新型コロナウイルス感染症のパンデミックが、世界経済や人々の暮らしに与えた影響は計り知れないものとなった。社会は「ニューノーマル」と呼ばれる新常態に舵を切り、生活者の日常は変革を余儀なくされた状況だ。
企業や組織も同様である。従来のビジネススタイルを見直し、生活者に新しく備わった意識や行動、ニーズをつかめるような、新しいマーケティング活動が急務となるだろう。
ニューノーマル時代のマーケティングには、どのようなことを注視するべきか。生活者への調査結果をもとに、社会の変化と、今後のビジネスにヒントとなる消費者インサイトについて解析する。
参照元:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)インサイトからのビジネスヒント
消費者インサイトに変化
出典元:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)インサイトからのビジネスヒント
コロナ禍において、生活者には新しい意識が生まれ、その行動にも影響を与えている。
ニューノーマル時代の「消費者インサイト(自身も意識していない潜在ニーズ)」について追跡調査した事例を4つ紹介しよう。
●消費者の意識が変化/自主性と自律性
生活者はその社会生活(仕事・プラベート)を、オンライン空間で過ごすことが多くなった。これまで通勤や移動に費やしていた時間は自由時間となり、生活スタイルや仕事のペースなども自身で選択し、行動することが増えている。従来の生活にはなかった「自主性」や「自律性」が生まれる一方で、仕事とプライベートの線引きを意識するような「セルフマネジメント」が重要なポイントとなっている。
●消費者の行動に変化/実空間と実時間
社会生活をオンライン空間で過ごすことが増え、他者と接する機会が急激に減少する生活者も多いだろう。「実空間」を他者と共有したいというニーズが増え、居住空間や生活環境を充実させたいという意識が高まることも考えられる。
また、デジタルネーティブ世代を中心に、共時性のあるコンテンツで、他者とやりとりしながら「実時間」を楽しむといった新たな行動も生まれている。
●消費者の目的に変化/利己と利他
環境の変化により、集団生活や集団行動が減少し、生活者にはこれまでにない「自我意識」が芽生えていくと予測される。コロナ禍において、自身の購買行動がさまざまな人々の生活や、企業成長に関連していることを認識。生活者はよりいっそう自身の行動を選択するようになるだろう。利己だけでない、利他の恩恵(ベネフィット)を意識し、信頼できる商品やサービス、また企業や組織などに重きを置いた消費行動をとっていくと予測できる。
●消費者との関係が変化/自身との近さ
生活者が自身の消費行動を意識することによって、認知していない商品や企業サービスへの防衛・警戒心も強まっている。自身と「近い」ものであるか、信頼できるものであるかが消費のポイントとなり、安全性やトレーサビリティ(追跡可能性)などを重要視するだろう。
商品や企業サービスとの距離は、自身が所属するSNSなどを通じて把握。コミュニティーで「応援消費」をするなど、つながりが強固となると考えられる。
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マーケティングに必要な「変化」
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ニューノーマル時代の生活者ニーズで注目すべきポイントは、「個」を意識した行動の重要性である。マーケティングにおいても、「個」の要素を取り入れた施策がポイントとなるだろう。多様化する「個」のニーズをどれだけ把握しアプローチできるかが、企業成長の鍵である。
メガブランドなど、その規模の大きさによっては、マーケティングに「平均」や「最大公約数」を取り入れざるを得ない中で、D2Cブランドのような、自社サイトで直販する形式の「個」を意識した取り組みにも注目が集まっている。
多様化する「個」のニーズに対応する新しいマーケティング手法で、積極的にブランドバーパス(Brand Purpose:存在意義)を発信していくことが不可欠である。
まとめ
消費者の価値観が変わることで、マーケティング手法にも同じような変化が求められている。ニューノーマル時代に予測される消費者の意識・行動・目的・関係性を注視し、ビジネスチャンスへとつなげるべく、ブランドバーパスを表明することが重要だ。