システム部門ほど製品を知らないし、営業ほど顧客を知らない
市場に新しいサービスや製品を投入する場合には、その開発を始めるに至ったなにかのきっかけがあったはずだ。ビジネス開発部門やマーケティング部門がきっかけだとすると市場のニーズや環境を分析したり、IoT情報やBig Dataからの解析で導き出した製品やサービスなどの発案になるのかもしれない。しかしほとんどはシステム部門や営業部門が、別の作業をしていた時に、この部分は他でも需要がるのではないか?このサービスは他の人も欲しがるのでは?などプロダクトアウト的に、新製品やサービスが発案される事が結構あるのではないでしょうか。これはこれで経験則に基づく貴重な発案方法である事に間違いはないでしょう。
では、プロダクトアウト的な発案に対して、私達マーケティング部門はどのように加わるべきでしょうか。システム部門の人ほど、その製品を熟知している訳ではないでしょうし、市場は知っていても、営業の人ほど顧客を知っている訳ではありません。
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プロダクトアウトな考えが陥る罠
プロダクトアウト的な考えで発案された場合によく起きる事は、この案は絶対に売れると信じ切った目で集めた、つまりバイアスのかかった情報を中心にして周りへの説得資料を作り始める事ではないでしょうか。得てしてバイアスをかけて説得資料づくりや事業つくりをする場合には事業トップや企業経営者に特に多い傾向にあるように感じます。また、今、目の前に見えている世界の中だけでこれはとても良い製品だ、絶対に売れるはずと判断してしまう事もあるでしょう。たとえプロダクトアウト的な発想であったとしても自分達のいる環境が市場のど真ん中に位置していて、隅々まで見渡す事のできる環境からの発案であったのであれば全く問題はありませんが、大概において自分達が見えている世界は、自社が置かれている市場を中心とした一部だけの場合が多いようです。
マーケティングのできる事
システム部門ほど製品を知らないし、営業部門ほど顧客を知らない。そんなマーケティング部門かもしれませんが、逆に、社内外では会社や組織を超えた広い情報網を持ち、さまざまなフレームワークを活用して視点を多角的に広げられる技を勉強してきています。
この力は、前述した、プロダクトアウト的な発案でよく陥りそうな罠から抜け出るためには非常に有効です。目の前に広がる、自社/自部門だけの空気に流される事なく、冷静に自分達が見えている範囲はどの程度なのかを判断し、そしてバイアスの掛かった考えと資料を打破します。関係者の視点を一段上げるきっかけを作る事により、プロジェクト全体の視座を上げられる事でしょう。
広く掘る人深く掘る人
業界や市場の変化にチャレンジし新たな市場を作り出す。そしてイノベーターとして評価されるためにはやはり新しいサービスや製品を作りだす事が必要です。その際には、持てる技術やアイデアなど、外部に知らせたい価値を一方的に発信するだけにとどまらず、その価値は市場のどの部分において発揮されるべきものなのか、本当に市場に受け入れられるものなのか、そしてこの製品は誰のためにつくったのかを再度広い視野で検討する事が必要です。
製品やサービスの開発の際には、プロジェクト全体でこのような事を考えさせてあげる役割も非常に重要となり、これこそがマーケティング部門が得意とすることの一つであると考えています。
プロフィール
ProFuture株式会社 マーケティングソリューション部 フェロー
俣野 隆行(またの たかゆき)
2000年10月に日本オラクルに入社。以来約18年間マーケティング本部で業務。
製品やサービスのキャンペーンマーケティングを担当することはもとより、
大型イベントやコーポレートイベントなども推進してきた。
現在はTIS株式会社に勤める傍らProFuture株式会社のフェローに就任。
シェアードサービスプログラムや社内統合マーケケティングインフラの立上げ、
パートナー企業とのアライアンスマーケティングなど、
マーケテイングの「仕組み」を創りだす事を得意とする。
企画や相談事があれば、ProFuture営業までお問い合わせください。