamspirit.com/ja-jp/
1‐③ 導入事例をCVポイントとして掲載する
先述のアンケート結果のように、導入事例はサイト訪問者が興味の高いコンテンツの1つです。リード獲得につなげるために、導入企業の詳細を知りたいニーズを資料ダウンロードにつなげるケースがあります。
SaaS比較サイト「BOXIL(ボクシル)」を運営する株式会社スマートキャンプのサービスサイトは、トップページ下部に300社の導入実績と企業ロゴ、そして、事例収録企業6社が掲載されています。事例収録企業の下に「導入企業の事例一覧はこちら」と表示されたCTAボタンがあり、ボタンをクリックすると事例収録企業の資料ダウンロードフォームに遷移するようになっています。
サイト全体の構成は、トップページのほかに、セミナー情報、導入事例とシンプルな構成であり、知りたい情報がどのように得られるのか分かりやすくなっています。
https://boxil.smartcamp.co.jp/
まとめ
・導入事例は認知・情報収集~比較検討~決定のすべてのプロセスに有効な汎用性の高いコンテンツ
・サービスサイトで導入事例を作成する際には、トップページ・事例一覧ページ・事例詳細ページの3つの観点からどのように作成するのか検討する
・トップページではまず、導入事例コンテンツを掲載するか、しないかというところから検討する。掲載しない場合、導入実績や企業ロゴのほかに、ノウハウやセミナー情報などのコンテンツを充実させる
・導入事例を掲載する場合、トップページは導入実績や企業ロゴ、導入事例を他のコンテンツとあわせ、どのように設置するのかポイント